半分ツイていて半分ツイていなかった日。
古本屋でのこと。
夕方に行くと先客が数名いたが、物色しているうちにしばらくして先客が出ていった。
小さな店内で一人、一冊の古本を読んでいるとまた一人、店内に入ってきた。
背中側から少し小さめの声が一言、「コーヒー。」
ふと、何気なくその声のする方を見た。
私が会いたくてたまらない人だった。
静かな店内に香るコーヒーの香りと、その空間に小さく響くその人の声に
ページをめくる指に緊張が走った、
呼吸をするのを忘れるくらいに緊張した。
声はかけていない。
静かに流れる時間の中、少しの間でも彼と同じ空間にいれたことで胸がいっぱいになった。
遅い昼食をとるか、古本屋に行くかの選択の違いで。
日中は今一番よく読んでいる小説「おいコー」の作者である方に会えた日でもあった。
愛嬌があり、優しくて大らかな素敵な女性だった。
短い間ではあったけれど、お話できたことがとてもうれしい。
会えることをとても楽しみにしていた。
ヒールのある靴を履こうか履かないか。
行きの電車が途中、トラブルで動かない。
時間に間に合わないと思いとっさに停車駅で降りた。
東武日光線、中央林間があと二分足らずで発車するらしかった。
ヒールの靴であったらきっと、間に合わなかった。
乗り込んだ電車一本で目的地、二子玉川駅へ行くことが出来た。
帰りも電車は運転見合わせのままだった。
新幹線で帰った。
半分だけツイてなかった。
でも本が巡り合せてくれたであろう一日だった。

