妄想劇場 -20ページ目

妄想劇場

現実逃避の日々

ユウナたちはジョゼ街道を進んだ。

街道にはまだ悲しみの淵で苦しんでる人たちが大勢いた。

ティーダも笑顔を一生懸命作りながら歩いた。

ティーダ  「あのさ、ザナルカンドまでどれくらい?」

ワッカ  「まだまだ、だな。」

ルールー  「幻光河を下って、グアド族のグアドサラム。その後は、雷平原を越えてマカラーニャの寺院・・・。」

ティーダ  「うひゃ~~・・・。」

ティーダはがっくりと肩を落とす。

ユウナ  「その前に、ジョゼの寺院でお祈りでーすニコニコ

ユウナが嬉しそうに言った。

ティーダ  「一気にバビュッとザナルカンドへ!・・・それじゃダメなの?」

ユウナ  「なるべくたくさんの寺院を巡って祈り子様にご挨拶しなくちゃ。」

ワッカ  「それが召喚士の修行だ。

      究極召喚に耐えられるように心と体を鍛えるのさ。」

ティーダ  「大変だな、ユウナ。」

ユウナ  「みんなと一緒だからだいじょーぶニコニコ

ユウナは笑って答えた。

そして、寺院へ向かった。

アーロン  「おい、新入り。」

突然、ティーダを呼び止めた。

ティーダ  「オレっスか?」

アーロン  「他に誰が?」

ティーダ  「なーんスか、先輩?」

アーロン  「ジェクトと『シン』の関係、ユウナにはふせておけ。」

ティーダ  「は?」

アーロン  「あの性格だ。知ればおまえとジェクトへの遠慮が生まれる。

        そんなものは邪魔だ。」

ティーダ  「まぁ、・・・・そうだな。

        でもさぁ、話しても誰も信じないぞ、普通さぁ。」

アーロン  「ユウナは信じるさ。」

ティーダ  「あ・・・・、そうかも。

        ・・・・・あのさ、オレにも話さなくて良かったんじゃない?

        オレの気持ち、どうなるわけ?」

アーロン  「いざという時に泣き出して役立たずでは困るからな。」

ティーダ  「な、泣かないっつうの!」

アーロン  「泣き虫と聞いてたがな。」

アーロンは鼻で笑って寺院へ向かった。

ティーダ  「子供の頃は・・・・・・そうだったんだ。

        今でも・・・・・そうかな。」

ティーダ  「あ!オレは信じたわけじゃないからな!」

ティーダは叫びながらアーロンを追いかけた。

ジョゼに入ると大きな地響きがした。

そして、ルチル、エルマ、クラスコがいた。

ルチル  「ユウナ様、みなさん、ご無事でなによりです。」

ユウナ  「あなた方もよくご無事で・・・・・。

       エボンのたまものですね。」

ユウナは祈った。

ルチル  「我々は命拾いしましたが、戦力としては全滅同然です。」

エルマ  「生き残ったチョコボはこの子だけなんです。」

チョコボは小さく鳴いた。

クラスコ   「これじゃあ、チョコボ騎兵隊なんて名乗れないっスよ・・・・。」

ルチル  「教えに背いて参戦したあげくにこのありさまです。

       死んでいった兵たちに合わせる顔がありません。

       作戦に参加する前に、冷静になるべきでした・・・・しょぼん

ルチルたちも心に大きな傷を負ったようだ。

そしてティーダたちはルチルたちを励まし寺院へ向かった。

寺院の近くにルッツもいた。

ルッツ  「よう。ガッタのヤツな、・・・・死んじまったよ。

      まあ、運がなかったな。運も実力のうちってことさ。

      ・・・・ちくしょう!

      新米のくせに無茶しやがるからこうなるんだ!

      なんでアイツ、最前線まで来やがったんだ!

      なんで司令部でおとなしくしてなかったんだ!

