★杉並学院男子生徒はあっぱれだったのか。43。cuarenta y tres.

1128~1153

●クリスマスイブのピザーラ。ヨハネの黙示録。ミルチア・エリアーデ。②

1153.2023年12/24 環七沿いにピザーラがある。自転車にバイクにとサンタクロースの赤い服を着こんだ配達員が大忙しにみえた。きょうはキリスト教徒にとってのクリスマスイブである。

 この国の大半の人たちは、かの地、ベツレヘムを思うことなく、皮相なる便乗文化に浸かっていよう。

 まいばすけっと高円寺大和陸橋店に27くらいの男がいた。私がいると見るや、私のいるほうに体をむけてまわり、レジ方向へいった。

 別の男は横目で私をとらえつつ商品を手にとって、そこを離れようとしなかった。67くらい。

 高島屋のオンラインストアで買ってこの日配達されたクリスマスケーキが崩れている。こんな問い合わせやSNS上の投稿が相次いだ。埼玉県の菓子メーカーがつくったものである。価格は五千円余り。たっけー。老舗高島屋は平謝りである。返金を考えている。

「われらの主なる神よ、あなたこそは、栄光とほまれと力とを受けるにふさわしいかた。あなたは万物を造られました。御旨[みむね]によって、万物は存在し、また造られたのであります。」(ヨハネの黙示録。4.11)

 ミルチア・エリアーデはこう書いた。

「われわれの論述において興味深いのは、単にこれらの図像[イコノグラフィー]が民衆の宗教教育に重要であったということだけではなく、それが人々の想像力の、さらには象徴的思考の目覚めと発展のためにはたした役割である。この種の寓話的な図像を眺めることで、キリスト教徒はさまざまな宗教的、準[パラ]宗教的象徴の宇宙に親しむようになっていった。信徒はしだいに価値と意味の世界に参入していき、彼らのある者にとっては、そうした意味の世界のほうが日常経験の世界よりもいっそう「リアル」で、貴重なものとさえなっていった。」(『世界宗教史Ⅲ』)

●セブンイレブンでコロッケを買う。①

1152.2023年12/24 上石神井プールへいくために久しぶりに西武新宿線に乗った。各停にすわれていた。鷺ノ宮で急行に乗りかえる手もあったけれど、すわれていたのでそのままでいた。途中駅で女が乗りこみ、ひとつおいたむこうにすわった。23くらい。見てやると、スマホを手にしていながら横目でこっちを見ていた。

 席を立つ。あいている隅にすわった。ななめ前に男がいる。70くらい。ううっと口を鳴らした。

 道順をたしかめておきたくて、石神井公園駅へと歩いた。帰りの道で、曲がりこんできた男がむかってきた。72くらい。

 公園脇をジョギング男がきていた。

 ごほっ。

 すれちがう前にその男が口を鳴らした。50くらい。そんな口鳴らしがなければ、私は気にもしていなかった。やりかえした。

 ぎょうざの満洲のある道をいく。

 ごほっ。

 その店の前に自転車できた男が口を鳴らした。35くらい。髪を頭頂部で編んで束ねている。私を十二分に意識してそうやった。居酒屋店主か。たらたらペダルをこぎ、藤ノ木というパン屋の手前でUターンし、もどっていく。

 腹ぺこだった。すきっぱらで泳ぐ気がしない。セブンイレブンでコロッケを買い、食べながら歩いた。車通りのむこう側に犬の散歩女がいた。45くらい。食べている私に顔をむけ、私を見ながら歩いていた。絶対に目線を切らなかった。

 上石神井プールで泳いだ。コース端に泳ぎつき方向転換にとなりのコースへいこうとするとき、そこにいる男40くらいが首を90度まわし私を見ているとわかった。この男は私をとくと見てから泳ぎだした。

 帰りの更衣室において、ある男が私のいるほうへきた。65くらい。背中のうしろを通ってシャワー場へいった。私だったら人のいないところを選ぶ。

 上石神井駅への道で、犬の散歩をしている女がいた。47くらい。

 うっ。

 女が口を鳴らした。やりかえすと、わざと痰を切るようにううっとやった。やりかえした。防犯用の笛を吹いてやった。

●交通警備員の女。三好達治。②

1151.2023年12/8 アスファルトの道路舗装をしている現場にさしかかった。交通警備員の女、23くらいが、こっちですと私を見ていう。ニット帽に白マスクの私にである。役者か芸人を志望しながらバイトをしているようにみえた。

 中杉通りを歩く。男30くらいは私とすれちがうとき、うっと口を鳴らした。これは予想の域内であり、倏忽としてやりかえした。

 世尊院を過ぎた。女がきていた。そのうしろに、男がいる。この男58くらいは、私と女がすれちがおうとするときにあいだに入って女を抜かす魂胆ありありだった。私は歩道に背をむけて待った。うえーっ。

 まいばすけっと高円寺北店に女がいた。25くらい。ヨーグルトの棚の前にいつづけ、動かない。私がほかへいって何度もどってもそこにいた。横目で私をうかがう。先にはレジにいかないと決めていたのにちがいない。

――ずーっとそこにいる。

 いってやった、牛乳をとるときに。

 離れると、ようやく女は動いた。私がどこにいくかを、首をまわして見ている。私はフェイントをかけ、女の意図を打ち砕いた。

 ローソン100高円寺北店に入ろうとしたけれど、込んでいたのでデイリーストアへいくことにした。環七の歩道に信号機つきの横断歩道があり、そこを歩いてくる女、55くらいが、首をまわし私を見つづけているのがみえた。人を見る女がまたいた。うえーっ。

 居酒屋のほうへもどった。

 デイリーストアに女がいた。22くらい。ひとところにいて体を出入口にむけ、商品を見下ろしている。その目は私からそれたばかりで、入ってきた私を見ていたことを裏書きしていた。こんな女に見られつづけるのか。

 でることにした。ふたたびのローソン100高円寺北店を外から見た。帽子をかぶった男が棚の前にいつづけている。68くらい。だから入らなかった。JRガード下へいき、やっぱり入ろうと体のむきをかえた。小道をはさんで店ととなりあう駐輪場の手前に男がいた。35くらい。たばこをすいつつ、こっちを眺めている。

