ぼくの中には自分でもぞっとするくらいドロドロした感情が眠ってる。
キミはそれを見ないようにして目を逸らしてきた。
キミはいつも正しかった。
キミは時々弱音を吐くけれど、いつだって一人で前向きな言葉で締めくくる。
ある日、キミはあの人にキミの中のぼくのドロドロした感情を伝えたんだ。
キミはずっと目を逸らしてきたから、キミ自身が何故そんな言葉が出てきたかわからなかったね。
キミがぼくの気持ちを言葉に変えてくれたから、ぼくらはわかったんだ。
お酒を飲んでは暴力を振るう父親、仕事をしない父親。そんな環境の中で母親であるあの人が、苦労してぼくを育ててくれたから。
そんな最低な父親を好きだなんて言ってはいけない。
あの人の前では絶対に、言ってはいけない。
だって、そんなことをしたら、あの人は悲しむんじゃないかと思って。
ずっと気を使っていた。
ただ、一度だけで良かったんだ。
父とぼくと4人の家族の時間に幸せな時間もあったと、あの人の口から聞きたかった。
キミがぼくの気持ちに気がついてあの人に聞いてくれたけど、一度も聞くことは出来なかったね。
いいんだ。
キミがぼくの気持ちに気がついてくれたから。