      ちくしょう!ちくしょう!」

ルッツは壁を殴り続けた。

ワッカ  「やめろルッツ!」

ルッツ  「うるせえっ!おまえにオレの悔しさがわかるか!」

ルッツはワッカに掴みかかった。

ワッカ  「わからねえわけないだろうが。」

ルッツ  「・・・・・・・すまん。」

ルッツはワッカを掴んでいた手を離した。

ワッカ  「ともかくよ、おまえ、もうビサイドに帰れ。しばらく静かに休んでろよ、な?」

ルッツ  「・・・・休む?」

ワッカ  「おう、んで早く元気になれ。ケガもしてるんだろ?」

ルッツ  「そう・・・・・・・するかなしょぼん

ワッカ  「おう。頼むぜ。

      落ち込んでるヤツのこと、殴れねえからな。」

ルッツ  「・・・なるほど。」

ワッカはルッツの肩をたたいた。

ティーダ  「あれ、ジョゼの寺院?」

見ると、大きな石の塊だった。

その真ん中に入り口があった。

今、その寺院が大きな地響きを起こしていた。

そして・・・、石の塊がばらばらになり、宙に浮いて寺院が見えた。

寺院から発される電気によるものらしい。

ティーダ  「すげえ・・・・えっ

ルールー  「あの雷キノコ岩はね、召喚士が祈り子様と対面した時だけ開くの。」

ワッカ  「誰か他の召喚士が来てるってことだな。」

ユウナ  「どんな人かな。」

ティーダ  「ドナだったりして。」

ユウナ  「負けたくないなあ。」

ユウナは顔に力を入れた。

ティーダ  「うっす!行くっす!」



寺院に入ると、奥から召喚士が出てきた。

ドナではなかった。

男の召喚士だ。

ガードにがたいのいい男と小さい子供がいた。

召喚士  「失礼だが、お名前を聞かせてもらえないか?」

ユウナ  「ビサイドから参りました、ユウナと申します。」

召喚士  「やはりそうか・・・・。ブラスカ様のご息女だね。お父上の面影がある。」

ユウナ  「父のお知り合いですか?」

召喚士  「いや、直接お会いしたことはないんだ。

       ああ、失礼。僕はイサール。君と同じ召喚士だ。」

小さいガード  「パッセです。よろしくお願いします。」

がたいのいいガード  「オレはマローダ。見りゃわかるだろうが、アニキのガードだ。」

三人は兄弟で旅をしていた。

イサール  「子供の頃から、いつもブラスカ様を見上げていたよ。『いつかブラスカ様のような大召喚士になりたい』とね。

        きっと、お父上から素晴らしい能力を受け継いだことだろう。

        君なら必ず『シン』を倒せるはずだ。」

ユウナ  「いえ・・・・そんな・・・・・。わたし、まだ召喚士になったばかりですし。」

イサール  「もちろん、僕も負けるつもりはない。

        どちらが先に『シン』を倒せるか、競争といったところかな。」

ユウナ  「わたしだって、負けませんから。」

ユウナは笑顔で答えた。

マローダ  「アニキ!」

マローダは寺院の出口からイサールを呼んだ。

イサール  「では、ユウナ君。僕はこれで。

        お互いにがんばろう。」

ユウナ  「はいっ!」

そして、2人はすれ違い、ユウナは寺院の奥を目指した。

ティーダは一番最後を歩いた。

イサール  「あ、君!」

ティーダ  「なんスか?」

イサール  「君、ユウナ君のガードだろう?

        マローダが妙な話を聞きつけてね。君たちも知っておいたほうがいい。」

マローダ  「討伐隊の連中から聞いたんだけどよ。ここんとこ、旅の途中で行方不明になる召喚士がやたら多いっつーんだわむっ

イサール  「魔物にやられた可能性もあるが、それにしては数が多すぎるようだ。」

マローダ  「くわしーコトはわかんねーけど、とにかく、おめーらも気ィつけろや。

        召喚士が消えちまったら、ガード的にシャレになんねーだろ?」

パッセ  「なになに~?なんのお話~?」

パッセが飛び跳ねながら聞いてきた。

マローダ  「ガードの仕事をしっかりやれっつう話だ。」

パッセ  「ボク、ちゃんとやってるよ~!

      ね、兄ちゃん!」

そう言ってパッセはイサールを見た。

イサールは笑顔で頷いた。

イサール  「くれぐれも気をつけて。」

ティーダ  「うっす!」

イサールとマローダは出口に向かった。

ティーダをじいっと眺めるパッセ。

イサール  「パッセ!」

パッセ  「なに兄ちゃん?」

イサール  「出発するよ。」

パッセ  「うん、わかった!

      じゃ~ね~!」

パッセはイサールの元へ駆けていった。




ティーダもみんなの後を追って奥の部屋へ入った。

ワッカ  「おっし、ガード全員集合だな。」

ユウナ  「よろしくお願いします。」

ワッカ  「んじゃ、行くか。」

そこには試練の間があり、ティーダたちはそれをかいくぐり、さらに奥へ進んだ。

祈り子の部屋の前まで来ると、ドナとバルテロがいた。

ドナ  「あら、またあなたたち?

     相変わらず、頭数だけは多いわね。」

バルテロはドナから離れ、アーロンの前に立った。

ドナ  「どうしたの、バルテロ?そのオジサンに何か用?」

バルテロ  「あんた、・・・・アーロンだな。」

アーロン  「だったらどうする。」

バルテロ  「握手、してくれないか。

        アーロン、いや、アーロンさん!

        俺、あんたに憧れてガードになったんだ!」

アーロンは鼻で笑い、右手を出した。

バルテロはズボンで手を拭き、両手でその手を掴んだ。

バルテロ  「ありがとうございますっ!か、感激ですっ!!」

半泣きのバルテロを見ながらワッカがドナにささやく。

ワッカ  「大召喚士ブラスカ様を守ったガードをつかまえて、『オジサン』とはな。」

ルールー  「物知らずにもほどがあるわねにひひ

ティーダ  「うわ~・・・・。」

ドナ  「バルテロ、もういいでしょ!戻ってきなさい!」

ティーダ  「・・・・・・・苦労してんな~汗


そんな話をしているうちに、ユウナが祈り子の部屋から出てきた。

今回もふらふらしながら出てきて、そんなユウナをキマリが支えた。

ドナ  「持つべきものは偉大な父親ね。

     ガードの数はむやみに多いし、アーロン様まで味方につけて。それに、シーモア様にも気に入られているみたいじゃない?

     『ブラスカ様の娘』って肩書きがあると、違うわねシラー

ユウナ  「父は関係ありません。わたしは一人の召喚士として旅をしているだけです。」

ドナ  「あら、結構なことね。

     でも、偉そうなことを言う前に、まず、自分の足でシャンと立ったら?

     ガードに頼ってばかりだと、いざって時に痛い目見るわよ。」

ドナはプリプリと祈り子の部屋へ入っていった。




明くる朝、ティーダが外に出ると、みんなもう集まっていた。

ワッカ「ユウナが来たら出発だ。」

どうやら、まだ準備ができていないらしい。

ティーダは迎えに行こうと寺院の中に入った。

そこに、御聖像に祈っているルッツがいた。

ルッツ  「これでおまえともお別れだな。」

ティーダ  「え?」

ルッツ  「ビサイド島に逃げ帰るのさ。いつまでも寺院の世話になるわけにもいかない。

      他の討伐隊も撤収しちまったしな。

      おまえらも、もう出発か?元気でな。またどこかで会おう。」

ルッツは笑えてない笑顔を向けていた。

ティーダは頷いた。


ユウナが泊まっている部屋に入ると、ユウナはまだ寝ていた。

僧  「夜明けまでずっと働きづめだったんですよ。ケガ人の手当てや、異界送りや・・・・。」

ティーダ  「そっか・・・・。それじゃあ、もう少し、眠らせてやってください。」

ユウナ  「う・・・。」

ティーダたちの声でユウナが目を覚ました。

ティーダ  「ああ・・・・。

        おはよ。」

ユウナ  「あれ・・・・・朝?」

ティーダ  「だいじょーぶだよ。」

ユウナ  「でも、朝なんでしょ!?

       ごめーん!!

