脳のなかの倫理―脳倫理学序説/マイケル・S. ガザニガ

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私たちが自由意志だと思っていることでも
実は脳の特定領域で反応があり、
それを追認するかたちで
行動を決定していると言う。
例えば、私たちが右手を動かそうと思う前に
右手を動かす脳の領域が反応していて
それを追認する形で
その次に右手を動かそうと考えるらしい。
これは条件反射のことではない。
このことは何を意味するのか?

問題行動を起こす人間は
その人が悪いのではなく
脳の器質的障害があるからだとなる。
ようするに欠陥部品であり、
その人の意志ではない。
脳の誤作動だと言うことになる。


この兆しは既に現れていて
脳の器質性障害が原因で
問題行動を起こす人々は
自閉症、AD/HD、LDなどとされ、
治療の対象とされている。


しかし、脳神経科学では
脳にどのような反応が起こっているかを
研究しているだけであって、
善悪は判断(しない/できない)。
脳の反応の結果、
具体的にどのような行動をとるか、
あるいはどのように解釈するかは
宗教や文化によって規定されると言う。

だから、著者は薬品や外科的処置による
脳の能力増強を肯定する。
ここが薬品による筋力増強とは異なる。
筋力増強の場合は
力が強い/弱い
スピードが速い/遅い
と価値一元的だから否定する。

それに記憶力を増強させると
情報の捨象ができなくなり
瞬時に判断ができなくなり
生活に支障がでるので、
脳の能力の増強=生きやすい
ということにはならないだろうと言う。
これって自閉症?

全てあらかじめ仕組まれた脳の反応の
読み取り方が宗教や文化、言語で
規定されていると理解することにより
新たな倫理が構想できるのではないか言う
著者の指摘はなかなか興味深い。

・・・けど、なんか釈然としないなぁ・・・