こっちの方も、前回書いた『プシュケの涙』から2週間以上空いてしまいました、すいません。
さて、『付喪堂骨董店』、とりあえず既刊5冊読み終わったので感想・レビュー書きます。
この作品の世界には、古美術品や骨董品の事ではなく、幸せを呼ぶ石、未来を映す鏡など、不可思議な力を宿す『アンティーク』と呼ばれる道具が存在します。
主人公『来栖刻也』と『舞野咲』がアルバイトをしている店『付喪堂骨董店~FAKE~』はアンティークを扱う店なんですが、店に並ぶのは偽者のアンティークばかり。
その特異さ故に客足は悪く、閑古鳥の鳴く付喪堂骨董店ですけど、極稀に本物のアンティークが並ぶこともあります。
要するにアンティークと、それを求める人間、それによってアンティークが引き起こす事件に関わってしまう刻也と咲が織り成す物語です。
世界観や雰囲気は僕の嗜好に合ってました。
文章も読みやすいですし、キャラの設定も上手く作られてます。
話のテンポは、ダークで落ち着いた感じの世界観なのでそこまで良くはないんですが、内容自体は読みやすい文体で丁寧に書かれているのでそこまで苦には感じません。
それにこの作者、文書の構成力も中々高くて、読んでいて「騙された」と思うこともしばしばあります。
例えば
「キャラAがA’というアンティークと持っていてキャラBがB’というアンティークを持っていると思ったら、実はキャラAが持っていたのがB’のアンティークでキャラBの持っていたアンティークがA’だった」
とか。
このへんは、何となく奈須さんの『DDD』を想起させられましたね。
ちなみに話の構成は『ダンタリアンの書架』と同様で連作短編形式です。
今作の場合は1冊に大体4話入ってます。
その内の最後の1話はいずれの巻も刻也と咲の恋愛話。
2人の勘違い・・・というかすれ違う形での話は、読んでいて初々しいと感じます。
「じれったいなぁ」と思う場面もあるにはあるんですけど、何故か「イライラする」まではいかないんですよね。
1~3巻までは話のバランスが良かったんですが、4巻は最初の1話以降全部恋愛要素が絡んだ話で、『アンティーク』の影が薄くなっていて、作品の世界観が壊れていたように思います。
そのせいか5巻を読むのは若干不安でしたが、5巻ではまた3巻までと同じような雰囲気に戻っていたので一安心。
でも、3話目は別になくてもよかったんじゃないか、と思わなくもないです。
内容も薄かったし・・・
この手の作品に恋愛要素を入れるのは難しいですよ・・・
1~3、5巻みたいに1話程度なら、まだいいんですけど、4巻で作品の世界観を壊す程というのは、明らかに入れすぎ。
まぁ、そこらへんのバランスさえ間違えなければ、「良作(かそれ以上)」だと言い切れる作品にはなると思います。
それなりに期待して続巻が待てる1作。