夏休み | つれつれ散文

夏休み

白い運動靴と真っ青な麦わら帽子をママに買ってもらって

パパの故郷に遊びに行った

ボク一人の旅行にママは心配してたけど

ボクのいない3日間はママの自由な時間だから

あのヒゲのおじちゃんとゆっくり逢ったりできるんだろうな


渋滞してる人や物を一直線にくぐり抜け

緑の山や透明な田んぼが見えてきた

蝉や蛙が住人のパパの故郷

真っ黒になったパパが虫取り網と竹でできた虫篭を持って

誰もいない駅で大きく手を振った


パパ一人には大きすぎるお家には沢山のユリの花とゾウのお面

お香の匂いと汗の匂い

一切の俗物から離脱したようなパパの暮らしには

心を亡くしていたあの頃の三人の生活を微塵も感じさせなかった


パパのお家の裏山には大きな森への入り口があり

お昼間でも暗くパパと小さい提灯を二つ手に持ち歩いて行った

時折何かの鳴き声や羽音が聞こえる大きな森

森自体が生き物みたいにかすかに動いているようだ


青や緑 黄色に赤が複雑に混ざりあい

肺が森と同化した頃 紺碧の大きな湖と出会った

水面はすべて見渡せず感覚で大きいなと感じた不思議な湖

吸い込まれそうに足がすくんだ


その時 疾風が舞い上がりボクの麦わら帽子が大きく輪をかいて

大きな湖に落ちていった

波紋がどんどん広がり何かの合図のように奥へ奥へと広がってゆく

パパは提灯を足元に置き ボクを抱き上げた


運動靴の白とパパの黒が紺碧の前でコントラストを描き

まるで水墨画のように一つにまとまった

お香の匂いと汗の匂いが媚薬のようにボクを包んだ

「・・・」


パパが何かを呟いたのだが ボクにはやっぱり

真っ青な麦わら帽子が気になり

やがて大きな湖と一緒になるような気がして

行灯の小さな明かりに視線をやっていた