毎年、夏になると海へ出かけたくなる。
海を眺めるだけでも十分なのに、気づけば「今年も水族館に行きたいな」と思ってしまう。
一昨年の夏の旅でも、もちろん立ち寄った。
そして見事に、クラゲの世界へ吸い込まれた。
もちろん、子どもの頃にもクラゲは見ているはず。
なのに、「クラゲって、こんなに美しかった?」と、人生何十年目かにして改めて感動することになる。
車椅子から眺めていたこともあって、水槽がいつも以上に近く感じられた。
気づけば、クラゲより私のほうがじーっと動かない。
完全に見入っていた。
幻想的な光をまとい、透き通る体をゆっくり揺らしながら漂うクラゲ。
ふわり、ゆらり。
「あぁ、こんなふうに生きられたら肩こりもしないのかな。」
……なんて、くだらないことまで考えてしまう。
繊細な触手は水の中で花びらのように広がり、静かな空間には癒やししかない。
ずっと眺めていたくなる景色だった。
その結果、写真はほんの数枚。
「写真を撮る」という本来の目的をすっかり忘れ、ただ見とれて帰ってきた。
でも、その数枚の写真を眺めるだけで、あの日の空気や光まで思い出せるから不思議だ。
そういえば、昔からクラゲは好きだった。
絵を描いたり、刺繍糸で表現してみたり。
今見返すと、「あの頃からクラゲに取り憑かれていたんだな」と、自分でもちょっと笑ってしまう。
そして今年。
「また会いに行こう」と思っていたら、お手紙春号で紹介した画家さんの技法がふと頭に浮かんだ。
「あっ、この描き方を一部使いクラゲを描いてみたい。」
思いついたら最後。
描かずにはいられない。
アクリル絵の具で海の色を重ね、白いペンで一匹ずつクラゲを泳がせていく。
描いている時間は、水族館の続きを過ごしているようだった。
こうして少しずつ形になっているのが、「クラゲの世界」シリーズ。
どうやら私の夏は、海へ行く前に絵の中から始まったらしい。





