9人の児童性虐待者/パメラ・D. シュルツ

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幼い頃、性的虐待にあった女性が9人の児童性虐待者に
インタビューした記録です。

児童性虐待者はモンスターのような存在で
衝動的に子どもを襲い、そして殺害すると言う
イメージがありますが、
ここに登場する9人は一人として殺人を犯していません。
子どもたちに暴力を奮ったのはただ一人です。
中にはコミュニティで尊敬される立場だった人もいます。
ほとんどの児童性虐待者は知らない子どもを襲いません。
被害者のほとんどが自分の子どもであったり、
再婚、あるいは交際している女性の子どもだったり、
親戚や近所の子どもだったりします。


宮崎勤や小林薫のような加虐行為から殺害までを行う
性虐待者は極めて稀で、稀だから、大きく報道され、
それが社会の性虐待者のイメージを形成しています。


彼らは凄く計画的で
狙った子どもたちを可愛がり、
下着姿の子どもに対して
「そんな格好したら、だめだ。」とか
言うように子どもたちが誘ったから、
行為に及んでしまったのだと子どもたち自身が
思うように仕向けていきます。
子どもたちが少しでも拒絶すれば、
それ以上の行為には及びません。

だから、彼らは子どもたちが誘ってきたのだが
法で罪だとされている限り、
その誘いにのった自分が悪いと言います。
場合によって恋愛関係にあったとさえ言います。
だから、自分の周りに子どもを近づけないようにしてほしいと
メーガン法の支持を表明します。
但し、周囲が自分達をいじめない保証があれば・・・ですが。

また彼らの多くが幼い頃、性的虐待にあっています。

このことが、さらに児童性虐待者はモンスターのような存在で
衝動的に子どもを襲い、そして殺害すると言うイメージを
強化する方向に作用します。
なぜなら、サバイバーとして立ち直ろうとしている人々が
潜在的な児童性虐待者とされてしまうからです。
もちろんすべての被害者が加害者になる訳ではありません。
そのため、モンスターなのだから、
加害者の言説を聞く必要がないとされ、
彼らの声は抹殺されていたのです。
またモンスターなのだから、決して更生することはないとされましたが、
実は他の犯罪よりも累犯率は低いのです。
それにアメリカの場合、一度児童性虐待でつかまると
保護観察になり、保護観察期間中に
子どもに近づいただけではなく、
子どもが近づいてきただけでも再逮捕されます。

被害者でもある著者は加害者の履歴を聞き共感さえ覚えます。
加害者はいずれも社会的能力がかけて
ストレス下にあるとき、子どもに目を向けるか、
社会不適応者で性的欲求の捌け口として子どもを狙います。
いわゆるペドファイルと呼ばれる人は少なく、
誰でも良いのだけど、未熟なため、子どもを狙ってしまいます。
もちろん加害行為は悪いし、
また同じ境遇でも犯罪を犯さない人も多いけれど、
それでもなお、もし彼らが機能不全家族で育たず適切な教育を受けていたら、
性的虐待に遭わなかったら、
あるいは性的被害に遭ったとき、適切なケアがあればと考えます。
児童性虐待者は徐々に作られていると言っても良いかもしれませんね。

この本を読んで思ったのですが、
日本でアメリカの法律を適用すれば
児童性虐待者は飛躍的に増えることは間違いないですね。
援助交際も児童性虐待でメーガン法が適用されますね。
児童ポルノももちろん児童性虐待です。
男女問わず、例え本当に恋愛関係があっても
16歳以下の子どもと行為すれば、性虐待者です。
19歳の女の子が14歳の男の子と行為すれば、
女の子は性虐待者です。

日本には性虐待が無いと言う幻想が未だに流布していますが、
性虐待の定義があまりにも違います。
同じ定義を適用すれば、日本の方が寧ろ多いのではないかと
思います。