お昼に諒さんからメッセが来た。

今日は遅くなりそうかな?と。。今日は定時で帰りたいのでそんなに遅くはならないです。と答えるとそう。午後からも仕事頑張って。と。。。

ん?と思いながらも急な打ち合わせも入りバタバタとしていると定時に。。

残業はしたくなかったのでイケメンを見るとすっかり帰り支度。(笑)


「帰る?」

「うす。」


定時でもすっかり暗くなった外の空気は気持ちいいしイルミネーションも綺麗。

ふと見るとシルバーのメルセデスのSクラス。


「この辺ってなんかお金持ち多いよね。」

「たしかに。俺は7の方が好きっすけど。」

「あれはもう製造してないじゃん。」

「そうなんすよね。じゃ、俺こっちなんでお疲れっす!」

「おつかれー!」


すぐ目の前のビルが駅直結なので束の間のイルミネーションを視界に納めて歩き出すと肩を叩かれた。


「お疲れさま。」

「あっ!諒さん?」

「はい。諒さん。」


クスクスと笑いながら送るよ。と。。。案内されたのはさっきのメルセデス。


「これ、諒さんの?」

「他人の車に乗るか?」

「たしかに。。」


車に乗ると大好きなスタバのトリプルエスプレッソを渡された。


「少し冷めたかな?」

「冷めても好きだから大丈夫。」

「しかしイケメンだね。噂どおりだ。」

「でしょ?ほんとに綺麗な顔してるのに仕事もできる。」

「なるほど。」


そう言いながら静かに車は走り出した。

しかしどうしてきたんだろう?と思っていると


「イルミネーション見たいなって言っていたけど歩くと人多いし車の中から見る方がいいかな?と思ったんだが。」


たしかに車の中から見るととても良い感じ。


「今日はまっすぐ帰った方がいいな。」

「どうして?」

「少し顔が疲れてる。しんどいだろ?」

「うん。ちょっとだるい。」

「じゃ、帰るぞ。」


そういうとイルミネーションの通りから離れようとしたので咄嗟に右手を握った。


「どうした?」

「もうちょっとだけ。。ダメ?」

「分かったよ。」


クスッと笑った諒さんは頭をポンポンとすると私の手をそっと握り込んだ。大きくてゴツゴツした手はとても心地いい。

するとその大きな手が私の頭をそっと自分の肩に導く。

寄りかかると一気に睡魔がやってくる。


「仕事忙しいか?」

「うん。そこそこ。。」

「そろそろ働き方を考えないとね。」

「なんとなく分かってるけどまだ足掻いてる。」

「お金が絡むからなかなか難しいだろうけど自分の立ち位置はお金に換えられないからね。」


手痛いはなしだ。ずっとそれで悩んでる(笑)

だからこの際相談したらもう分かってるだろ?と。。

そう分かってる。答えは出てるのに往生際が悪いのは私の悪い癖。しんどい方ばかり選んでしまう。

「いい女は諦めがいいんだよ。覚えないとね。」

そう言うとフワリと唇を重ねてきた。

びっくりして固まった私に「やっぱりウブか。」の笑われた。

諒さんは分かってない。

私が固まったのはキスじゃない。

キス一つで濡れていたから。


やっぱりウブか。私。