5年位前に三浦半島内にあった小さなリサイクルショップにふらっと入って「古いカメラはありませんか?」と尋ねたら店主が店の奥の方をゴソゴソして箱を取り出して来てくれました。
中にはかなり古いレンジファインダーカメラと3本のレンズが入っていました。
値段を尋ねると店主は「俺には価値が判らないからお客さんが値段を決めてくれ」との事。
当時の私はまだカメラの知識が薄くここまで古いカメラやレンズの価値は全く理解できませんでした。あまりにも古いのでカメラが壊れていたりレンズにカビが生えていたりしたら私には分解も修理もできない可能性が大であったので二束三文の金額を提示したらなんとその金額で売ってくれました。
自宅に持ち帰ってネットで検索したら各々の正体がなんとなく判ってきました。
まずカメラ本体は1961年より発売されたキャノン7の発展型7Sというカメラでした。
露出計が不動だと思っていたのですが最近になってセレン式ではなく電池式だと判り完動品であることが判明しました。
続いて3本のレンズは、
① CNON Lens 35mm F1.5
② Nippon Kogaku Tokyo NIKKOR-S・C 50mm F1.4
③ Canon Camera Co. Japan SERENAR 85㎜ F1.9
の様でした。(実は後に②と③は全く別のレンズである事が判明します)
ということで、これら3本のとても古いレンズを紹介していきたいと思います。
今回は①のキャノンの35mm F1.5のレンズです。
いかにも古臭い形状です。
左に飛び出しているボタンはロックピンになっていてフォーカスリングが無限遠に来ると「カチン」とロックが掛かります。再びピント調整をする時はボタンを押しながら回す必要があります。う~んなぜこんな構造をしているのでしょうか。
かなり小さいというかコンパクトです。
ちょっと確認しにくいですが金色の真鍮のヘリコイドリングがピント調整用です。ここまで飛び出してくるんですね。
その外側の銀色の部分がレンズウントでスクリューマウントです。
同封されていたカメラ本体のキャノン7SはライカのL39マウントを採用していたのでそういう事になります。
広角35㎜レンズで開放値がF1.5と異常に明るいので「ナンでこんな古臭いのに後発のキャノンのFDレンズより明るいの?」と不思議に思いながらネットで調べてみたら、このレンズが発売されたのは1958(昭和33)年だそうでキャノンが当時世界一明かるいレンズを造ると息巻いて製作したそうです。事実これより明るい開放値を持つライカのズルミックス35mmF1.4は1961年に発売されたそうです。
このレンズは後玉の一番手前のレンズの内側にほんの少しカビのようなものがあるので分解・清掃をするためにカニ目スパナで黒い部分のネジを緩めてみます。
普通はこのリングを外すと一番手前のレンズが取れるのですが、取れません。
リングを緩めてもなにも変化しません。
それにリングが異様に肉厚でずいぶん深い部分で締まっているようです。
これ以上外緩めて外す部分がなく、どの様に分解したらよいのかサッパリ解りません。
致し方ないのでネットで検索し同じレンズを分解している諸先輩方のブログを参照させていただきました。
先輩方によると先程外したリングと前玉側の銘板を緩めると分解できるようです。
銘板をよく見ると数字の8と大文字のCの部分にカニ目スパナ用の溝がありました。
最初は固着していたのか微動だにしませんでしたがグリグリやっていたらフォーカス部分と分離できました。
これで遂に画像の一番手前のレンズにアクセスできます。
それにしても銘板と後玉がわのリングで各ユニットを固定するというのはとてもコンパクトな構造だと思います。
このレンズ。。。
ネジ山が切られたとても肉厚の薄いリングに嵌め込まれているのですが...。
よくよく眺めてみると外周のギリギリまでレンズとして少しでも口径を大きくしようとした努力の結果というか執念を感じます。
綺麗に清掃できました。
一番手前のレンズを外すとその下にもう1ユニットのレンズが出てくるのでこれも外してみました。
こちらはカビもホコリもありませんでした。
絞りのユニットが見えてきました。
前玉側も分解してみようかと思っていたのですが分解方法が解らず、またはカビもホコリも無いことが確認できていたので無理に分解する必要は無いと判断しここから組上げることにしました。
組上げてみたら何故か絞りリングの動きが硬くなってしまいとても回せる状況じゃなくなってしまったので絞りリングを外して状況を確認します。
矢印のピンが絞りリングで左右に回されることによって絞り羽根が開閉します。
当初ここまでバラしても原因が解らず油汗ダラダラになりながらジャンク行き決定かと落胆しました。
が、その後に破壊してしまわないように優しくにアチコチいじっていたら、絞り羽根ユニットを本体に固定している2カ所の極小イモネジの締め加減を変更しつつ微妙な位置調整でスムーズになる事が判明しました。イモネジを締め付けすぎるとその力で絞り羽根ユニットが変形してしまうようです。
このため緩み止め対策としてネジの頭に接着剤を塗布しておきます。
でも...。
分解時は絞り羽根関係には一切触れていなかったのでナゼ急に動きが硬くなったのかがわかりません。
あとは順次組上げていって完成です。
ですが組上げ完成後前玉をよ~く見てみたら...。
んん!レンズの外周端部がなんかおかしい?
色が変色してるのかな?
コバ落ち?
縞模様のようなものが発生してしています。
レンズが劣化してしまったのでしょうか?
ここまで外周端部だと撮影時の影響は殆どないだろうとは思いますが...。
どなたかこの症状にこの症状に心当たりがある方がいらっしゃいましたらアドバイスを賜りますようお願い申し上げます。
なんにせよここまで古いレンズになってしまいますと私の実力では修理というよりも構造が解らず分解できません。
今回もビクビクしながらの作業となりました。
後2本あるんですよねぇ~。