 ガード下へもどった。ふりむくと、男が吸い殻を道端に捨て、同店に入っていくのがみえた。たばこくさい息をしていよう。

 時間をとってから入った。男が買いおわって詰め台にいた。首をまわして後方の先にきた私を見ている。あのたばこ男である。うえっ。

 ドーナツを買った。ガード下をいく。うっ。男がスマホを手に小走りに私を抜き去っていく。22くらい。いちいち口を鳴らした。

 前方遠くを、さっきのたばこ男が歩いている。枝道に顔をむけ、だれがいるかと見ている。うえっ。

 道をかえた。

 ごほっ。あの男がマンション出入口にきて、またも口を鳴らした。家のなかにいないで外にでてばかりいる。高卒男である。

 読書ノートを読み返す。こんな詩の一節があった。

「さてもさても人の世は 何から何まででたらめで さかしまごとの砂の山」(『三好達治詩集』)

●男がプールで髪を洗う。①

1150.2023年12/8 高円寺北を歩いた。ごほごほっと男が口を鳴らした。右のほうからであり、歩いている私を見て家人なのか、工事業者なのか、男がそうやった。40代か50代か。姿はみえなかった。防犯用の笛をふいてやりかえした。

 中村南スポーツセンターへいく。更衣室においてすでに水着になっている男が、私のいるほうに体をむけて立っていた。60くらい。壁一面の鏡を見て、そこに映る私を見ているのにちがいなかった。

 この男は水のなかで歩いているばかりだった。

 シャワー室でシャンプーをつかって髪を洗っている男がいた。この男である。どこのプールでもシャンプーの使用は、足元がすべるようになるという理由で禁止されている。だがここでその表示は見たことがない。銭湯がわりにしているのか。料金は半額以下である。

 この男は別の通路にいて、着替え中の私を、大鏡に映りこむ私を見ていた。私がでていくときには大鏡の前にいた。鏡に映る自身の顔を見つつ、見るふりで、そのうしろをとおっていく私を見ていたのにちがいない。かくまで自分のことをしてはいなかった。早く着替えて帰ろうという気はまるでないとみえた。常連の凡夫である。

 靴をはこうとするとき、知らない男が靴を手に靴箱のほうからきた。35くらい。受付にいる職員の女らに、ひとりだけ注目されるのを避けるためにこのタイミングを利用したとみえた。

●鷺宮プールに民間警備員は必要なのか。

1149.2023年11/26 小学校が中学校と統合になって廃校になり、いまは別の教育関連の用途につかわれているところがある。その横手を北に歩いた。女がきていた。23くらい。その目は私の運動靴に、ズボンにとむかい、よそを見ることはなかった。

 鷺宮プール、正確には中野区鷺宮スポーツ・コミュニティプラザへいく。予定の時間前に着いた。なかに警備員がいるか否かを見てみた。いた。先週はいなかったが、この日はいた。65くらい。外にいる私を見ている。気にしている。おれは不審者か。

 野球場の外縁をひとまわりしてもどった。券売機で利用券を買う。このとき警備員は私の横ちかくにいた。だから私の指のようすを見ていたはずである。券を手に階段口へと、この男の前を通った。

 ううっ。

 警備員が口を鳴らした。まただ。区営体育館の民間会社警備員なんて利用者を眺めて、ぼーっとしているだけだ。気にくわないとみなした男には排撃音をたてる。

 プールのなかに徒渉コースを歩いているだけの女がいた。60くらい。私がコース端に着いてもどるとき、この女はきまって顔をむけて私を見た。うえっ。

 ある女は25くらい、泳がずコースの端にいつづけた。私が25メートルを泳ぎきってもどるためにそっちへいかざるをえないとき、顔だけを90度そむけた。男ときている女だった。

 このプールにはしばらくいかないことにする。警備員をおいている中野区のプールにはいかない。

 鷺宮の踏切にひっかかった。軽ワゴンがとまっていた。運転手の男は私の存在に目をとめた。65くらい。首をまわして目で私を追いつづけた。いったん入ったスイッチはもどらない。

 裏道から阿佐谷パールセンターへでようとするとき、ちょうど右から女がきていた。この女、35くらいのうしろをいくことになった。女はただちに首をまわし、うしろの私を見にかかった。

 予定どおり女のうしろを離れた。サンジェルマンのほうへ歩いた。

 ローソン100高円寺北店に男が入ってきた。23くらい。私がいるほうにきた。

 レジ会計中、この男が順番待ちの先頭にきた。足を交差させて体を私にむけている。どういう支払いをするかを見つづけていた。

 店をでた。用ができ、もどっていくとき、この男がきているのがみえた。JRガード下でこの男は、スマホを手にし画面を見ながら私のいるほうにむかってきた。人をわざわざ見ることで存在理由を得る。こんな人ばかりがいる。この病患から免れている人は、はななだすくない。

●子犬にあっかんべーをしてやる。アコレ吉祥寺。

1148.2016年8/30 アコレ吉祥寺。女が子犬を出入口の端にくくりつけ、入ってきた。45くらい。私にあわせるように急ぎ足で歩いた。私がビフィズス菌ヨーグルトを目当てに立ちどまると、この女も立ちどまり商品棚へ目をむけた。私より先には絶対にいかない。てこでも動かないという意志が透けてみえていた。人をおとしめている。

 卵六個入りをとると、ごほっと口中音がした。そっちを見ると、その女がちかくまできていた。私を無視する顔をしていた。

 この女が別の通路にいた。どこにだれがいるのか、私がどこにいるのか見ようとするようすを、ありありとみせていた。

 レジ清算をおえた。店外にでた。つながれたままの子犬にあっかんべーを二度してやった。

●伊集院静。いなげや。初ブログ。

1147.2016年8月某日 坂をのぼる。もうすこしで車通りだというとき、すれちがおうとする男が、右手を口元にあててごほっごほっと口中音をたてた。65くらい。帽子をかぶっていた。気品なく、地を這うように生きているのにちがいない。前から歩いてくる人がどういう人であれ、別のほう別のほうを歩いていくのが賢明である。