       すぐ仕度してくるからちょっとだけ待ってて!」

そう言ってユウナは慌てて準備しだした。

ティーダ  「そんなにあせんなくたっていいって。」

ユウナはバタバタと準備し、ティーダと外へ出た。

ワッカ  「よ~お、ねぼすけ!」

ユウナ  「ごめんなさ~い!」

ユウナはみんなに深く頭を下げ、アーロンのところへ走った。

ユウナ  「すみません。」

ルールー  「そんなに急がなくていいのに。ほら、寝ぐせにひひ

ユウナははっとして頭に手をやった。

ワッカ  「寝ぐせの召喚士なんてみんなガッカリだぞ。」

ユウナ  「起こしてくれればいいのに。」

ルールー  「声はかけたよ。でも口あけて眠ってたしね。」

ユウナ  「!!

       もう、今日はなんだかみんなイジワルっすねしょぼん

みんなは笑った。

アーロンも笑った。

ユウナ  「あ!アーロンさんまで!」

アーロン  「さて、召喚士様の寝ぐせがとれたら出発だ。」

さらにみんな笑った。


ティーダ  「あんなに笑ったのは久しぶりだった。

        でも、今はわかってるんだ。

        オレ以外は・・・・・、本気で笑ってなかったんだよな。

        ああして笑わないと、やってられなかったんだろ?」


寺院を後にすると、ルチルたちと会った。

ルチル  「お早い出発ですね。

       ユウナ様は昨晩、あれほど遅くまで働かれていたのに、大丈夫ですか。」

ユウナ  「お気遣いありがとうございます。でも、十分休みましたから。

       あなた方も出発ですか。」

ルチル  「はっ!幻光河を渡って北上します。

       新たなチョコボを探すつもりです。」

エルマ  「チョコボが見つかったら、騎兵隊を再建しまっす!」

ティーダ  「あん?ひとり、足りないんじゃない?」

たしかに、クラスコがいない。

クラスコ  「た~いちょ~う!待ってくださ~い!」

寺院のほうから全力で走ってくるクラスコ。

エルマ  「なにしてんの~!置いてくよ!!」

クラスコ  「だって、チョコボについてくなんて・・・ムリ・・・・ガーン

ぜいぜい言いながらクラスコは答えた。

ルチル  「では、ユウナ様。ご幸運を。

       エルマ、クラスコ、行くぞ!」

エルマ  「はいっ!」

クラスコ  「えっ!?ちょ、ちょっと休ませて・・・・えっ

エルマ  「甘ったれないっ!」

そう言うと、チョコボについて走り出した。

クラスコも必死に後を追いかけていった。




ティーダ  「次、どこだっけ?」

ルールー  「幻光河を渡るの。」

ティーダ  「うーっす!

        ゲンコ-ガへ向けて、しゅぱーつ!」

討伐隊員  「シーモア=グアド老師、ご来臨!」

シーモア  「スピラの各地より集いし勇敢なる討伐隊諸君。己の選んだ道を信じ、存分に戦うがよい。」

        君たちの勇戦、エボンの老師、このシーモアがしかと見届けよう。」

討伐隊  「はっ!」

討伐隊はシーモアに敬礼をした。


ワッカ  「どういうことだ、あれ。どうしてシーモア様は討伐隊を応援するんだ?

      アルベド族の機械を使う作戦だぞ?教えに反する作戦だぞ?」

ユウナ  「教えに背いてはいるけど、みんなの気持ちは本当だと思うな。

       シーモア様もそう思っていらっしゃったんだよ、きっと。」

ワッカ  「おい、ルー!」

ユウナに説得され、納得できずルールーにふるワッカ。

ルールー  「・・・・・・ただの視察じゃない?」

アーロン  「本人に聞くんだな。」

見ると、シーモアがこちらに向かって来ていた。

シーモアはユウナの方へ向かったが、途中アーロンに気づいた。

シーモア  「やはりアーロン様でしたか。お会いできて光栄です。

        是非、お話を聞かせてください。この10年のことなど・・・。」

アーロン  「俺はユウナのガードだ。そんな時間はない。」

シーモア  「それはそれは・・・・。

        ・・・・・アーロン殿がガードとは心強いですね。」

シーモアはユウナを見た。

ユウナ  「は、はい!」

シーモア  「どうか、そんなに緊張なさらずに。」

ユウナに笑いかけるシーモアの間にワッカが割ってはいる。

ワッカ  「あの~、シーモアサマは・・・なぜにここにいらっしゃられマスのでしょうか?」

シーモア  「普段の言葉でどうぞ。」

ワッカ  「ええと、エボンの教えに反する作戦、止めないとマズくないっすか?」

シーモア  「たしかに、・・・そうですね。

        しかし・・、討伐隊もアルベド族もスピラの平和を真剣に願っています。

        彼らの純粋な願いがひとつになって、ミヘン・セッションが実現するのです。

        エボンの教えに反するといえど、彼らの志は純粋です。

        エボンの老師としてではなく、等しくスピラに生きる者として、シーモア=グアド個人として、私は声援を惜しまないつもりです。」

ワッカ  「でも、アルベド族の機械はマズイっすよプンプン

シーモア  「見なかったことにしましょう。」

みんな驚いた。

ワッカ  「老師様がそんなこと言ったら、みんなに示しがつかないっすよ!」

シーモア  「では、聞かなかったことに。」

ワッカ  「マジっすか~!」


ティーダ  「初めて見た時から、シーモアは好きじゃなかった。

        でも、この時はシーモアの方がいいこと言ってると思ったんだ。」



先へ進もうとすると、キノコ岩街道の方から、さっきルチルたちと一緒にいたチョコボ騎兵隊のクラスコが出てきた。

クラスコ  「ユウナ様とガードさんたちですね?」

ユウナ  「はい。」

クラスコ  「作戦司令部へどうぞ。シーモア老師がユウナ様も是非とのことです。」

ユウナ  「・・・・はいあせる

クラスコ  「司令部はあっちなので、そっちの道からどうぞ。

        こっちの方は作戦準備でごたついてるんで、すんませんです。」

クラスコに案内されて、キノコ岩街道へ向かった。


入り口付近にルチルとシェリンダがいた。

ルチル  「連絡は受けております。この先の作戦司令部へお急ぎください。

       老師様、召喚士様がいらして、隊員たちの士気も上がっています。

       むろん、わたくしも同様です。ありがとうございます!

