今、わが国ではCSRがブームとでも呼べるような状況になっている。
今までそのようなことを一度も考えたこともないコンサルタント会社などが
さも知ったかのようにセミナーなどを開催している。
その内容もSRI(社会的責任投資)に組み入れられるためには、
だとかNPOなどが行うアンケート対策などが多い。
彼らが説くCSRの必要性は、市場からの評価を得るためだとか
CSRの法制化・規格化が進んでいるからと言ったものが多く、
これは子どもになぜ勉強しなければならないのかを聞かれた母親が
「先生に怒られるから。」とか「テストがあるから。」と答えているとの
同じである。

そうではなく、
将来、あなたは何をしたいのかを質し、
そのために今、
どのような勉強をしなければならないかを理解させることだろう。
CSRもこれと基本的には同じである。

事実、現在、CSRには明確な定義は存在しない。
ただあるのは、
「企業が法令遵守にとどまらず、市民・地域及び社会を利するような形で、
経済・環境・社会問題においてバランスのとれたアプローチを行うこと。
また、その結果を公表し。説明責任を果たしていくこと」
と言うことのみなのである。

このことは先ほどの「なぜ勉強するのか?」と言うことと同じで、
まず企業自身が自らの事業を通じて
どのような社会を作りたいのかを明らかにし、
利害関係者と対話を重ねながら、
互いが目指すべき持続可能な社会のイメージを共有することが必要だ。
そのうえで、利害関係者と合意した「持続可能な社会」実現のために
自らの事業活動の発展通じて貢献すること、
及び「持続可能な社会」実現に対して現状の事業モデルが障害となる
可能性がある場合、そのリスクを回避、あるいは縮減するために
努力することである。
また自ら行った行為、あるいは行う能力がありながら行わなかった行為
に対して、すべての利害関係者の問いかけや呼びかけに自らの考えに
基づき一貫性のある応答をすることが本当のCSRであろう。


またNPOとの協働についても、
このCSRの定義に基づけば、積極的に捉えることができる。
企業の力だけでは、
おそらく自らが考える持続可能な社会を実現することは不可能だ。
まず営利企業は経済的利益を上げることが第一であり、
いくら持続可能な社会を実現するためには必要不可欠な活動であっても
ビジネスとして成り立たない事業を行うわけにはいかない。
やりたくても、時間や能力、労力、技術、経験、ノウハウなどが無い。
このような領域にこそNPOと協働する意義がある。
営利ではできない自らの事業に必要不可欠な領域をカバーするNPO、
現状の事業モデルではどうしても回避できないリスクを縮減するNPO、
中長期的な視点を見失わないように見守ってくれるNPO
とのコラボレーションはWIN-WIN状況を生み出すことができる。


さらにNPOはネットワーク組織体であり、
NPOとの協働はCSRを第三者に正確に伝えてもらうことが
期待でき、事業にとっても良い影響を与えるだろう。
そうNPOは企業のCSRなり、理念を物語りとして伝えてくれるのである。