この前買ってきた小説『プシュケの涙』、読み終わったので感想書きます。
夏休み、一人の少女が校舎の4階から飛び降り、自殺した。
それを目撃した榎戸川は、変人と名高い他クラスの由良から、彼女の自殺の真相を探るための協力を求められる。
果たしてそれは自殺なのか、それとも? 2人が辿り着いた真実とは……
この話はある少女の自殺から始まります。
はっきり言って序盤は話の展開に置いていかれる感が強かったです。
キャラの話してる内容がいまいちピントがずれてるというか噛み合ってないというかね・・・
立ち読みしてて気になったので買ったんですが、「これはハズレか・・・?」と思ってしまいました。
が、騙された・・・
今作は前編・後編、みたいな感じで大きく分けて2編から構成されていたんですよね。
しかも前編より後編の方が時間軸が前(=過去)なので、通りで序盤の話に付いていけないはずです。
前半は、人の心にズカズカと入り込んでくる「変人」由良の行動と、そんな彼の行動に振り回される榎戸川が繰り広げるミステリアスな展開に置いてけぼり感を感じましたが、真相に近づいていくにつれて、榎戸川達の緊張感が高まっていくところにはゾクっとさせられるものがありました。
ここから、追う側と追われる側の間でもう一騒動あるのかと思ったら、意外とあっさり終わってしまってちょっと物足りなかったです。
ええ、後半を読むまでは・・・
後編は、まだ少女が生きている時のお話なので前編とは雰囲気が全く違います。
読んでいてとにかく切なく、またやるせなくなりました。
不器用な2人が生み出した世界は、儚かったけどとても輝いていただけに、あんな展開になってしまったのは、切なくてやりきれないですね・・・
特にラストでの蝶の絵を描くキッカケになった2人の会話には、前編を読んでいるこそのやるせなさみたいなのがあってあれが彼女の生きていた時の姿だと思うと、救いようのない展開には切ない気持ちにさせられます。
でも、それと同時に不器用で変わり者の2人だからこそ分かり合えるというところは、陳腐ではあるけれど温かさに溢れた気持ちにさせられました。
確かにこの物語はハッピーエンドという結末ではなかったけど、由良と彼女の紡いできたモノガタリは決して不幸なものじゃなかったハズです。
あと、読了後に表紙を見てみると、また思うものがあります。
描かれている落ちていく中で繋がれた2人の手・・・、もしかするとこの絵は由良があの場にいた時、とりたかった行動なんじゃないかと思います・・・
ストーリーも構成も中々良くて、全体的に完成度の高い作品でした。
個人的には買ってアタリだったかな。
別に萌え作品を否定するつもりはありませんが、こういう作品をこそ皆に読んで欲しいと僕は思います。