ひとたび体を横にすると起きられない時がある。超合金の鎧を背負ったかのように重い体。寝ころんだが最後、朝から晩まで布団の中で過ごすことになる。

 

これが更に心身を蝕んでいく。だから、何としても重い体を起こして何かをする必要があった。何とか腰を上げてギリギリの二足歩行で歩いていく。

 

おもむろにパソコンを広げ、何の感情もなくYoutubeを開く。不思議なもんでこういう時に限って自分が思い悩んでいるテーマが出てくる。

 

誰か俺を覗いてるか?生きてるとは何だ、死ぬとは何だ。そんな動画を見漁りながら、無表情な私の中の感情を揺さぶってくる。

 

そんな時にある人の動画を見る。この方は日本で唯一このある分野の研究をしている方で、その内容こそが自分が44年かけて追求してきた内容に近いものだった。

 

動画を見れば見るほど、瀕死になりかけていた魂が動き出すのを感じる。これをやりたい。俺はこの研究に携わりたい。生に対して藁をもすがる思いで今を生きている自分の導火線に火がついた。

 

その瞬間、この人のことを調べる。他に動画は無いかをリサーチする。それと同時に、抑えられないこの衝動が、この方のHPにある問合せフォームをクリックしていた。

 

今までの自分の半生と、死生観について語り、そして私にできることは無いかと身勝手な問合せを一方的に送りつける。言ってみれば、まーただの自己満足である。

 

調べれば調べるほどこの方は様々なメディアに出演されている著名人。どこの馬の骨かわからない人間の問合せなどに反応するはずも無いだろう。

 

そんなことは百も承知だけど、この衝動を止めることはできなかった。動かなければ何も始まらないと思っていた。浜辺に打ち上げられていた魚に、ほんの少しだけ水を与えられた瞬間だった。
 

それから数日後。予想通り返信は無かった。当たり前や。夢心地もいい加減にしたほうが良さそうだな。

 

そうきあらめかけていた時、奇跡は起きた数日後に一通の返信が来たのだ。「お返事遅くなりすみません。来週なら1時間程お話することができますよ」

 

まさか、その方から何とも温かなメッセージが届いたのだ。私は驚愕した。こんなことがあるのか。今までしぼみ切っていた胸が破裂しそうなほど嬉しかった。

 

この奇跡が結果的に何を生み出すかなんてわからない。単なる幻想だけで終わるかもしれない。でも、必死にしがみついた自分の思いが一つ現実になろうとしているのだ。

 

いささか大袈裟かもしれない。しかし、今の自分にとってこの出来事は奇跡に近かった。シンプルな一通のメッセージが救世主となって私に手を差し伸べてくれた。

 

丁寧に感謝の気持ちを伝えて返信した私は、いてもたってもいられなくなって、この方の本を買うために街中の本屋を歩き回った。

 

このご縁が何かを産んでくれますように。どうか、少しのチャンスを私にくださいますように。そう願って、心高ぶる激動の1日を静かに終えることだけを考えた。