 伊集院静はいう。世の中はそもそも不条理でできている。上司が白を黒といったら白であっても黒なのである。不条理をのりこえなければならない。

 この伝にしたがっていうと、私が常日頃この身にうける口笛や口中音、鼻中音は大きな全体の不条理の一斑ということである。

 空咳をしなければ道を歩くことのできない人の心的弱さといったらない。

 バスのなかで、うしろの女がごほっと咳をした。

 ケンタッキーフライドチキンからいなげや上石神井店への道において、雨傘をさした男が私のほうへ、ななめにまっすぐわたってきた。45くらい。私はこれを避け、男のいたほうへ移った。

 セコニックのバス停に男がいた。23くらい。スマホ片手に体はななめにし、遠くでバスを待つ私を視野にいれていた。

 初ブログです。たまりにたまっているものを吐きださせていただきます。ひとつおいたむこうに女がいる。ぜったいにこっちを見ると思っていたら、次駅でおりていった。

●ある男の行状。

1146.2023年9/10 朝8時、ごっほっ。ばか男高卒が昨晩から深更、しののめ、一帯をうろつきつつ間欠的にそうやっている。

 8:25 ごっほっ。ごっほっ。妻子がいるからとか一戸建てに住んでいるからといって、まともなわけではないとこの男が如実にぶちあげている。

 8:40 ごっほっ。

 10:05 ごっほっ。

 10:13 ごっほっ。

 10:14 ごっほっ。

 10:20 ごっほっ。

 ちかくの女がでていった。先週より13分早い。先々週より25分早い。はやめることで、こっちがいつでていくのかたしかめようとしているのにちがいない。また合わせようとしている。

 10:32 ごほっ。

 11:30 ごほっ。

 11:45 ごっほっ。

●都幾川。長野県小谷村。井荻の女。

1145.2016年8/29 都幾川。埼玉県内にあるこの川のほとりで深夜、16才の少年が五人の少年14から17才に顔や上半身を殴られた末、頭を川水につけられ、動かなくなった。溺死である。

 行方不明だった小1の女児が川のなかに沈んでいるのが見つかった。捜索二日目のことだ。小川の縁に女児のサンダルが残されており、当初から川を疑っていれば山への捜索はしなくてもよかっただろう。祖父母の家に遊びにきての事故?であり、静かな集落(長野県小谷村)がさわいだ。

 井荻駅の前にあるバス停へと歩いた。歩道上にて、ななめうしろからくる女?と歩度がおなじになっていると、その靴音からわかった。この人は、ううっと口中音をたてた。

 ふりむいた。女は私を視野にいれつつ喉に手をあて苦しそうなふりで、ううっと痰を切るような音をたてた。これも演技とみえた。ワンレングスの勤め帰りふう、22くらい。

●典型男――狭小一戸建ての場合。

1144.2023年11/24 ごほっ。くしゃみに似せた音がきこえた。隣家のベランダからこっちの窓にむけて男がわざとやった。人をびくつかせた。退屈まぎれにそうやった。

 仕事は休みなのか。有給をとって四連休にしている?休めるほどの、だれがやってもかわらない単純作業か。

 次から次へと繰りだしてくる。介護職員が気にくわない入所者に暴力をふるうという事例は後を絶たないが、この男も同じ地平にいる。窓にむけて、はあーっとやったこともある。

 いやがらせはとまらない。昨夜何もなかったのは、マンション不法侵入かつ迷惑行為を直接か間接か、とがめられたからだろう。脳細胞すかすかの、拘執の愚物である。

●東京地検がパーティー券にメスをいれる。鈴木哲夫。豊田真由子。

1143.2023年12/12 きのうホーム上に男がいた。私を見つつ、こっちのほうにきた。40くらい。非サラリーマンふう。

 自販機の陰によけた。このあと、こんな男から離れようと男がきたほうへ歩をすすめた。この動きを察したのか、男がその方向へ体をむけているのがみえた。どこまでも人を相手に、からっぽの内部をなにぶんでも埋めようとしているにちがいなかった。

 自販機をあいだに、この男の背中側へいく。

 中野駅南口をでた。中野通りの横断歩道の信号がすでに青になっていた。何人もの人のあとに、ひとり渡っていく。右むこうから男がきていた。28くらい。だんだんこっちに寄ってくる。私を見ている。見返すと、はっきり顔をこっちにむけて、歩くことより見ることを第一にしていた。

 ラジオ日本の朝の番組に鈴木哲夫がでていた。こんなことをいった。今般のパーティー券問題では東京地検は七月ぐらいから捜査の手を永田町界隈にのばしていた、と。

 これは森永卓郎の見立てとはちがう。だが、鈴木氏は地道に情報を得てきており、こっちのほうが正しいのだろう。

 ニッポン放送に豊田真由子がでていた。ちがうだろーで名を馳せた人である。厚生労働省官僚のあと、自民党安倍派の衆議院議員になっている。公募で選ばれた落下傘であり、選挙区の有力者に挨拶にいくと、こういわれた。応援してほしかったら金もってこい、と。へこんだ。世襲でもなんでもなく、諸方面でいじめられた。心労で体重が35キロになり、国会に通勤でつかっていた京浜東北線から議事堂がみえると、泣き崩れそうになった。パーティー券は50枚割りあてられた。一枚につき一万円である。売りさばくのはたいへんだった。次は100枚だった。売れなければ自腹を切ることになっていた。

 パーティー券は二万円だと、元衆議院議員の金子恵美が藤井聡にいった。

●まいばすけっとの女、男。B・パステルナーク

1142.2023年12/5 きょう大久保通りの変則交差点にむかっているとき、道の右を男がきていた。65くらい。どんどん真ん中よりにきた。からっぽである。そうなっていると気づいて、私はマンション一階の駐車場に逃れた。

 まいばすけっと東高円寺駅前店に入った。レジの順番待ちの近くにいた。セルフレジをつかう女30くらいがいるので、この女に体をむけないようにし、チョコレート菓子やらビスケットやらのある棚を見て待った。

