前回の一期に続く形で、今回もブルーレイ一巻にオリジナルのPCゲーム、それも個人的な大好物であるアクションゲーム『復活のベルディア』なるものが特典として付属される事が放送前から発表されてた『この素晴らしい世界に祝福を!2』。
先週、その一巻が発売となり、かねてから予約していた現物が到着。早速、アニメ本編そっちのけでパソコンにインストールを実施し、難易度ノーマルで一通り遊び通してみた。
率直に言って、特典という括りに留めておくのが勿体なさ過ぎる傑作。
そして、シリーズ低迷による打ち切りなどによって、云十年に渡って鬱憤が溜まり続けてた個人的なロックマンX欲を満たす作品だった。まさか原作付きのゲーム、それもおまけに等しい特典ゲームでそれを晴らす事になろうとは…。
エックスも含め、昨今はロックマンシリーズ自体、完全新作が発売されなくなってしまい、その隙間を埋めるかのようにダウンロードソフトなどでオマージュ作品が販売されるようになり、自分も幾つかの作品をプレイしてきた…けど。今作はそんなオマージュ作品の中でも指折りの完成度と面白さを持った出来だったと思う。誇張抜きに。
■『この素晴らしい世界に祝福を!』meets ロックマン(ちょっぴりドラキュラ)
ゲームの概略を紹介すると、基本はロックマン。ステージクリア型のアクションゲームで、主人公の佐藤和真(カズマ)を操作し、復活したベルディア(デュラハン)に操られたアクア、めぐみん、ダクネスの三人の救出とベルディアの討伐を目指す。
本編もロックマン同様にステージセレクト方式で進行。オープニングステージを終えた後、アクア、めぐみん、ダクネスの三人いずれかのステージを選び、攻略に挑む。最終的にステージ最後に待ち構えるヒロイン(ボス)との戦闘に勝利すればステージクリア。その後、またセレクトに戻って残りのステージ攻略に挑む…という流れだ。ロックマンシリーズ経験者なら、「いつものアレ」と言えば一発で理解できると思います。多分。
システム周りもこれまたロックマン。厳密には『ロックマン&フォルテ』及び『ロックマンX』がベースで、オープニングステージ、ダッシュアクション、アイテム購入と言った同二作を髣髴とさせる要素が取り揃っている。また、『ロックマンX5』以降、エックスシリーズにおける定番となった難易度選択機能も実装。全四種類の難易度が用意されている。
ヒロインことボスを撃破する事で、そのスキルを習得できるシステムも搭載。それらとは別にカズマ個人が持つスキルが四種類(クリエイトウォーター、スティール、フリーズ、狙撃)用意されており、この四種類に限り、アップグレードによる強化を図れる。アップグレードには敵を倒す度に手に入るお金(エリス)が必要。最大二段階まで引き上げることができ、道中の攻略やボス戦を有利に進めていけるようになる。
また、お金はアップグレード以外に回復アイテムの購入の際にも消費。言うまでもなく、お金が沢山あれば大量のアイテムを買い込めるので、難しいステージやボスをアイテムの量に任せ、力押しで攻略する戦術にも対応している。
力押し絡みではもう一つ、レベルアップ。敵を倒す度に経験値が入り、一定数に達するとレベルが上がり、カズマの攻撃力・防御力が上昇するシステムも搭載されている。いわゆる『悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲』以降の探索型ドラキュラシリーズでお馴染みのもの。それが今作にも組み込まれていて、真っ正面からステージを攻略するのも、地道にキャラクターを強化して力任せにステージを攻略するのも良しの懐の広いゲームバランスを実現している。ただ、体力と魔力だけはレベルアップの対象外。この二つはステージごとに隠された専用アイテム二つを発見・回収する必要がある。その為、上げれば上げるほど難易度が下がっていくことは断じてあらず。その辺はきちんと対策された調整が図られている。
このほか、『このすば』らしくクエスト要素もあり、特定の敵を一定数倒すとボーナスのお金が手に入る仕掛けも。こんな具合に基本はロックマン。そこにRPG的な世界観と設定を持つこのすばの要素として、探索型ドラキュラシリーズを髣髴とさせるレベルアップ、クエストも導入した、ハイブリッドなゲームデザインが図られた内容となっている。
■絶妙に手強いゲームバランスとそれによって醸し出された万人向けの作風
