ポニーキャニオン
オリバー・ツイスト プレミアム・エディション

うーん、感動したと言うよりも後味の悪い映画でした。

新救貧法化の英国の話です。
孤児や貧困者(今で言う{負け組」)を救護院に収容して
餓死で緩やかに死なせるか
社会に放置してすぐに死なせるかと言う時代です。
19世紀英国が舞台なんですが、現在の話のようです。
ただ当時と現在とは衛生状況や基本的な生活の質が異なるので、
一見すると現在と同じだとは認識できないかもしれません。
それに現在は生物学的死ではなく、社会的死を宣告していますから。

私が後味の悪さを感じたのは、
確かにオリバーは幸せになったけど
フェイギンだって、
ビルだって、
ナンシーだって
ドジャーだって、
新救貧法化の下、精一杯生きてきた。

確かに彼らは悪いことをしたけれど、
餓死寸前のオリバーを救ったのは彼らだ。
間違っているとはいえ、オリバーに寝食を与え、
スリの能力を与えたのは彼ら。
国は一切、子どもの内的ケイパビリティを高めるような教育を
提供しなかったし、そのケイパビリティを発揮できるような
社会的環境も整備しなかった。
唯一彼らだけが孤児の少年達に能力と機会を与えた。

フェイギンだって、
ビルだって、
ナンシーだって
ドジャーだって、
オリバー同様、幸せになる権利はある。

なのに何故オリバーだけが幸せになれたのか?

それはオリバーが持っていた「自然的財」、
すなわち「その獲得に運が重要な役割を果たす財」のお陰・・・

オリバーの持つ孤児には見えぬ
美しい容姿と綺麗な言葉遣いと礼儀作法・・・

フェイギンやドジャーとの違いはただそれだけ。
なのに何故こうも運命が、人生が違うのか?
この違いすらもオリバーの能力と言うのか!
あるいはフェイギンとドジャーの自己責任と呼ぶのか!

それゆえに後味の悪い映画でした。

オリバー・ツイスト@映画生活