 パン棚の横に男がいる。73くらい。前ではなく横であり、買い物カートと体を私のほうにむけ、顔だけをパン棚にむけて、そこに手をのばしている。私を逃さず視野におさめている体勢とうけとれた。

 会計中の女は60くらい、小銭をだすのに時間がかかり、なかなかおわらない。ようやくおわったかと思うと、ぴしーっと財布のファスナーを音たててしめてでていく。またこんなやつだ。

 レジ会計中、そのじじいがカートを私のうしろへ動かし、さらに横へ動かした。自身は私の真うしろへきた。狭い通路でそうやった。なんでこんなに接近してくるのか。何十年も前からずっと他人に無用のかかわりをしてきていよう。道徳観念はこれっぱかりもなく、その行動様態は年をとればとるほど濃縮されてきているのにちがいない。金円だけで生きてきた。その結果がこれである。

――ばかばっかり。

 つぶやいた。

――ばかばっかり。

 怒りが爆発しそうなのを押しとどめて出入口の店員の前でいって、店をでた。

 坂道がカーブしている。男が道の中央を歩いてくる。68くらい。端へ寄ろうとしない。

 青梅街道の歩道で男がむかってきた。35くらい。勤め人ふう。

 女が道の隅を、電柱に隠れるようにして歩いてくる。65くらい。私が曲がるところでちょうどむきあいそうなので、道の反対側の枝道に入りこんで、この女がいってしまうのを待った。

 B・パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』には、現実に都門で生きて感じさせられることとは全く別次元のことが書かれている。

「生命の酵母の魔法の作用で、ものみなは醗酵し、ふくれあがり、大きくなろうとしていた。生の悦びが、野や町を、そよ風のようにひろびろと吹きわたり、壁も塀も突きぬけ、樹々や生きものの体にも入りこんで、道すじのいっさいのものにそのおののきを伝えていた。」

●ガレージの白色灯。

1141.2023年12/5 きのう夜、いやがらせ男がガレージにいるとみなすことができた。なんとなれば、灯りが、それも黄色ではなく白い灯りがともっていたからである。家のなかにいられず外にでている。

 近づいていけば何かしてくると予想できた。それで、近辺を歩くことにした。

 枝道に入ろうというとき、そこからでてきた女がいた。22くらい。こっちに顔をむけきって、しげしげ私を見て、この顔のむきとは別のほうへいく。勤め帰りにはみえなかった。どこへ何をしにいったのか。

●自遊空間高円寺店のバイト男。男が目玉をそらす。②

1140.2023年12/6 自遊空間高円寺店。自動受付機が三台ある。そのひとつを女がつかっていた。なかなかおわらない。トラブルがおきたときに本部とつながるパソコンに移った。何かおきたらしい。

 時間がもったいないので、端の受付機についた。この女が私に顔をむけた。やっぱりだった。

 こんな女のうしろをとおっていく。古い会員カードはつかえるのかというようなことをいった。女ではなく、長髪の男だった。25くらい。

 私を知っている店員男がいた。30くらい。キーボードの不具合が二度もあったからである。直してもいないのに直したと、でたらめをいっていた。私がいると気づき、どこの個室に入ったのかを見ていたのにちがいない。在室中、すぐうしろを通りがかってごほっとやったのは、この男にちがいない。逆ギレである。どこか就職先をやめて、仕方なしにこんなところでバイトをしているのだろう。俗気で身を固めた男、底光りのない男である。

 線路沿いをいく。じきに中野駅というとき、むかって右をカップルがとろとろきていた。そのうしろにいる男は30くらい、左をいく私とカップルがすれちがう一瞬を狙ってあいだにきそうにみえた。

 道を右へと突っきった。マンションの陰で待機した。男がカップルを抜かすのがみえた。

 45くらいの男が道をむいて立ちどまっている。私は見られつづける。それで枝道へと道をわたろうと90度体のむきをかえたそのとき、折からきていた自転車の男33くらいが口元に手をあて、ごほっと思いっきりやった。目の前である。やりかえした。

 パチンコ店の裏口の前をとおっていこうとするとき、ちょうど女がでてきた。40くらい。この女はスマホを手にそこで立ちどまった。私よりも先を歩かないというわけである。

 洗面所をつかうことを思いたった。うしろをきている女を心内であざわらいつつ、その裏口へとむかった。

 折返しの初発の電車に乗って、発車を待っていた。ファイルから目をあげると、むこうのホームにいる男が目玉をそらした。書き物をしている私を窃視していたのである。缶コーヒーを手にしながらである。48くらい。スーツ姿。

 ふたつおいた端の男は23くらい、酒かジュースを飲んでお菓子を食べている。豆菓子なのか、ひとつひとつ袋からだしては口の中にいれている。あたりには私しかいない。顔がこっちにむかっている。スマホを見ているその目で私を視野にいれている。

●杉並学院男子生徒はあっぱれだったのか。①

1139.2023年12/6 阿佐ヶ谷への道において、ごほっと口鳴らしがきこえた。ふりむくと、男がスマホを見ながらきていた。55くらい。とぼけている。

 ローソンでゴミをすてた。店外にでると、すぐそこの自転車の前に女がおり、この女47くらいは私を見ていた。何をしたのかもずっと見ていたのにちがいない。自身のことを何らしていない。うえっ。

 中杉通りの歩道をいく。サンジェルマンの前をママチャリが走り去っていく。乗っているのは35くらいの女であり、のびた紐の先についた桃色の二股手袋をひきずっている。気づいていない。手袋がよごれる。

 杉並学院の制服カップルを抜かした。高二の男女か。

「よしっ、いくか」

 男子生徒がそういって、走りだした。一目散に駆けた先はあのママチャリである。相当走って、サイゼリアが二階にある建物あたりで追いついた。陸上部員か。

 彼が女に事情を説明しているのが、遠くにみえた。息も切らさずもどって、私とすれちがった。

 親指と人差し指でOKマークをだそうか迷ったが、だしていない。女子生徒の目があったとはいえ、あっぱれだった。

 阿佐ヶ谷で不都合があり、高円寺にもどることにした。セブンイレブンの角で馬橋通りを渡って歩いていると、ごほっとうしろからまたも口鳴らしがとんできた。ふりむいた。自転車の男がきている。17くらい。そのあとから女の自転車もきている。やりかえした。男はうろたえ気味だった。後ろ姿に二度三度さらにやってやった。ごほっ。男はまたやった。