       作戦の展開次第では多くの犠牲者が出るでしょう。

       その時は、召喚士様、なにとぞ異界送りを。

       ここも戦場になる可能性がありますので、ご注意を!」

シェリンダ  「結局、わたしの説得では作戦を止められませんでした。

         でも、討伐隊の方々を見ていると、何もせずにいるのが辛くて・・・・。

         だから、今はわたしにできることで力になれたらって思ってます。

         わたしには戦う力はありませんけど、多少白魔法の心得があります。

         今はその力を役立てたいと思っているんです。」

二人ともやる気満々だった。

しばらくいくと、エルマが巡回していた。

エルマ  「あれ、召喚士様たち!どうやって入って来たんすか?

       ガードのみなさんが一緒なら、召喚士様は安心ですねえ。

       機械を使うからって、今更うるさく言うのはなしですよー。

       作戦で手柄を立てて、ルチル隊長に認めてもらうっす!」

エルマもこの作戦に期待していた。

街道の終点にはエレベーターがあって、どうやらここから司令部へ行くようだ。

ガッタ  「なんで先輩だけですか!オレも前線で戦わせてくださいよ!」

ふと見ると、ルッツとガッタがもめていた。

ルッツ  「上の決定だ。」

ガッタ  「オレだっていつまでも新米じゃないんです!前線に出してくれたら証明してみせますよ!」

ルッツ  「司令部を守るのも、大切な任務だろうが。」

ガッタ  「オレがビサイドからここまで来たのは、『シン』と戦うためです!」

ルッツ  「わかっているが、命令だ。

      さっさと配置につけ。」

ガッタ  「先輩!」

折れようとしないルッツに悔しさを噛みしめ、ガッタは司令部へ上がって行った。

ルッツ  「通行許可が出たのか。」

ティーダ  「ガッタ、かわいそうだったな。」

ワッカ  「戦わずにすんで、運がいいじゃねえか。

      だいたいなんで戦うんだ?主役はアルベド族の機械だろ。」

ルッツ  「はっきり言ってしまえば、オレたちの戦いは・・、そう、機械の準備が整うまでの時間稼ぎだな。」

ワッカ  「けっ!けーーーっ!」

ワッカはすねてそっぽを向いた。

ルッツ  「・・・・・・・・・ワッカ。

      もう話す機会がないかもしれないから・・・・、謝っておきたいことがある。」

ルールー  「ルッツ、だめ!!」

異様なルールーの反応がワッカは気になった。

ワッカ  「・・・・・・・・なんだよ。」

ルッツ  「おまえの弟を討伐隊に誘ったのは・・・・・・オレだ。」

ワッカはルールーを見る。

ルールーは目をそらした。

ルッツ  「すまん。」

ルッツは頭を下げた。

しばらくぼーーっとしていたワッカは急に目の色を変えてルッツに殴りかかった。

それを見たティーダはワッカを止めた。

ティーダ  「ワッカ!落ち着けワッカ!」

そして、なんとか落ち着きを取り戻したワッカ。

ワッカ  「・・・・・・・・・一緒にブリッツやっててよ。

      ・・・・・大会で1回でも勝ったら・・・・・、勝ったらルーに結婚申し込むって、・・・・・・・楽しそうに話してたのによ。

      ある日突然、討伐隊になる、だもんな。」

ワッカは涙まじりに話した。

ルッツ  「好きな女と一緒にいるよりも、・・・そいつの近くに『シン』を近づけないように戦う。

      そっちの方がかっこいいかもって、あいつは言ってた。」

ワッカ  「・・・・・・・・・・・・・ルー、知ってたのか。」

ワッカは俯くルールーを見た。

ルールー  「この旅に出る前にね、・・・・・・聞いた。」

ルッツ  「はは・・・・・・・。ルールーのパンチも効いた。」

ルッツはルールーに、そしてワッカに殴られた頬をなでた。

ルチル  「前線に配属された隊員は速やかに海岸に集合!」

ルッツ  「・・・・・悪い。時間だ。」

ルッツはエレベーターへ向かった。

ワッカ  「ルッツ!死ぬんじゃねえぞパンチ!

ルッツ  「殴り足りないか?」

ワッカ  「全然足りねえ!!」

ワッカは拳を上げた。

ルッツは笑って行こうとした。

そして、ルッツの前にユウナが立ちふさがった。

ユウナ  「ルッツさん、ダメ。行っちゃダメ。」

ルッツ  「・・・ありがと、ユウナちゃん。」

アーロン  「・・・通してやれ。

        おまえが召喚士の道を選んだ覚悟と、この男の覚悟は同じだ。邪魔はするな。」

ユウナは下を向いたまま、道を開けた。

ティーダ  「どうしてユウナが道を開けたのか・・・・・。

        それがわかったのは、ずっと・・・ずっと後のことだった。」

エレベーターで上ると一面に大砲が置かれていた。

ワッカ  「くそっ!・・・・・いっ!!」

ワッカは大砲を思いっきり蹴り、そのままうずくまった。

ティーダ  「ほんっと、キライなんだなあ・・・汗

ルールー  「・・・・・チャップはね、ワッカが贈った剣を島に置いていったの。

        そして、アルベド族が作った機械の武器を手に入れた。」

ワッカ  「そんなことは関係ないだろ!

