角川エンタテインメント
ランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション

この映画、今のアメリカを象徴していますね。
ベトナム戦争帰還兵であるおじさんは
9.11の同時テロ後、ベトナム戦争のPTSDが
溶解し、再びフラッシュバッグが起こるようになります。
そして、不審者の監視を自発的に始めるのですが・・・

この叔父さん、風貌や個人で自発的に自警団を始めた
と言う設定なので、ベトナム戦争のPTSDがある少し
おかしな叔父さんとして、みんな安心して映画を観ることが できますが、
主人公がデンゼル・ワシントンやブルース・ウィルスで
背広なんて着ていたら、そうはいかなかったでしょうね。
アメリカの正義を示すスリルとサスペンス溢れる映画になったでしょう。


そして、不審者のアジトだと思って潜入したら、
そこには寝たきりのおばあさんが、
壊れて同じチャンネルしか写らないテレビを観ていた。
画面にはテロに屈しないと演説しているブッシュが。。。
おじさん、画面にブッシュが写す出されているテレビを叩くと
テレビが直ると言うオチなんだけど・・・

そして、WTCの跡地を見て一言
「ただの工事現場じゃねぇか。」

犠牲者の「恨み」を晴らすなんて言うけれど、
犠牲者は何も知らずに死んでいってしまったのだから、
「恨み」なんてないだろう。
無念であったことは間違いないだろうけど「無念=恨み」ではない。
「恨み」になるまでは時間がかかる。
なぜなら、「何故私が被害に」と言う思考の彼方に「恨み」があり、
「恨み」とは、過去の多くのそれらしい出来事を
ストーリーとして再構成する作業だから。


その「恨み」を構成するプロセスに
援助者などが個人的なストーリーを
意図的に挿入する場合がある。
テロは正当化できないけど、
特定の民族や地域、国に対する「恨み」は
ブッシュによって作られたもの。

この映画の主人公の場合、
戦争をさらに肯定する方向ですね。
ベトナム戦争は局地戦での敗戦であり、
大きな冷戦と言う枠組みでは勝利したので、
結果的にベトナムも勝利したんだというロジックです。
彼が実在すれば、この経験以降、反政府になるのでしょうね。
もともとこの映画はイラク戦争反戦映画ですから。

「恨み」は権力が勝手に構成したに過ぎない。
そんな欺瞞を暴くような映画でした。