 片や、同学院の男子四人組が横にならんで高架下をきていた。私が方向をかえるにあたり、この四人と一瞬むきあったとき、ごほっとひとりが口を鳴らした。

●スタバの飲み物。百瀬文晃。②

1138.2023年11/17 当初の考えは捨てて、電車に乗って帰ることにした。中野で三鷹行きを待った。近頃ないことだった。ホーム上に立ちどまっていると、男が私を見つけ、体をむけ、こっちを見つづけた。70くらい。

 そこを離れた。

 阿佐ヶ谷駅の洗面所、その個室に入った。ううっ、ううっ。扉の外でだれかが口鳴らしをくりかえした。

 個室をでると、二人待っていた。口鳴らしは、早くでろとの、いらだちの催促であるとわかった。またこんな男がいた。

 改札をでた。交通費がいくらかかったのか。Suicaの印字をしようと思った。このとき券売機の並びの端に男がいた。50くらい。構内にあるスタバで買ったのか飲み物のカップを券売機の脇において、スマホを見ている。体はどこにむいているかというと、券売機をつかう人たちにである。どういう神経なのだろう。

 高円寺駅南口からつづく高架沿いを、東へとった。むこうから人が何人かきていた。道の右から女が、左から男がきていた。そのあいだをいこうとしていると、その男25くらいが中央に寄ってきつつあった。あいだは狭まる。男にとって口鳴らしの好機というわけである。

 ビルの一階の空きスペースに逃れた。

「神にとって本当に大切にされることは、人が外目でどれほど成功したとか、人の前でどれほど立派であったかではなくて、その人がどれほど神を愛し、また兄弟たちを愛したかということです。」(百瀬文晃『キリストを知るために』)

●路上生活者のブルーシート。中島みゆき。①

1137.2023年11/17 ターミナル駅でおりようとするときドアがあいた。こっちはまだおりていないのに、席とりの女や男がどかどか入ってきた。

 着いた。建物の出入口がふたつあり、一方から女がでてきていた。50くらい。それでもう一方のほうへ入っていく。ごほっ。女が口を鳴らした。やりかえしつつ女を見てやった。白いズボン。上はよそゆきの派手っぽい模様の服。部屋着ではない。

 受付の列に並ぶ。すぐ前の女、23くらいは顔を横にむけ、アクリル板のようなものに映る私を見た。うえっ。

 取り寄せて持参した収入証紙が、あと一枚見つからない。係の男は白い制服のようなものからして警察官なのか。不審がり、五十円、五十円と周囲にきこえる声でいいたてた。

 もってこないはずはなかった。ないならこんなところに電車賃をつかってくるわけがなく、どこかにまぎれこんでいるにちがいなかった。

 この係員は48くらい、機械的に人を捌き、かつ裁く。単なる事務作業では創造性への志向は生まれず、組織の一員たるべきことに注力していればいい。情緒ゼロである。もっともその男は、同僚の仲間内には親しげに話しかけていた。うえっ。

 証紙は見つかった。袋のなかで眼鏡ケースに隠れるようにあった。

 導かれるままに封筒などに住所氏名等々を書いていた。

 ううっ。男が正面から私に口を鳴らして奥へいく。33くらい。講習をうけるのである。

 運転免許証がどのように送られてくるか。これを説明してくれた人は65くらい、先の警察公務員?のようにつんけんしていなかった。威張りくさらず、みずからの読みまちがいに、たいへん失礼しましたと恐縮していた。学校教師を定年まで勤めあげて、ここで仕事をしているのかもしれない。

 講習の席が指定された。洗面所へいってもどろうとするとき、ここかと思いカーテンをあけようとした。

――なにやってるんだ。

 男が叱責の声をあげた。目を血走らせている。

 入る部屋をまちがえたのである。カーテンが閉まっているのだから、そこをあけようとした私の過ちである。過ちは攻撃される。

 着席し、始まるのを待った。

 ううっ。右ななめうしろの男が口を鳴らした。

 三十分弱のDVDを見て、おわった。

 ふだんくる場所ではない。歩道を歩いていくと、ブルーシートに覆われた木枠なのか段ボールなのかが近眼の目に入った。ぶつかりそうになってよけた。そこは路上生活者の住み処である。いくつかあった。ぬくぬくと経済生活を謳歌しているのかもしれない公務員の男や女に、おれたちゃこうだぜと窮境を訴えているようにみえた。

 横断歩道で信号待ちになった。ごほっ。口鳴らし音がきこえた。見ると、スマホ目八分の男が歩いてきていた。30くらい。やりかえすと、ごほごほっと重ねた。やりかえした。

 いろいろあって疲れた。人の多さのなかにいると、私が抱える精髄のような何かが踏みつぶされるように思えた。

 何だかんだでプラス4419円かかった。次の五年後は、免許証記載の住所地で更新するかもしれない。中島みゆきが歌うように、五年かければ人の貌[かお]だちもかわる。(トーキョー迷子)

●髪を焦げ茶に染めた男。アウグスティヌス。

1136.2023年11/15 緑道に沿った道をいく。男が曲がりこんできた。23くらい。髪を焦げ茶にまだらに染めている。この男とならびあうことになった。別の道をいくことも考えたけれど、まあいいかと早足になって差をひろげていく。

 くしゃーん。

 男が嘘のくしゃみを思いっきりやった。このとき私のすぐうしろにきていた。うえっ。古着屋か居酒屋の店員にみえた。この国の資本主義に、もともとプロテスタンティズムのようなものはなく、日常的な道徳観念はまったく育っていない。それで、その男のような、いつか強力犯になるやもしれないと感じさせられる男が跋扈している。