悪く言えば、ゲームとしての真新しさは薄い。だが、アクションゲームとしての完成度が非常に高く、優れた遊び応えを誇る内容に完成されている。
特にレベルアップシステムによる、アクションゲーム初心者から上級者までフォローしたゲームバランスが見事。本格的且つ、手強いアクションを楽しみたいプレイヤーはステージの攻略だけに集中して手応えのある展開を、ホドホドにアクションを楽しみたいプレイヤーは経験値とお金を稼いでカズマを強くし、迫り来る敵達を蹂躙しまくるクズマ(或いはカスマ)な展開を…と言った感じに幅広いプレイスタイルに対応しており、各々の力量に見合った遊び方で進めていけるようになっている。
全四種類の難易度でこのバランスを実現しているのも特筆に値する。つまり、アクションゲームに苦手意識のあるプレイヤーにも、稼ぎプレイという選択肢によって最高難易度へ挑戦する資格を与えている。「こんなの無理!」じゃなく、「この手を使えばいけるかも…?」という可能性を残しているのだ。無論、難易度を上げれば上げるほど、厳しい局面に立たされる頻度は上がるが、レベルアップを始めとするシステムの恩恵で、根気さえあれば突破できるという希望が常に残り続けるから、(個人差はあるが)それほど大きな負担がのしかかることはない。そう言った苦手意識のあるプレイヤーも挑戦する資格はあるとした、切り捨てをしない配慮が素晴らしく、文字通りに「懐の広い」ゲームバランスを確立しているところには凄く感心させられた。
稼ぎプレイをし易くする為、未クリアのステージでもポーズ画面からいつでも離脱可能としているのも良心的。これによってRPGっぽい感じで遊べる余地を残しているところには、このすばという作品への配慮を感じられる。
ステージの作りも素晴らしい。ロックマンを意識しているだけあって、敵やトラップの配置がワリと苛烈だが、「こんなの無理!」と言えるような無茶な立ち回りが要求される場面はほとんど無く、全ステージにおいて「絶妙に手強い」をコンセプトにした設計が成されている。一発アウトのトラップを大量に配置して難しくする、安易な引き上げを行った所も何一つなく、終盤のステージでもそのスタンスを貫き通しているのも見事。理不尽、製作者の嫌がらせだと思ってしまうような場面が無いだけでも、如何にそう言った場面を登場させないことに気を遣ったかがうかがい知れる。
難易度の差別化も上手く、一番簡単なイージーであれば敵などから受けるダメージ量が減少、ボスの攻撃スピードが低下するのに対し、一番難しいベリーハードなら逆にダメージ量上昇、攻撃力低下、そしてボスの攻撃高速化と言った露骨な違いが出る。また、ハード以上の難易度になると、二期の6話に登場したモンスター「リザードランナー」が登場するようになる変化も。それによって、イージーやノーマルと違う立ち回りをして対処しなければならないなど、同じステージであっても全く違う展開が描かれたりもするのだから、舐めてかかったらどんな目に遭うのかはお察しの通り。
二期の六話を見た人なら、尚のこと、どうなるのか想像し易いでしょう。
繰り返しになるけど、ゲームとしての真新しさは薄い。
だが、それ故に一つ一つの要素の練り込みに妥協が無く、ゲームバランスに至ってはレベルアップシステムにより、万人向けの色を出している。見た目からしてオマージュ全開ではあるが、しっかりと元ネタとしている作品への敬意と差別化を成した出来。そして、おまけという括りを突き抜けた完成度を見せ付けた内容になっているのだ。
■原作小説、アニメのほか、著名なゲームまでカバーしたネタの数々
原作付き作品という事で、ファンサービスも充実。
しかも、「そんなところまでやるか?」と思わず笑ってしまうものが揃っている。
第一にポーズ画面。
見ての通りに一期一話、二期一話などで見られたアレ。
ご丁寧に効果音までそれっぽく作られている。
第二にゲームオーバー。
原作通り、女神エリスの元に送られてしまう。
(更にカズマの衣装もジャージになる)
一回目に限り、会話イベントも発生。その台詞の中には、カズマ役の声優・福島潤が「まさか使われるとは思わなかった」とラジオにて述懐していたアドリブ発の台詞も…。
第三にスキル。
原作の小説及び、アニメではヒロインの二人(アクアとめぐみん)が使ってた「花鳥風月」、「エクスプロージョン」をカズマが使う姿を拝むことができる。威力や設定も忠実で、爆裂魔法エクスプロージョンは案の定とも言うべき燃費の悪さ。