      ・・・・教えに反する機械がキライなだけだ!」

その先まで行くと、作戦準備が行われていた。

『シンのコケラ』をおとり用の檻に入れた。

ワッカ  「ちぇっ・・・・、失敗確実だっつーのによむっ

ユウナ  「やめようよ、もう。

       無謀な作戦かもしれない。教えに背いてるかもしれない。

       だけど、討伐隊もアルベドの人たちも・・・・・・・すごく、真剣だよ。

       みんな、『シン』を倒したいって心から願ってる。

       その気持ちはわたしたちと全然変わらない。・・・・・・・そう思わない?」

ワッカ  「へっ、わーったよ。

      ・・・・・・・・でもな、オレは機械を認めない。教えに反することは認めない!」

気まずい雰囲気が流れた。

ルチル  「召喚士様、こちらでしたか。

       司令部はあちらです。キノック老師もいらっしゃいました。」

ユウナ  「キノック様もですか?」

ルチル  「はい。ユウナ様もお急ぎください。」

司令部の入り口にふてぶてしくガッタが立っていた。

ガッタ  「まもなく、戦いが始まります。いろんな準備を忘れないでください。」

ワッカ  「おいおい、なんかなげやりだな~。」

ガッタ  「あったりまえだろ!オレは『シン』と戦いたくてここまで来たんだ!

      それだってのに、ああっ、くそ!」

アーロン  「認められたいのなら・・・。」

ガッタ  「え?」

アーロン  「まず、与えられた任務を黙ってこなしてみろ。」

ガッタは悔しさで肩を落とした。

ガッタ  「黙って働いても、誰も認めてなんかくれないんだ・・・・しょぼん

中へ入ると、キノック老師が声をかけた。

キノック  「おお・・・・。

       シーモアから聞いたが、本当に会えるとは思わなんだ。」

そう言って、アーロンを抱きしめた。

キノック  「久しいな、アーロン!10年ぶりか?

       はっはっはっはっはっ・・・・。」

ティーダが不思議そうにしていると、例のごとくルールーが耳打ちした。

ルールー  「エボン四老師のひとり、ウェン=キノック老師よ。

        エボンの僧兵の指揮と、討伐隊の監督が担当ね。」

すると、ガッタが向こうから走ってきた。

ガッタ  「作戦準備、すべて完了との報告がありました。」

キノック  「わかった。下がれ。」

ガッタ  「はっ!」

ガッタは元の場所に戻った。

キノック  「・・・・・・・・・なあ、アーロン、この10年、何をしていた?」

アーロン  「作戦が始まる。そんな話はいいだろう。」

キノック  「どうせ失敗する作戦だ。少しでも長く、夢を見させてやるさ。」

キノックの顔から笑みが消えた。

ティーダ  「ひでえ・・・。」

シーモア  「キノック老師。」

シーモアの声にキノックはまたにやけた笑いを見せた。

キノック  「ああ、始めてくれ。」

アーロン  「・・・・・・・・・・・あいつが老師とはな・・・。」

ぼそっとアーロンが言った。

キノック  「聞こえたぞ、アーロン。

       この10年、いろいろあった。おまえはどこで何をしていた?」

アーロン  「友との約束を果たしていた。・・・・・まだ、終わっていない。」

キノック  「ひとつ教えてくれ。

       おまえは、ザナルカンドを見たのか?」

アーロン  「ふっ・・・・・得意げ

アーロンは答えなかった。

ユウナ  「なんだか、・・・・・居心地悪いねあせる

司令部の隅で、ユウナがティーダに囁いた。

ティーダはこっそりと頷いた。

討伐隊員  「そろそろよろしいでしょうか・・・・。

        外で待機しているアルベド族に作戦開始命令を伝えなければなりません。

        ここも安全とは言えません。魔物が来るかもしれません。

        戦いの準備が整いましたら、私に言ってください。」

キノックは高台に立った。

討伐隊員  「キノック老師、お願いします。」

ユウナ  「『シン』は来るのかな。」

ユウナたちは司令部の隅の方で見ていた。

討伐隊員  「『シンのコケラ』を取り戻しに必ずやってきます。

        念には念を入れて、コケラに悲鳴をあげさせるのです。」

アーロン  「そんなことをしなくても、『シン』は来る・・・。」

ティーダ  「『シン』はオレのオヤジだ。

        アーロンが言ってたことを思い出した。」

そして・・・・、ついにミヘン・セッションが始まった。

が、いきなり想定外のことが!

シンのコケラ:ギイが檻から抜け出た。

ティーダたちは応戦することになった。

シンのコケラ:ギイが倒れると、水面に黒い影が浮かび上がった。

シンだ。

ルチル  「行くぞ!