 阿佐ヶ谷パールセンターから連絡路に入り、中杉通りにでようとした。そのとき南からきている男とかちあいそうになった。スピードをゆるめ横断歩道の前へいこうとすると、当の男が目の前でうっと口を鳴らした。

 駅構内のストレスの多さを考え、この男のあとをいくことにした。男はきょろきょろしながら歩いている。所詮こんなやつだった。

 これを書いていると、空間のすじむこうの女がこっちを見ていた。25くらい。うえっ。冊子を盾にする。おりるときそれをはずすと、女が私を見つづけているとわかった。てのひらでぱーとやって、となりの車両へいく。

 ホームにおりて歩きだす。その女が横目でこっちを見ているのがみえた。うえっ。

 男がスマホを見つつ坂をおりてくる。35くらい。スーツ姿。むかって右から私にむかってくる。むかって左からは別のスマホ男がきていたから、私は避けようがなかった。

 下りエスカレーターをつかおうとした。すでに女が乗っていた。30くらい。女はステップにとどまり、歩いていかない。それでエレベーターにしようと動くや、ごほっと下からあがってくる男のひとりが口を鳴らした。顔をあげて上を見ていたのである。

 乗客がへった。右すじかいの先に女がいる。30くらい。こっちに目をむけた。いまもまたスマホから顔をあげ、目をむけた。終点に着くとき、私のいるほうのドア前にきた。エスカレーターの降り口からは離れているというのにそうしたのは、私を見るためか。

 この女はアウグスティヌスとはちがう。自分自身にたちかえって神にみちびかれながら心の内奥に入っていくことはない。(『アウグスティヌス 世界の名著16』)

 まいばすけっと中野駅西店。男がちかくにきた。23くらい。この男の右にいくと、男はこっちに体をむけ私を見た。それで左へいくと、男はまたも私に体をむけ私を見た。こんな男のうしろをとおって奥へいく。男は私を追うように歩いてきた。どこまでも人を見る。こんな男がまたいた。

●統一何とかとパーティー券。森永卓郎。

1135.2023年12/4 支持率が下がる一方の岸田内閣、この首相をかえようという動きが自民党内で始まっている。それで彼が統一教会系のトップと同席していたことを、反岸田のだれかが朝日新聞に情報を伝えた。何としてもその座にとどまりたい岸田は逆襲に打ってでた。それが最大派閥旧安倍派と二階派のパーティー券収入キックバック問題の表沙汰であり、おまえらこんなことしてるじゃないかというわけである。

 上のことをニッポン放送で森永卓郎がいった。垣花正あなたとハッピーのなかである。趣味はないのかと、森永は岸田をからかった。

 いいぞ!

 あーあ、またラジオ聴いちゃった。

●女子大生が東急ストアに入っていく。百瀬文晃。②

1134.2023年11/19 阿佐ヶ谷の三井住友銀行に沿って歩いていると、ごほっと女が口鳴らしをした。信号機付き横断歩道をわたってきている女、23くらいが、私に顔をむけてそうやった。

 このとき初めてその女を見た。口鳴らしがなかったなら、近眼なのだから気にもしなかっただろう。女は、かちあうのを見越して威嚇したというわけである。うえっ。

 やりかえした。阿佐谷パールセンターへの連絡路をいく女に、もう一度見舞った。

 帰りのとき、ベーカリーのサンジェルマンのところで男22くらいが、すれちがおうとする間際ごほっと咳真似をした。またこんなやつだ。

 高円寺の東急ストアに女が入っていく。21くらい。女子大生か。髪はみじかい。薄青のジーンズ。足の運び具合、腰つき、それに後ろ姿は、運動系であることを思わせた。陸上部かテニス部か。

 ローソン100高円寺北店。レジ会計中、私の横に女がきた。順番を待つところである。22くらい。私が何をするかを見ていた。

 もうひとつレジがあいた。この女が私のうしろをとおってそこへいく。右の脇腹あたりにあるバッグから財布をだそうとし、こうして顔を横にむけてこっちをうかがった。うえっ。先におわった私はこんな女のうしろを避け、通路に入りこんで回り道をして外にでた。

 帰宅。五分後、ごほっ、ごほっ、ごっほごっほ、ごほっと嘘の咳の連発を窓外に聞く。迷惑行為しまくりの男は、机にむかって何かすることがいっこうにないにちがいない。どこまでも人を相手にしている。この男の配偶者も子も、夫や父の行為を知らないはずはない。それなのにまったく抑えこんできていない。

「社会の繁栄ばかりを基準とする教育は、ますます人間をその歯車の一つとしつつあります。非人間的な激しい競争の中で、弱者がますます片隅に押しやられ、勝利者はますます人間らしさとゆとりある心を失っていきます。」(百瀬文晃『キリストを知るために』)

 百瀬のいう「自分の魂に訴えかけてきて、もはやそれなしには生きていけないような価値」を、そのいやがらせ男も家族成員も求めていない。

●尼神インター。①

1133.2023年11/19 鷺宮プールへいく。五月以来およそ半年ぶりである。そこは中野区であり、この区のプールの一階ロビーには銀行のATMコーナーでもあるまいに、警備会社の警備員がいる。することがなく、利用客を眺めているばかりである。そんなひとりの男、30くらいから、ごほっと何度か口鳴らしをされ、同プールからは遠ざかっていた。

 この日、警備員はいなかった。たまたまなのか。わからない。

 階段をおりていく。地下一階に女があらわれた。40くらい。すでに顔をこっちにむけており、私が目をむけるや、きたないものでも嫌うように顔をそむけた。またかと思いつつ地下二階におりた。

 靴をいれるポリ袋が復活していた。コロナウイルスはおそれられていない。

 更衣室にカーテンをしめられる着替えスペースがあるから。このプールをずっと利用してきた。そこはかわらずあった。

 ひとつのコースにふたりが泳ぐという様態ではない、もっと広いので、うしろの人にせかされることはなかった。この時期はどこのプールでも利用者が減るのであり、夏であるとこうはいかない。うっと口鳴らしをするやからだっている。

