生き抜く1 | 「売りつけません!欲しがるまでは!」質問型営業

「売りつけません!欲しがるまでは!」質問型営業

「売ることではなく、買ってもらうこと」、これは営業だけでなく、
人に動いてもらうための極意です。質問中心の営業法、そして、
質問中心のコミュニケーションこそが終着点なのです。
この普及を始めて13年の青木が書いています。

死の谷を歩むとも


「たとい死の谷を歩むとも、災い恐れじ、神とともにいませばなり」


2年おきの、3度目の大病でベッドに伏しているとき、


「これダビデの聖句。やけになったらあなたの負けよ。勇気をもって
病魔と戦えば必ず治るわよ。神も私も一緒にいるんだから、かわいい
子供もいるんだから、お願いあなた」


と家内が枕もとに一片の紙を置いていった。


その紙には、太い鉛筆書きで「たとい死の谷を歩むとも…」の句が
記されてあった。


ところどころで濡れたかのように、にじんで字がうすく読みづらい
部分があった。


家内が涙の中でその句を書いたこと、その涙の雫が一切れの紙に
落ちたことを、私は容易に想像できた。


この7年程の間に、私は2年に1度のサイクルで3度も大病を経験した。
1度目の坦のう炎に始まり、胃潰瘍、そして昨年の肺化膿症と続き、
特に前回の肺化膿症の時は、入院後も40度近い高熱が20日間も下がらず、
もう少しでこの世に別離を告げることであった。


前2回の病気の時も、それまでは「病気」の「ビ」の字も知らない
できただけに、相当のショックであった。


しかし3回目の肺化膿症の病魔に襲われた時は、前とは比べものに
ならないほど絶望感に打ちひしがれた。


「どうして俺だけがこうも不幸な目に会わなければいけないんだ。
別に罰せられるようなこともしていない。それよりも何より2度の
大病を乗り越えて、会社の仕事も死にもの狂いでがんばった。そし
てようやく前以上のポストも取り戻した。なのに…」


私は暗闇の病室のベッドに頭を打ち付けて、一人おえつした。涙が
拭いても拭いても、とめどなく溢れた。そして20日が過ぎ、病状
そのものは小康を得たころ、ふと窓辺に目をやった。


二すじ三すじ煙が天に立ち昇っていた。
近くの火葬場の紫煙であった。次の瞬間、私は全く無意識の内に死の
うと思った。まるで煙に誘われるが如く。


5階の窓から今まさに飛び降りようとしたところを、点滴を取り替え
にきた看護婦さんに一命を助けられた。
正気に戻った後、自分自身の弱さ、情けなさ、無情といった嫌悪の感
が、頭の中に充満し、無気力そのものであった。


こんな時に見た言葉が「たとい死の谷を歩むとも、災い恐れじ、神と
ともにいませばなり」の聖句の一節であった。


家の近くに教会があり、家内は、それこそ、「藁をもつかむつもり気
持ち」でお祈りにいっていた。そこの教会で、ある老人から「ご主人
に何度も何度も読んでもらいなさい」と言われて渡されたとのことで
あった。


私は天井から下がっている点滴のびんを繋ぐ鎖の端に、その句が書か
れている紙を貼り付けた。そして、「たとい…、たとい…」と見始める
ことにした。


1日、2日、3日、5日、1週間と…。もうその頃は見ないでもすっ
かり暗記していた。「たとい死の谷を歩むとも、災い恐れじ、神とと
もにいませばなり」と。


その内にこの言葉を心の中で書くと、安らぎを感じ、落ち着きの情緒
を得るようになった。まるで子守唄のように…。


「災いがなんだ。逆境がなんだ。病気がなんだ。俺は死の谷を渡って
見事帰ってきたではないか。いつも俺のそばには神がいる。こわいも
のは無いんだ」


と、日頃およそ神などという言葉さえ信じたことのない私であったが、
この時はなぜかしら、


「いかなる逆境でも勇気をもってつき進んでいけば、かならす神がみ
ていてくれる」との境地に到達した。


あの時、ダビデの聖句が無かったら、今日の私は到底ありえなかった
と、私は心の底深くから思っている。


今でも仕事で、逆境の時、困った時、あの句を思い出し、勇気の糧と
している。


今年11月24日は、我々夫婦の15回目の結婚記念日である。何年か
ぶりで映画でも見て、小さなレストランで食事でもしようと思ってい
る。そしてその時、妻が前から欲しがっていたハンドバックとともに、

「たとい死の谷を歩むとも、災い恐れじ、神とともにいませばなり」
と書いた小さな額を渡そうと考えている。


文字通り寒くなった立冬の日の夜のことである。
 
(小田部武雄 41歳 会社員)


―「生きるとは何か」 PHP研究所編 


■これは、私が15年前に読んだ書物の中の一節である。一般の方々の
感動的なお話を50話ほど載せた本で、その当時もすでにもう印刷して
おらず、頂いた貴重な本である。その中の家族の絆をテーマにした
私が好きな文章のひとつである。


■いま、読売新聞で、「自殺」を特集に載せている。毎年、毎年3万人
以上の方々が自殺しているという。それも男性のビジネスマンが非常に
多いという。残された妻や子供たちは、なぜ主人を、父親を分かってや
らなかったかと、一生その後悔を背負って生きるという。死ぬものも、
生きるものにもつらい人生である。多くの成功者の話を聞くことがある。
その中で、必ずでてくるのが生きづまった時期の話である。その時期には、
多くの方が死を考えたという。その時にもし、そのことを投げていたら今
はないという。与えられた命、与えられたこの1度の人生、決して投げる
ことなく前進である。自分だけの光明を目指して…