       突撃!」

一斉に大砲が打ち込まれた。

兵士たちも海岸へ向かって走りだした。

大砲により、シンのうろこがはがれ、シンのコケラとなり、海岸の討伐隊に向かっていった。

シンは何か力をためていた。

アーロン  「来るぞ!!」

アーロンの声でティーダたちは逃げた。

シンから大きな光の玉が打ち出された。

強い光は海岸に向けてすごいスピードで飛んだ。

それは、あっという間に海岸にいる討伐隊やアルベド族を消し去った。

ティーダたちもその衝撃でばらばらになった。

すべて、一瞬の出来事だった。

ユウナが気がつくと、シーモアがさっきのシンのコケラ:ギイと戦っていた。

シーモア  「下がっていなさい、ユウナ殿。」

それでもユウナは応戦した。

途中でアーロンも加わった。

シンのコケラ:ギイは今度こそ消滅した。

ユウナ  「みんなは!?」

ユウナは高台から見下ろした。

ちょうど、アルベドの機械兵器とシンがぶつかり合っているところだった。

衝撃波が熱風となって、ユウナの元にやってきた。

しかし結局、機械は壊れ、爆発し、シンは無傷で帰っていった。

ティーダ  「うっ・・・・・。」

ティーダは海岸に投げ出されていた。

ふと見ると、ガッタが岩陰に寄りかかっていた。

ティーダ  「ガッタ、何寝てんだよ。ガッタ・・・・。」

ティーダが触れようとした時、ガッタの体はずり落ちた。

動かない・・・。

・・・・・・・・・。

その様子を見て、いたたまれなくなり、ティーダは海に向かって叫んだ。

ティーダ  「おまえ、なんなんだよ!!」

そして、シンを追いかけ海へ入った。

ユウナ  「みなさん、下がって!召喚します!」

ユウナは帰っていくシンへ攻撃しようとした。

シーモア  「無駄です。

        今のあなたには無理です。」

ユウナ  「でも、何かしたい!」

ユウナは必死で召喚しようとした。

シーモア  「ユウナ殿!」

シーモアの声にユウナの手は止まった。

ユウナは泣きそうなまま下を向いた。

ティーダ  「なんで『シン』を追いかけたのか、自分でもよくわからない。

        頭ん中ぐちゃぐちゃで・・・・・、気がついたら、あいつを追いかけてた。

        『シン』への怒りとか、帰りたいとか・・・・、ザナルカンドのこととか・・・、オヤジのこととか・・・。」

ティーダは頭が混乱してて、あの時のことを思い出していた。

ジェクト  「なんだ?」

ティーダ  「ジェクトは練習嫌いだから、もうすぐ引退なんだってさ。」

ジェクト  「勝手に言わせとけ。オレは特別なんだ。」

ティーダ  「ジェクトは酒びたりだから、もうダメだってさ。」

ジェクト  「酒くらいいつでもやめられるさ。」

ティーダ  「じゃあ今やめなよ。」

ジェクト  「なんだあ?」

ティーダ  「やめられるんでしょ?」

ジェクト  「へっ。明日にでもな。」

ティーダ  「どうして今日じゃないのさ。」

ジェクト  「明日できることは明日やればいいんだよ!

       ・・・・・・・どうして泣くかねぇ・・・。なっさけねぇ。」

ティーダ  「オヤジを感じたような気がした。

        まさか・・・・、『シン』の毒気ってこれか?・・・・・・・・なんてさ。はは・・・・・・・。

        ・・・・・・・・・・・・・・・何人死んだんだろう。

        人が死ぬ度にユウナが踊る。あの、悲しい踊りを・・・・。

        ユウナはあと何回?

        『シン』がいる限り、ユウナは踊り続けるのか・・・・・・・。

        そんなことを考えていた・・・・・・・・と思う。」

浜辺でティーダは座っていた。

アーロン  「帰れなかったな。」

ティーダ  「あ?」

アーロン  「たくさんの物語が終わった。が・・・・・・・、おまえの物語は続くようだ。」

ティーダ  「あ・・・。」

ティーダ  「オレは・・・うちに帰れなかった。」

アーロンは悠々とやってきたキノックに話しかけた。

アーロン  「すばやい退散だな。満足か。」

キノック  「どういう意味だ。」

アーロン  「教えに反した兵士たちは死に、従順な僧兵だけが残った。」

キノック  「ふむ・・・。昔と同じというわけにはいかんなシラー

そう言って、キノックは去っていった。

ユウナは海を眺めていた。

そんなユウナにシーモアが近づいた。

シーモア  「顔色がすぐれませんね。

        しかし、ユウナ殿。このような時こそ気丈に振舞わねばなりません。

        普通の人間ならば、時には悲しみに浸るのもよいでしょう。

        けれども、あなたは召喚士。人々の希望そのものなのです。

        『シン』を倒すまで、弱音は許されません。よく、心得ておくことです。」

ユウナ  「はい・・・・・。努力しますしょぼん

ユウナは下を向いたままだ。

シーモア  「不安ですか?」

ユウナは答えない。

シーモア  「ならば、私が支えとなりましょう。ユウナレスカを支えたゼイオンのように。」

ユウナは驚いてシーモアを見た。

シーモア  「続きは、いずれお目にかかる時に。それでは。」

複雑なユウナを残し、シーモアは去っていった。

また、ティーダの元にアーロンがやってきた。

もう、ティーダの頭ははっきりとしていた。

アーロン  「『シン』はジェクトだ。」

ティーダ  「実はさ・・・・。そうかもしれないって、さっき思った。

        言っとくけど、信じたわけじゃない。」

アーロン  「『シン』はジェクト。奴はおまえに会いに来た。」

ティーダ  「オレに会うためにたくさん人を殺したってのか?」

アーロン  「それが、『シン』だ。

        自分の姿をおまえに見せに来たのだろう。

        なぜだかわかるか?」

ティーダ  「・・・・・全然。知るかっての。」

アーロン  「おまえに殺されるためだ。

        『シン』でいる限り、ジェクトは襲い、殺し続ける。

        それをおまえに止めて欲しがっている。」

ティーダ  「ふざけんじゃねーよ。

        なんであんたにそんなことがわかるんだよむっ

アーロン  「ふっ・・・。」

アーロンは歩き出した。

ティーダ  「話の途中だろ!逃げるなよ!」

アーロン  「おまえもな得意げ

抱えきれないほどの思いを背負って、ティーダたちはジョゼへ向かうことにした。

ユウナ  「ふたりとも、早く!」

最後尾を歩く、ティーダとキマリへ向けてユウナが呼んだ。

ティーダ  「張り切ってんな・・・・ガーン

キマリ  「・・・・・・・辛いときほど、努力して明るく振舞う。」

ティーダ  「え?」

キマリがしゃべったことにティーダは驚いた。

キマリ  「今も同じだ。無理をしている。」

ティーダ  「ほっといていいのかよ?」

キマリ  「ガードが心配すると、ユウナはもっと無理をする。おまえも気をつけろ。」

ティーダ  「心配するより、笑顔?」

キマリ  「キマリも練習している。」

ティーダ  「ちょっとやってみ?」

キマリは精一杯の笑顔を作った。

でも、やっぱり恐かった・・・・。

ルカの長い階段を上ると、延々と伸びる街道に出た。

弱いながらも魔物も出る。

そんな中、街道途中で老人と会った。

老人は街道脇にある像を見ていた。

老人  「ミヘン様の像ですわ。

     800年前、後に討伐隊に発展する組織を作った方ですな。

     ミヘン様の組織は数年でスピラ中に広がっていったのですが・・・、エボンの老師たちは寺院への反乱組織ではないかと疑いましてな。その申し開きのためにミヘン様が進んだのが、この街道なのですわ。