 ある55くらいの男性が、泳ぎ着いた。私を誘導してくれた。もどるための端へである。お為ごかしというのではなく、自身とぶつからないようにとの心底の親切心からだと感じとれた。

 この人は達者な泳ぎをしていた。私のような一般客ではなく、区内在住の料金半額の会員なのだろう。

 こんな人に久しぶりに会った。

 泳げた。比較的すいていたからだ。

 冷えた体をあたためようとファミマでカップコーヒーSサイズを買う。中村南で泳いだあとここに立ち寄ってきたように、この日もそうした。ひとときの、ささやかな悦楽が訪れるかと思いきや、女が犬の散歩をしつつ近くにいた。23くらい。この女から離れ、この女に見られないように中杉通りを背にして飲んだ。道行く人を背中で気にしながらである。

 パチンコ店の洗面所をつかう。このあと、西武新宿線の踏切へいく前に、いったん鷺宮駅のほうへいこうと考えた。おりている遮断機のためにできた車列のなかの一台から、ごほっと口鳴らしをされたことがあったからである。

 パチンコ店の前の横断歩道をわたりきった。さっきの犬の散歩女が、犬ではなく私をまっすぐに見て歩いてきている。ファミマのコーヒーを飲もうとしていたあいつだくらいに思っていよう。

 こんな人の多いところで犬の散歩なんてよくできるよなあ。

 傲り昂りがにじみでているような顔、尼神インターの近頃やせてかわいくなったといわれるほうに似た顔、その顔の女からこの身をひきはがすように足のむきをかえた。踏切への最短距離をとれた。

●大竹まことゴールデンラジオ。伊集院静。②

1132.2023年11/27 伊集院静はかつて17才の弟を水難事故で亡くしている。そのとき高校の先生から、こんなようなことをいわれた。不幸な人生というものはない、と。みごとな相対主義である。この話を伊集院の著書から大竹まことが、文化放送の番組内でとりあげた。いまガザの人たちは、太平楽の日本の俗人たちのあこがれる幸福なんてもとめようがない。それは下におく人を踏みつけにしたうえでの、幸福まがいのものであり、ほんのひとつの様態でしかない。

●ヘリコプターがホバリングする。①

1131.2023年11/27 昨夜、消防車のサイレンがきこえた。頭上ちかくホバリングし旋回するヘリコプターの轟音が三十分以上つづいた。ものすさまじかった。火災現場の取材をしていたのにちがいなく、今朝のニュース報道でこの一帯のどこかで、あわせて五棟が三時間以上燃えたことを知った。当たりをつけてひとまわりしてみたものの、日常の風景しかなかった。

 杉並学院の前で、ごほっと口鳴らしがきこえた。ふりむいた。自転車の男がきていた。73くらい。

 阿佐ヶ谷のパチンコ店二階において、女50くらいは前へいきつつうしろの私に顔をむけ、私を見た。こっちは洗面所をめざしていたにすぎない。

 ホームに女がいた。50くらい。初発待ちである。線路にたいして体を45度にし、遠くのこっちを見ていた。私は、おりるときのことを考えそっちへいきたかったけれど、あきらめた。

 ふたつおいたむこうにスマホ男がいる。33くらい。ファイル作業の私を嫌うように立ちあがった。こっちをむいて上着を着こんで、まだ次駅はこれからなのにドアを前にしている。

 真ん前の男は58くらい、足を組んでスマホを見ていた。つと立って、手提げ鞄をもって通路を歩いていく。

 空間のすじむこうの女、23くらいは、顔をあげては横目でこっちを見ている。

 まいばすけっと中野駅西店に男がふたり入ってきた。うしろのほうの男、30くらいが私にむかってきた。まただ。この男とすれちがって、離れた。

 ごほっ。

 その男が口を鳴らした。やりかえすと、こっちに顔をむけた。うえっ。

 この男に徴してみても私がちかくの男に挨拶していたのが、いかにばかばかしかったかがわかる。その男は私がいるとわかって数年このかた攻撃性を発揮しつづけている。仕事はしていても、家ですることがない。狭小一戸建てに暮らす。こんな男が何をしてくるかの実例がそれである。

 きのう夜の火災現場はどこかと、ふたたびさがした。Youtubeの映像をみても、どこなのかわからなかった。

 このあたりかと思って歩いてみてもなかった。よく通ってきた細道に入りこもうとすると、女50くらいがそこから歩いてくるので、この女がいってしまってから入りこんだ。車一台も通れない道である。

 なんだか焦げくさい。ここか。ときに一瞥をくれてきたアパートふうの建物、その窓にガラスがない。か黒い空洞があった。

 ここだ。ここだったのか。

 立ちどまり、亡くなった人に手をあわせた。

 小道をでるとき十字路をふりかえると、家族連れらしい四人がそこを見ているのがみえた。

 右をとった。スマホを見ながらの男30くらいとすれちがい、この男もその道へ入っていった。

 部屋を借りるにしても道幅が狭く消防車の入れない人屋稠密地は、鎮火しにくく、こわいと知れよう。消防車が四十数台も出動し環七沿いに何台もが待機していたのは、ひとつまちがえたら大火になるという消防当局の読みがあったからにちがいない。

 三叉路のところを男が、右から左へ歩いていく。35くらい。首をまわして私を見つづけるので、私はちがうほうに顔をむけた。男が建物で見えなくなる頃に顔を正面にむけると、これにあわせるように男の首が元にもどった。しつこくもこっちを、あくまで見つづけていた。俗流男、赤の他人に興味勃々たる男がまたいた。

 道をかえた。すこししてまたもこの男を見ることになり、角のマンション住民だとわかった。

 一晩たって、思いだせることがある。レジ袋をさげてあそこを歩いていたとき、うしろから自転車がくるのでよけた。勤め人ふうの男性25くらいが、すいません、ありがとうございますといい、この人は該現場あたりの集合住宅に自転車をとめたからそこの住人である。なかが燃えきったような建物に、たしか隣接していた。燃えた五棟のうちに入っているのか。

●ローソン100に二人組の女がいた。ゲーテ。②

1130.2023年10/2 線路沿いをいく。男がきていた。27くらい。金茶色の髪をした、いかにも神経がさつふうにみえた。こっちに顔をむけた。あとすこしで道をあいだにすれちがうというとき、ななめにまっすぐむかってきた。

