角川エンタテインメント
16歳の合衆国

(元)恋人の弟である知能障害を持つ男の子を殺害した少年の物語りです。
彼の父親はベストセラー作家で10年来会っていなかった息子の取材?!のために帰郷する。
保護施設の教師も作家志望で彼を題材にこれまた小説を書こうとする。

観ていて大江健三郎さんを思い出しました。
彼の作品の中で一番好きなのは「新しい人よ目覚めよ」なんですか、
この作品は障害児として生まれたイーヨーを受け入れるまでの
父親の葛藤が書かれています。
大江さんはご存知のように光君という障害を持つお子さんがいますので、
フィクションでありながら、極めてノンフィクションに近い作品です。
ここまで自分の人生を切り刻んでいくのかと驚愕した記憶があります。




大江 健三郎
新しい人よ眼ざめよ

話はそれましたが、彼の殺害の理由を調べるべく作家達は奔走しますが、
一言で言える理由なんてあるはずがない。
もちろん今回のような場合ではなく、単純に喧嘩をした成り行きなど
極めてわかりやすい理由による犯行もありますが・・・
理由なんて所詮、その時々の時代の要請に従って、多くの理由の中から
もっともらしい理由が社会的に構成されていくものだから。
今だと理由無き殺人が時代にあった理由かもしれないけど。

この少年も今までの人生で経験してきた色々な出来事があり、
それらが臨界点に達したときに、弱さ、あるいは無力の象徴として
知能障害を持つ少年を捉え、善意から殺害してしまったと言うこと
なのかもしれないと思った。
だから、世間が求めているわかりやすい理由など語れるはずがない。

BGMもない凄く地味な作品でしたが、
最後の5分ぐらいは見せてくれました。

16歳の合衆国@映画生活