     ミヘン様は老師たちに堂々主張し、結果、組織は寺院公認となったのです。

     さらに寺院は組織に討伐隊の名を贈り、以来、討伐隊はエボンの名のもと・・・・、あとは、ご存知の通りですな。」

そして、その先にある、壊れた建物を指して言った。

老人  「あの残骸が何だかご存知ですな?」

ティーダ  「昔の都市?」

老人  「そう、古の都市の残骸。こいつらを見る度にあたしは『シン』の大いなる力を実感するのです。

     それに比べると、人間なんぞ虫ケラ同然ですわ。」

ユウナ  「けれども、『シン』を倒せるのも人間だけだと思います。」

老人  「よいお答えです。安心しましたぞ召喚士様ニコニコ

ユウナ  「え?」

老人  「失礼、申し遅れました。あたしはメイチェンというものです。

     スピラの歴史や、・・・・・そうですな、真実の姿を知ろうと旅をしております。

     研究のため、各地を旅しとるんですが、いや、痛ましいものですわ。

     どこでも人々の笑顔は偽りの笑顔。『シン』の名前を聞けばサッと消える。

     民の笑顔を本物に。召喚士様、頼みますぞ。」

ユウナ  「はい。」

しばらく行くと、チョコボに乗った人たちと会った。

チョコボは甲冑を身に着けていた。

チョコボに乗った人A  「召喚士様ご一行ですね?」

ユウナ  「はい、ユウナと申します。」

チョコボに乗った人A  「ジョゼ討伐隊、チョコボ騎兵隊所属のルチルです。」

チョコボに乗った人B  「同じくエルマです。街道の警備を任されております。」

ルチル  「このあたりにはチョコボを狙う大型の魔物が出没します。

       チョコボご利用の際はくれぐれもお気をつけください。」

ユウナ  「わかりました。ご忠告、感謝します。」

ルチル  「では、我々は任務がありますのでこれで。」

エルマ  「旅のご無事をお祈りいたします。」

そう言って、討伐隊は去っていった。

ティーダ  「・・・・大型の魔物かあ・・・。退治してやろっか?」

アーロン  「なぜだ?」

ティーダ  「みんな困ってんだろ?」

アーロン  「みんな困っている・・・・か。・・・・ふっDASH!

ティーダ  「なーんスか。」

アーロン  「ジェクトもよく同じことを言っていた。おかげで俺とブラスカはいつも面倒に巻き込まれてな得意げ

ティーダは何も言い返せなくなった。

途中、召喚士に会った。

召喚士  「ほう、召喚士様ご一行か。」

ユウナ  「あなたも召喚士ですね?」

召喚士  「ベルゲミーネだ。おまえは?」

ユウナ  「ユウナと申します。」

ベルゲミーネ  「ああ、噂は聞いている。大召喚士の娘だな。

           とはいえ、見たところ、まだ駆け出しのようだが。」

ユウナ  「ええ。まあ・・・・あせる

ベルゲミーネ  「なら、修行に協力してやろうか?

           おまえの召喚獣と私の召喚獣でひとつ腕比べといこう。

           一対一の勝負ということさ。

           なに、手加減はする。さ、どうする?」

ユウナ  「やってみます。」

ベルゲミーネ  「よろしい。遠慮はいらない。来なさい。

           召喚獣とどれだけ心を通じ合わせたか、見せてもらおう。」

ユウナは召喚獣ヴァルファーレを召喚した。

ベルゲビーネはイフリートを召喚した。

苦労しつつもなんとかユウナは勝利した。

ベルゲミーネ  「そこまで。もう十分だ。

           若いのに大したものだよ。ここまでとは思わなかった。

           おまえは筋がいい。たゆまず修行すれば、『シン』をやれるかもな。」

ユウナ  「はい!

       ・・・・でも、わたしより先にあなたが倒してしまいそうですが・・・・。」

ベルゲミーネ  「私には無理だ。

           いや、・・・・・無理だったと言うべきかな。」

ユウナ  「じゃあ・・・。」

ベルゲミーネ  「ではな、ユウナ。いずれまた会おう。」

話を避けるようにベルゲミーネは去っていった。

またしばらく行くと、ある親子に会った。

母親  「召喚士様!」

子供  「召喚士さまなの?」

ユウナ  「うん、ユウナっていうの。」

子供  「ヒクリ。」

ユウナ  「こんにちは、ヒクリ。」

ヒクリ  「ユウナさま、ナギセツつくってくれる?」

ユウナ  「はーい。楽しみに待っててねニコニコ

ヒクリ  「やった~!」

母親  「ユウナ様のナギ節、楽しみに待たせていただきますね。」

ユウナ  「はい。頑張ります。」

母親  「ガードの皆様もご苦労様です。」

そして、親子は手を振りながら去っていった。

ティーダ  「ナギセツって何?」

ルールー  「ナギ節は『シン』がいない期間のこと。

        召喚士が『シン』を倒してから次の『シン』が現れるまでの期間よ。」

ティーダは少し考えた。

ユウナ  「『シン』は生まれ変わるの。」

ティーダ  「そーかあ!

        ヘンだと思ったんだよな。

        ユウナのオヤジさんが10年前に『シン』を倒したんだろ?

