22年もの間父と暮らしていた母と私。
なぜ今更家を出ることにしたかというと、私が父と離れて暮らすと決めたからです。
当時の私は、父の存在自体を見ないようにしていました。
父の生い立ちからの出来事を考えると、お酒に酔って母に暴力を振るうことをしかないことのように思ってしまうからです。
私が父を可愛そうだと思えば思うほど父もダメになり私もダメになると思ったからです。
そしてもう一つの理由は、私の恋人の存在です。
もう父と母のためではなく、私が私の幸せのために生きていきたいと思ったからです。
父に家を出ることを知らせず、母と私は賃貸マンションを契約しました。
少しづつ家の荷物の整理を始めたとき、もう父と会話もなかったのに
「そのぬいぐるみもういらないの?いらないなら知り合いにあげるからちょうだい」と父に言われたのです。
胸がキューッと痛くなって鼻の奥がツーンとして涙がこぼれてしまいそうになりました。
それをなんとかこらえながら「いいよ」と素っ気なく答えたことを今でも覚えています。
会話が無いからといって父が私たちの異変に気づかないはずがありません。
ある日私が残業から帰ると、一人暮らしをしていた姉が家にいて「今すぐ引っ越しだよ」と言いました。
何が起きたかすぐに察しがつきました。
アパートの掃き出し窓の外には茶碗などが投げ捨てられていました。
そこには母の姿はなく、私は父の後ろ姿だけを見てアパートを後にしました。
家を出ると決めたはずなのに、涙が溢れて大きな声を上げて泣きながら車を運転し、
新しいマンションに着いたのです。
抑えられない涙と、罪悪感。
ほっとしている母を見て何故か苛立ちがこみ上げてきてしまい、自分が壊れてしまそうで苦しくて苦しくて仕方ありませんでした。