vol.13 ~レコーディング慣れしていない人に!~
関東もとうとう梅雨入りでね!?
夏から梅雨に逆戻りみたいなお天気ですね。
夏みたいな日が続いていたせいか、先週は毎日ビールを飲んでいました。。。
今週は休肝日をたっぷり作ろうかな。
私のビールの話は別にして、レコーディング慣れしていない人にレコーディング時の注意点などをお伝えできたらと思います。
今回はご要望頂いたアーティスト視点で気をつける内容などを書いていきます。
逆にエンジニアをなさる方は、セッション中アーティストにどの様なアドバイスをしたらいいか、と受け取って頂けたらと思います。
レコーディングって、スタジオミュージシャンを除いて頻繁に体験するものではないですよね。
だからミュージシャンの方々は、あまりレコーディング慣れをしていないとスタジオに入ると硬くなってしまい本来の演奏ができなくなったりします。
また、どれだけライブに慣れていてもレコーディングとライブは別物なので、ライブの癖がレコーディングで悪い方向に出てしまうかもしれません。
今回は、そういう状況の中でもボーカルレコーディングで特によく出くわす例を挙げてみます。
最初に「レコーディングに入る前にやっておかないといけない事」です。
やっぱり練習でしょう(笑)
皆さん、レコーディング当日に特別頑張るという意気込みで入っていらっしゃいますが、基本的にはレコーディングで実力以上のテイクが録れる事はまずありません。
逆に、レコーディングの時は本当の実力が出し切れない事の方が多いものです。
レコーディングでも普段と同じクオリティの演奏ができる様に、前もって入念に練習をしておく事が大切です。
レコーディングの奇跡はあてにするな、という事です。
また、レコーディングに備えて体調管理をしっかりする事も、アーティストにとっては重要な仕事です。
当日にインフルエンザにかかってしまったなどと言っても、何の言い訳にもなりません。
ただお金を支払って、大したテイクも録れないか、最悪はレコーディング自体が無くなってしまう事すらあり得ます。
特に冬場などは、レコーディング前に人が多い場所は避ける、どうしても行かなければならないなら、マスクをして手洗いうがいも徹底するといった注意が必要です。
当たり前な事ですが、そういった基本ができていない方をよくお見受けします。
レコーディングは日程が決まった時点からスタートしているという意識を持って下さい。
さて、当日の注意点です。
まずはリラックスするところからです。
ボーカルは緊張すると喉をしめつけてしまい、思うように声がコントロールできなくなります。
友達と行くカラオケでは上手く歌えるのに、ライブになると音程が怪しいなどという状況も、こういった原因があります。
スタジオに入ったら、しっかり柔軟体操をして身体をリラックスし、喉に負担をかけない程度の発声練習から入りましょう。
時間はそのアーティストによってまちまちですが、長い方だと1時間くらいウォームアップをする人もいます。
昔Vo Vo TauというグループのボーカルRingさんを録った時の例を挙げてみます。
彼女はスタジオに入るとまず、部屋の明かりを落として薄暗くします。
通常のアーティストさんの場合は、スタジオに入ったらゆっくり準備をしながら当日の楽曲を流してチェックやイメトレを始めるのですが、初めにそれを訊くと、まだ流さないでくれと言われました。
薄暗い部屋の中、のんびりとマネージャーさんと私と談笑をします。
時間にして30分くらいでしょうか?
それが終わると、i-podを聴き始めます。
ご自分で録音した仮歌をチェックなさっていました。
目を瞑ってしばらくチェックを繰り返した後、今度は歌入れの本オケのチェックをします。
本オケを聴きながら歌詞カードに目を通し、ポイントにはメモを書き込んでいきます。
2、3回チェックが終わると、ブースに入りすぐに録ります。
短時間で一気に仕上げるボーカリストだったので、かなりのテンポの良さとスピード感が重視されるレコーディングセッションでした。
でも、素晴らしい表現力を持った方でした。
これはあくまで一つの例ですが、ボーカリストの方はそれぞれ自分なりのウォーミングアップを発見し、集中力を高めて喉が元気な間に仕上げる方法を見つけておいた方がいいかもしれません。
あと、セッションに入る時は必ず歌詞カードを多めにコピーして持っていく事を忘れないでください。
私もエンジニアで歌入れをするときなどは、必ず歌詞カードの中に小節番号を書き込む事で、作業効率のアップにつなげています。
自分用で1枚、エンジニア用で1枚、ディレクターがいる時はディレクター用で最低5枚くらい持参するのが安全です。
続いて、歌いだしてからの注意点です。
ライブなどでは、自分の声を大きく張る箇所でマイクを口元から離す方が多いかと思います。
これはライブにおいて重要なテクニックの一つで、マイクと口の距離を使って表現力を稼ぐ事ができます。
しかしレコーディングにおいては、慣れるまでこの様な行為をしない方が安全です。
確かに、よっぽどレコーディングに慣れていて耳のいいアーティストなどでは、無意識で自分の耳に入ってくるモニター音量が最適になるように立ち位置を調整したりします。
しかし、レコーディングでそれができるのはごく一部の人のみです。
大抵は、マイクからの距離が変わることで予期せぬ音質変化が起こってしまい、録り直しという事態にもなり兼ねません。
ボリューム差は後で調整できますが、やはり不必要な箇所でマイクから遠ざかると、実際に音像も遠ざかって聴こえてしまうものだからです。
慣れない間はエンジニアに指定された立ち位置から、できる限り動かない方がいいでしょう。
さて、では実際に口元からマイクまではどれくらいの距離があるものなのでしょうか。
ウィスパーボイス系の声を録る時以外は、私はマイクからポップフィルターを約5cmくらいは離して立てます。
そして、そのポップフィルターから更に約3cm~5cmくらい離れてボーカルさんは歌うでしょうから、実質8cm~10cmくらいが狙い目だと思います。
あまり離れ過ぎると、近接効果による低音が薄れてしまい、かといって近すぎると低音が強調され過ぎた声になります。
私は基本的に録り音で出来る限り声を前面に出したいタイプなので、吹かれが発生するすれすれの辺りまでマイクに近付いて録る事が多いです。
しかし、例えばウィスパーボイスと呼ばれる囁くイメージの曲などは、相当マイクに近付いて、ロー成分をがっつりと後でカットするような方法を採用したりもします。
また、上手いボーカリストさんの時は、ポップフィルターを外して吹かれに注意してもらいながら、めちゃくちゃマイクに近付いてもらう事もあります。
逆に、空間を活かした雰囲気のボーカルってありますよね。
例えば遠くから聴こえてくるシャウトとか(笑)
そういうボーカルが録りたい時は、一度エンジニアとの打ち合わせをしてみた方がいいと思います。
・・・ふむふむ、こうやって書いていくとかなりの量、注意事項が出てくるものですね。
予定していなかったのですが、今回のレコーディング注意点も2部構成にさせてください!!
また、続きをお楽しみに!!