 ローソン100高円寺北店に二人組の女がいた。ともに22くらい、髪がながく、踝までのロングスカートである。べちゃくちゃしゃべりつつ、野菜サラダの前にいた。ひとりは、そこの商品を手にしパッケージを見ては、元にもどした。ふたりでそこにいつづけた。

 何を買いにきたというのか。

 このふたりがどくのを待つ羽目になった。ようやくどくとき、ひとりが私の存在に気づき、うっと口を鳴らした。野菜サラダをとった私は、通路にこの女が入りこんで、はだけた目で私をとらえているのをみてとった。うっとやりかえした。この女といい線路沿いでむかってきた男といい、よほど劣等感がつよいのにちがいない。

「神々に近づこうと努力しながら、いつまでもたっても、自分から脱けられない、馬鹿げた奴め。」(ゲーテ『ファウスト』)

 この日のかれらは、神々に近づこうともしてはいない。心的スラム街の、目にみえる色彩だけはあざやかな住民である。

●女が不自然に長椅子にすわった。①

1129.2023年10/2 道の中央を歩いた。もうすぐ高円寺駅の高架沿いの道にでる。そのとき一方の側から男65くらいが、もう一方から女20くらいがきていた。その男がこっちにむかってきた。まただ。

 男がすじかいにすわった。がらがらなのにそこにきた。73くらい。ぅゎああと口にだしてすわりこんだ。いかにも世間ずれしているようにみえた。

 左むこうをなんとなく見ても、だれもいない。長椅子がいくらでもある。高田馬場で乗りこんで長椅子にすわったのは、ふたりにすぎない。

 おりるにあたってはこんな男を避けて、隣りの車両へいこう。

 早稲田。だれも乗りこまない。通路を歩いてくる人たちばかりが目立つ。

 女が左ななめむこうの長椅子にすわった。23くらい。なんとなく不自然であり、こっちにきたいのに私の目の前を通るのを嫌厭しているのかもしれない。

 別の女が目の前を通っていく。その女が立ちあがった。別の女につづいて隣りの車両へいく。やっぱりだ。

 おりるために連結部のドアをひいて隣りの車両へ移った。男がいた。28くらい。あくほうのドアに背をむけ、あかないほうのドアの上の案内表示を見ている。おりる気をみせていない。

 おりたあと、この男は私のうしろをぴたりとついてきた。

 半ズボンの男がホームドアにたいして体を45度にし、私がくるのを見ていた。うっ。男は口を鳴らした。

 道の両側から人がきていた。だから真ん中をいく。右からの女は45くらい、こっち寄りに移ってきた。私を見た。うえっ。

●中村南スポーツセンターへいく。百瀬文晃。

1128.2023年11/16 環七の歩道をとっていた。67くらいの男が真ん中をきた。両手をズボンのポケットにいれたまま、ふんぞりかえったようすのまま、車道寄りをいく私にむかってきた。まただ。

 男が自転車できた。65くらい。駐輪スペースにとめ、くしゃーんとわざとくしゃみのまねをした。

 犬の散歩をしている女がいた。25くらい。私に気づいたようである。くしゃみ男が入っていったあとだから、つづいていくとろくな目にあいそうもない。けれど建物の外にいると、その女に見られつづける。

 迷った末、入ることにした。その男が券売機の前にいた。券売機はふたつあるけれども男がいなくなってからにしようと、離れたところで待った。この男に体をむけてはいない。

 男は利用券を手に、体を私のいるほうにまわし――私を見て――ゲートにむかった。ゲートの位置を考えるならこっちに体をまわすのはエネルギーの無駄であるのに、お感じなしといったていであった。

 この男は更衣室で、にせのくしゃみを四度五度とやった。こっちにくるなといっているとみえた。

 帰りの更衣室に、67くらいの男がいた。洗面台の前で大鏡に体をむけ、そこに映りこむ私を見つづけた。早く着替えてしまおうとはまったく思っていないようだった。

 ゲートをでた。靴箱のほうにいる男が、ふりむいたまま人形のように固まって顔を私に向けつづけた。60くらい。みずからのこと、靴をとりだして履くということをしていなかった。

 中杉通りの横断歩道手前に男がいた。30くらい。スーツに黒いコートであり、黒のビジネスリュックを背負っている。立っているこの男のうしろをとおっていこうとするとき、ぴしーっと男は何かのファスナーをあけたかしめたかした。排撃である。嫌悪の排却か。いつもどこかでだれかにやってきているような手慣れたやり口である。その顔つきは、前にすぐそこの三井住友銀行の裏口からでてきた男、ごほっとうしろから私に口鳴らしをした尊大倨傲銀行員にどことなし似ていた。この男もまた神を知らない。「つまり神を知るということは、同時に自分を知るということでもあります。そして自分を知るということは自分の惨めさを知るということでもあります。」(百瀬文晃『キリストを知るために』)

 阿佐ヶ谷駅南口から徒歩一分にあるまいばすけっとに入った。きのう日付をまちがえロールパンを買いそこねていたからである。この曜日の、この時間なら、あのバイト女はいないだろうとの読みもあった。おにぎりの上に豆腐をおいてぺったんこにするといういやがらせ、そんなことをした28くらいのやつだ。

 レジの順番のほうへいく。女がいた。50くらい。私がくるのをとらえられる位置どりをしていた。そのあとにつく。

 女は自身の番がくると、店内カゴをレジ台におき体全体を60度まわした。なんという体勢だろう。こうして私を見にかかった。

 ひきのく。女の視界の外にでた。こっちにくる客はいなかった。この店は客のいないときは、ほんとうにいない。

 高円寺駅南口を通りすぎた。高架沿いをいく。むこうから何人もがきていた。ふたりで並んで歩くうちのひとりが、すれちがうときうっと口を鳴らした。まただ。金太郎飴だ。

 ローソン100。レジ会計中、横にきた男は、私にぴたりと体をむけて待った。24くらい。うえっ。