世間では今日も、真偽の定かではないニュースやゴシップ、スキャンダルが飛び交っています。


昔から噂話は人を惹きつけるものですが、最近のSNSを中心とした情報空間は、どうもノイズが多すぎて騒がしい。皆がこぞって「いち早く反応すること」に躍起になっていますが、騒いだ矢先にソースが不確かだと判明し、大した検証もされずにフェードアウトしていく事象を、私たちは何度見せられてきたでしょうか。


正直なところ、私にはこれに付き合っている余裕がありません。薬(強制冷却)で限界駆動させている90kgの巨体を維持しつつ、一級建築士の妻の合理的かつ堅牢な家庭内アーキテクチャの下で家事育児のメイン担当を回すには、私の脳内CPUリソースは常にカツカツなのです。


したがって、私の初期行動は「なんとなく、そういう情報が出力されたのだな」とバッファに留めるだけ。ある程度材料(データ)が揃い、定常状態に達してから精査するかどうかを決めます。


私が単に「怠惰」であるというのも大きな一因ですが、実はこの「すぐには反応しない(できない)」というスタンスが、結果としてメディアの扇動に踊らされるリスクを劇的に低減してくれていることに気づきました。


これを「制御工学」の視点から分解してみましょう。


事象に対する人間のリアクションは、フィードバックループに似ています。入力(ニュース)に対して、システム(自分)が追従しようと補正をかけるわけですが、ここで「早く反応しなければ」と焦るのは、比例ゲインを過剰に高く設定している状態に等しいのです。


ゲインが高すぎるとどうなるか?


システムは敏感に反応するようになりますが、同時に少しのノイズ(不確かな情報)に対しても過剰にオーバーシュートを繰り返し、結果としてハンチング(振動)を起こします。


最悪の場合、制御不能となって「発散」します。ネット上で怒りや悲しみをコントロールできずに暴走している人々は、まさにこの「高ゲイン設定による発散状態」にあると言えるでしょう。


敏感に反応することは、時として設計的に致命的な悪影響をもたらすのです。


一方で、私の「怠惰」は、高周波のノイズ(単発のゴシップやフェイクニュース)を綺麗にカットし、本当に必要な低周波の信号(本質的な事実や構造の変化)だけを通す「ローパスフィルタ」として機能しています。


石橋を叩いて壊すほどのリサーチを好む私の性質上、不確かなインパルス入力で自分という重いシステムを駆動させるのは、エネルギー効率が悪すぎるのです。


「すぐに反応しない」という意図的な遅延(ディレイ)は、複雑な情報社会を生き抜くための、極めて合理的な防衛機構(フェイルセーフ)なのかもしれません。


さて、世の中には他人の発したノイズに過敏に反応し、自身のシステムを不必要に発散させて疲弊している人があまりに多いように見受けられます。


あなたはご自身の情報処理回路に、どのようなカットオフ周波数を設定していますか?