最近アニメや異世界転生物語でよく使われるチートという言葉があります。

このチートの元祖はアンデルセン物語の『みにくいアヒルの子』ではないでしょうか?

その容姿の醜さから周囲のアヒル達から散々見下されてバカにされていたのが実はとても美しい白鳥だったという結末で終わる物語です。

 

カメラ界の『みにくいアヒルの子』みたいな存在がこのKONICA Auto S 1.6です。

 

本体画像

このように本当に地味な容姿なんですよ。

ハッキリ言ってただの古いカメラでしかありません。

どこから見ても萌える要素がありません。

残念ですがこれでは購買意欲が沸き立ちません。

ただ噂ではこの子のレンズはかなり優秀だとか。

そして人目にはつかない中身が相当変わっていると言うかこだわって造られています。

 

まず目について違和感を感じるのが電池室の蓋が樹脂(プラスチック)製なことです。

プラスチックの蓋

この時代の殆どのカメラはボディアースになっているので蓋は金属製じゃないとならないんでけどねぇ。

 

不思議に思いながら裏蓋を開けると

タコ足配線。5本ですが

電池室に5本の電線が繋がっている。

ナンじゃコリャ!

普通は1本ですよ。

 

分解時はボロボロでした

上の画像はレストア後のものでして分解当時はこの様に全ての電線が腐食して断線し、すべての電極は腐食しまくってました。

電池室の取付けネジは前回分解した人が失敗してへし折られていました。更に電池室本体も破損していました。その結果この子はジャンクにされてしまったんですね。

でも私はこの子をジャンク扱いしません。

治しますから。

 

細部にまで手を加えます

電池室はドナー(部品取り)より拝借しましたが、こちらも腐食が物凄いため全バラにします。そして全ての電極に付いている酸化した古いハンダを除去して1個ずつヤスリで丁寧に磨いていきます。すべての作業を完了させて組み上げて配線をハンダ付けで接続すると

タコ足配線 その2

こうなります。

ちなみに配線も全て新しい電線で引き直してあります。

赤いボタンはバッテリーチェックでその回路まで一応独立させるという芸の細かさなんですがこの部分が漏電していたんです。つまり赤いボタンを押していない状態でも電気が少し流れてしまうんです。これは良くはないだろうという事で加工して何とか絶縁させましたがバッテリーチェックの動作が不安定になってしまいました。それでもここは絶縁させた方が露出計の為になると思います。

 

ナゼにこの子はこんなに電線が電池室に集中しているのでしょうか?

その答えとなるキーワードは「電池(バッテリー)直結」です。

普通は露出計やcdsセルといった電力を必要とするユニットの片方の電極の配線をボディーアースとして共通化して配線を簡略化させます。

ですがこの子は電力を必要とする各ユニット達のプラスマイナスを個別にわざわざ電線を電池(バッテリー)まで引っ張ってきて電池(バッテリー)に直接接続させているんです!

その結果電圧降下やノイズの混入といったような雑音に影響されることなく各ユニットは各自の性能を存分に発揮できるのです。だけど配線がエライ面倒くさくなります。当時この子を組立ていた工員さんたちは大変だったともいます。

当時はゴリゴリにコストダウンをして少しでも安い価格にして大量に販売するのが常套手段だった思いますが、こんな事を当時にやってのけたKONICAは素晴らしいと思います。(悪く云えばちょっと変わってる?)

でもこの電池室集中配線というのは電池が液漏れしたらその時点で腐食してしまって終わっていまいます。

しかし.....。

この子はEE(全自動露出)機能の他に完全マニュアル機構も備えているので最悪露出計が死んでしまってもマニュアルカメラとして撮影が可能なんです!

しぶといんです。

 

その他の部分でもあちこちで何これ?やり過ぎとちゃうんかいな!と思われる部分が随所にありました。これぞTHE過剰品質と唸らせられてしまいました。

 

余談ですがその後KONICAはあのMINOLTAに技術者共々吸収されます。そのMINOLTAはなんとSONYに技術者共々吸収されてしまいました。

SONYが現在のカメラ市場で独り勝ちしているのもこういった背景を考えると納得します。

 

この子はあまりにも地味な見た目とは裏腹に中身は素晴らしいクオリティで製造されていました。

果たしてフィルムへの写りはどうなんでしょうか。
KONICA HEXANON レンズは優秀との噂は本当なのでしょうか。

噂が本当でしたら『みにくいアヒルの子』決定です。

次回は実写編です。