しかも燃費が悪いという点で、『ロックマンX7』のエクスプロージョン(※ボスのバニシング・ガンガルンを倒した後に手に入るエックス・アクセル用の特殊武器)とも被っているのだから、余計に笑える(笑)。(威力はこちらの圧勝だが…)
更にエクスプロージョンをこのエリアで使うと…。
また、カズマのスキル「スティール」をボスに対して使うと…。
他に道中に出てくる雑魚敵のキャベツの中にこっそりレタスが紛れ込んでいたり、クエストの中に「小説1巻44ページに登場するモンスターを20匹討伐せよ」と言ったアニメしか見ていない人を殺しにかかる卑怯なものがあったりも(笑)。
▲コンプ目指すのなら買わなきゃハ●ソン。(一応、無くても総当たりでどうにかなる)
また、あるステージでは、思わぬキャラがちょこっと登場することもあるなど、このやたら細かいネタの数々には原作を知る人ほど感心させられること請け合い。そして、その気合の入った作り込みの数々に圧倒させられるでしょう。
ゲームにちなんだネタも豊富。
「狙撃」スキル発動時にヨッシーアイランドみたいな照準が表示されたり、
(※これと似た技は制作者の方の前作『ファラオリバース』にもあった)
スキル「フリーズ」のエフェクトと射程範囲が星のカービィ染みてたり、
ダクネス戦でスーパードンキーコングのクルール戦を髣髴とさせる鉄球の雨が降ってきたりなど、システムの下になってるロックマン、悪魔城ドラキュラ以外の作品にちなんだネタも豊富に仕込まれている。
その一つ一つを発見していくだけでも至福の時間が楽しめる…かも。
■ロックマンの新作が遊べない鬱憤が溜まっている人こそ遊ぶべき傑作
グラフィックもキャラクターのドット絵は細かい動きまでしっかり作り込まれていて、見ているだけでも楽しいし、原作の再現具合も高い。音楽も妙にカッコイイ曲が揃っていて(個人的にダクネスステージの曲がお気に入り)、それが何処となくロックマンっぽさを引き立てる(笑)。操作性も良好で動かしているだけでも楽しいほか、PS4コントローラにも対応しているので、キーコンフィングによっては『ロックマンX4』以降のシリーズと同じアサインで楽しむこともできてしまう。(なので、PS4コントローラで遊ぶのがお薦め)
ボリュームは特典ゲームだけあって少なめ。一応、クリア後にボスラッシュなどの特殊ステージが用意されているほか、クエストにアイテム収集と言ったやり込み要素は豊富。ただ、できる事ならばあと2ステージは欲しかったところ。最終ステージを引き延ばすと言った、ほんのちょっとな水増しがあると良かったかもしれない。
また、クエストも数は多いけど受領できるのは一つだけと、まとめて複数できないのが煩わしい。この所為でコンプリートを目指すと作業感が強くなってしまうのは、やり込み要素としては拙い作りだったように思う。一部、滅多に現れない敵を20匹も倒せという、悪い意味で水増し感のあるクエストがあるのもまた然り。こういうのは数を抑えて欲しかった。
それ以外だとセーブが一つしか作れないのも残念。
ただ、これに関してはゲームフォルダの「config」に生成される「game.sav」というファイルをバックアップする形で複数作成できるという解決策があるけど。
そんなやり込み絡みでは欠点が多いけど、アクションゲームとしての出来は素晴らしく、傑作と言っても差し支えない仕上がりになっている。内容的には原作の『この素晴らしい世界に祝福を!』を知る人向けだけど、単品のアクションゲームとしてもしっかり遊べる内容で、特にロックマンシリーズ好きこそプレイしてみて欲しい作品だ。アニメのブルーレイの特典というのもあって、作品に興味のない人には購入の際の敷居が高い(更に言うなら値段も高い)のがネックだけど、それを乗り越えて遊ぶだけの価値は十分にある一作。是非、機会があったら遊んでみて頂きたい。
この全編から炸裂する圧倒的ロックマン感はシリーズに慣れ親しんだプレイヤーほど感動必至。迷わずやれよ、やれば分かるさ。
そして、欲を言うならば、ステージを追加したパワーアップ版を将来、Steamか何処かで配信してくれればと…!これほど優れた完成度を誇るロックマン風アクションゲーム、特典に留めておくのは勿体ない。
そう今すぐというのは無茶の極みだろうけど、いつの日か…同じ製作者の方が手掛けた『ファラオリバース』みたいな展開(有料版の配信)があると嬉しいところです。はい。