俺が十代の時に経験した忘れもしない、または忘れられない体験の物語。
あれは今からちょうど10年も前に遡る。
ここは愛知県瀬戸市にある大きな大きな鳥篭だ。
入り口はごくごく普通の学校の正門のような雰囲気で俺を迎え入れてくれた。
マイクロバスに揺られ正門をくぐり抜けた時、ある種の覚悟を必要とした。
正門をくぐってから500メートルくらい進んだ所に2階建ての建物がどんと構えた様子で俺の目の前に建っていた。
隣接された所には運動場が見え、畑や民家までが見える。
だが普通の景色と違うのは、塀というよりは3㍍以上はある鉄の柵が建物の周囲を取り囲むようにそびえ立っていた。
もちろん柵の上部には返しがついていて、そこから逃げようとするものをあざ笑うかの様に塀の内側の方に曲がっていた。
「これじゃぁ逃げるやつもいませんね」
ふと言葉に出た。
それを聞いた施設の職員が、「ここまで来て逃げる事を考えとるのか?」と一言。
そりゃ誰だって最初はそう思うでしょう。
まだ分からない人もいるかもしれないがここは、『瀬戸少年院』である。
俺は15歳の時に事件を数件起こし家庭裁判所の処分で、
『初等少年院送致』(11ヶ月以上2年未満)の収容を余儀なくされた。
まだまだ遊び足りない中学3年生の10月だった。
右も左も全然分かっていない生意気な俺が人生で初めて味わった苦痛・虚無感だった。
こんなところで1年も過ごすのかと思うとぞっとした。
8月に逮捕されるまでの俺は、中学生ながら学校には行かず毎日自分の兄貴や先輩達と遊びまわっていた。
二つ離れた兄貴のおかげでやんちゃする事に中学1年で目覚め、暴走族に入ることに夢を見ていた。
しかし兄貴のチームには年がまだ若いという理由で入れてもらえず、ただただやりたい放題やっていた。
いつかそれが認められてチームに入れてもらえるだろうと・・・
だが、それが仇となりこの時の地獄となるような結果を招いてしまった。
少年院の施設の入り口の前にバスが止められ、俺はそこで降ろされ、職員が5人ほど出迎えていた。
頭をこずくやつ、俺が何の事件を起こしたか知っているくせに嫌味ったらしく聞いてくるやつ、市役所にいるような事務的な対応をするやつ、オマエヤクザだろ?って思うほどごつくて貫禄のあるやつ。
こいつらが俺を出迎えた職員or先生にあたる人達だった。
その先生達に連れられ、院長室に連れて行かれた。
そこの部屋にいたのが中年の恰幅のいいおっさんだった。
印象は優しそうな感じのおっさん。もちろん終始優しかったイメージが今でもある。
俺は院長が座る前に立たされ、無理やり頭を下げさせられた。
院長が言葉を発した、「T・T、君は監禁傷害、その他諸々の非行事実を起こしてここに入院することになったのだが今の気持ちはどうですか?」
まだ正直俺の中ではこんな自由も娯楽も無いような場所で1年も暮らさなきゃならない現実を受けとめきれていなかった。
「家に帰りたいです」本音をボロっと言った。
それを聞いた院長が大きく笑った。
「T君、そう思うのは最初だけで、ここに来てしまった以上引き返すことは出来ないんですよ」
そんな事言われんでもわかっとるわボケ!!と心の中で叫んでいた俺にまた語りだした。
「確かにこの場所は誰もが好んで来る場所では決してないですよ。自由も娯楽も何も無い所ですからねー」
続けて話した。
「君がいつか大人になった時にこの場所で経験した事、体験した事は一生の宝物になると思いますよ」
まだまだ糞ガキな俺にはめんどくさい説教話だった。
院長から色々と意味の無い話をされた後は身体検査やこれからここで暮らしていく上で必要な衣類や書類等を詰めた折りたたみ式の箱を手に持ち、施設の奥に足を進めていた。
中に進んで行くとこの少年院の建物の全貌が理解出来てきた。
大きな鳥篭の中に大きく分けて4つの建物が入っていた。
ここでの暮らしは寮生活が基本で、1学寮から6学寮に分かれていて、考査寮、新生寮、希望寮と全部で9つの寮で編成されていた。
考査寮というのは新入生がここでの生活のルールを覚えたり行進を習ったり基礎的な事を教えてもらう場所である。入所したらここでまず2週間過ごす事になっている。
新生、希望寮というのは出院前後期といって、簡単な話がもうあと1ヶ月もしないうちにここから解放されていく上級生が生活する寮って事。
余談だがおもしろい話が、みんな出院前後期生にはなぜか憧れてしまうw
もちろん俺もその一人でwww
なぜなら、上級生・下級生の見分け方はバッチの色で見分けられるのだが、それだけではなく帽子の色も違うし
、普通の院生とは常に別行動で自由な雰囲気がプンプンしていたということ。
施設の外に課外奉仕といって鳥篭の中から娑婆に出て仕事をするという何とも羨ましい立場だったからである。
今思えば何で憧れたのだろうかと悩むw
ある意味俺は少年院の敷地に足を踏み入れた時点で娑婆とは違う世界に入り込んだということでしょう。
これから出院していくまで俺の全ての世界がここに出来てしまったのだ。
見渡す限り高くそびえ立つ鉄の柵に囲まれ、施設の裏には猿投山(さなげやま)が背中を覆い隠すように存在していた。
これから俺はタバコも吸えない、女ともやれない、単車にも乗れない、友達にも会えない、
孤独感・虚無感・失望感・疲労感が一気に押し寄せてきた。
もう戻れねぇんだなぁー
そればかりが頭をよぎっていた。
暑さも無くなり秋の色が木々様々が模様替えを始めていた10月26日の出来事だった。
続く。
・・注意・・
院生に関しては実名は出せませんのでイニシャル等で省略します。
初めてこういう形のものを書くのでおかしな所や文章が間違っている
かもしれませんがご了承ください。もしくはご指摘があれば添削します
ので宜しくお願いします。