        それなのに、まだ『シン』がいるのはどういうわけだ?ってさ。

        ・・・・・でもさ、『シン』が生まれ変わるのを知ってて・・・。」

ユウナ  「それでも『シン』を倒すのは無駄・・・なんて言わないでね。」

ティーダ  「たとえどんなに短くても、『シン』に怯えることなく安心して眠れる日々・・・。

        なにものにも代えられない、大切な時間を生み出すこと・・・。

        それを無駄だなんて言わないで・・・・・・。

        あの時のユウナの言葉、よく覚えてるよ。」

中腹まで来た頃、ルッツとガッタに会った。

ガッタ  「おう、試合見たぞ!オレ、感動しちゃったよ!」

ルッツ  「よかったな、ワッカ!」

ブリッツボールの話で盛り上がってると、チョコボに乗ってルチルとエルマが来た。

エルマ  「なにサボってるんですか?」

ガッタ  「それは・・・・・えーっと、召喚士様のご一行が・・・・えっ

ルチル  「余裕があるのは結構だが、作戦準備は一刻を争う。わかるな?」

ルッツ  「はっ!申し訳ありません!」

ルチル  「よろしく頼む。」

そしてルチルとエルマは去っていった。

ルッツ  「な、素直に頭下げといた方がうまくいくんだよにひひ

ガッタ  「・・・・なるほど。」

ルッツ  「ユウナちゃん。オレたちは寺院から破門されたけど、いつでもあんたのことは応援してる。

      それは変わらないからな。」

ユウナ  「ありがとう。ルッツさん、ガッタくん。

       でも、もしできることならこのままビサイドに帰って・・・・・。」

ガッタ  「急ぎましょう、先輩!」

ユウナの話を無視し、ルッツとガッタは先を急いだ。

討伐隊員  「『シン』を倒せば文句ないだろ!」

街道に響き渡るような大声でもめている人たちを見かけた。

女性  「しかし、エボンの教えでは・・・。」

討伐隊員  「しつこいなあ!」

女性  「しつこい・・・・ですか・・・・ガーン

そのまま討伐隊員は去っていった。

ユウナ  「どうかされましたか?」

女性  「召喚士様ですか?」

ユウナ  「はい。ユウナといいます。」

女性  「お会いできて光栄です。

     わたしはシェリンダと申します。巡回僧を務めております。」

ワッカ  「モメてたのは、例の討伐隊の作戦のことか?」

ティーダ  「ルッツとガッタが言ってた大作戦のことか?」

シェリンダ  「機械を使うと聞いて、なんとか止めたいと思いまして・・・。」

ティーダ  「へ?なんで?」

ルールー  「彼らは寺院が禁止している機械を使おうとしているらしいのよ。」

ワッカ  「まずいッスよねえ?」

ワッカはアーロンを見た。

アーロン  「使えるものは何でも使えばいい。『シン』を倒せるとは思わないが。」

シェリンダ  「倒せる倒せないの問題ではないのです。教えに反することが問題なのです。」

ワッカ  「そ、そうだよな。」

シェリンダ  「でも、討伐隊の皆さんは全く話を聞いてくれません。

         わたしが、僧として未熟だからですね・・・・。」

ユウナ  「頑張りましょうねっ!

       わたしも駆け出しの召喚士でまだまだ未熟者です。

       でも、自分のことを未熟だと言ってしまったら、・・・なんだか、言い訳みたいだと思いませんか?」

シェリンダ  「そうですね!わたし、もっとしっかりしないと!

         ありがとうございます、ユウナ様。

         わたし、なんだかうまくやれそうな気がしてきました。

         巡回僧のお努めを頑張って、いつか寺院付の僧になりますねニコニコ

シェリンダは笑顔で去っていった。

アーロン  「ここで休んでいく。」

突然アーロンが言い出した。

目の前には小さな旅の宿があった。

ワッカ  「でもこれ、アルベド人の店っすよ。」

アーロン  「問題でもあるのか?」

ワッカ  「アルベドは教えに従わないし、それにほら、ルカでは・・・・、あいつらユウナをさらったんですよプンプン

アーロン  「ガードがだらしないからだな。」

ワッカは言葉が詰まった。

ユウナ  「アーロンさんは、ワッカさんの体調を気にして・・・・あせる

ワッカ  「オレは大丈夫だ~!」

アーロン  「俺が疲れたんだ。」

こうして、ここで休むことになった。

しかし、ティーダは眠ることができなかった。

ティーダ  「眠れるかっつーの。」

ティーダは店を出た。

目に入ったのは眩しく輝く夕焼け空だった。

ティーダ  「すっげぇ・・・・。」

ティーダ  「キーリカで見たのとは全然違っていた。静かで、優しい夕陽だった。」

店の前の丘に、ユウナがいた。

ティーダ  「な~にしてるッスか?」

慌てるユウナ。

ゆっくりと振り返った。

ティーダはユウナの隣に座った。

そして、夕陽を見た。

ユウナ  「きれい・・・・・・。」

ティーダ  「だよな。」

ユウナ  「こんなふうに、穏やかな世界でね、毎日、にこにこして暮らせたらいいのにな・・・・。」

ティーダ  「ユウナが『シン』を倒せばそうなるんだろ?」

ユウナ  「ん。また新しい『シン』が生まれちゃうけどね。」

ティーダ  「そうなったらまた倒せばいいよ。」

ユウナ  「そう・・・・できたらいいなあ。」

ティーダ  「ユウナならできるって。他の召喚士に負けんなよ。

        ・・・・・でも、なんで『シン』は復活するんだ?」

ユウナ  「『シン』は人間に与えられた罰だから。

       罪が許されるまで、『シン』は消えないの。」

ティーダ  「どうしたら罪は許されるんだ?」

ユウナ  「うーん・・・・・。」

ティーダ  「だいたい、罪って何スか?

        ああ、機械使って楽したことか。でもそれって、そんなに悪いことか?」

ユウナ  「へんなの・・・。」

ティーダ  「ん?」

ユウナ  「小さな頃から当たり前だと思ってたのに・・・、悪いから悪いと思ってたけど、ほんとは・・・・・・わからない。

       知らないこと、たくさんあるんだ。」

ティーダ  「それじゃあ、オレと一緒だ。」

ティーダは立ち上がり、メイチェンのマネをした。

ティーダ  「召喚士がそんなことではいけませんぞ。

        似てた似てた?」

ユウナは吹き出した。

ユウナ  「ダメだよ、そんな失礼なこと。」

二人は笑った。

そして、ティーダは思いっきり伸びをした。

ティーダ  「あのさ、試合中は試合のことだけに集中しないとピリッと動けないんだ。」

ユウナ  「うん。」

ティーダ  「最前列右から5番目の女の子かわいい!とか、デートするならどこ行こう?とか考えてると負けちゃうんだよな。

        だから、ユウナも、先のことは後でゆっくり考えるッスよ。

        めんどくさいこと考えんのは、『シン』を倒した後でいいだろ。」

ユウナ  「・・・・そうだね。」

ティーダ  「・・・・・・・・・でもさ、あんなデッカイの、どうやって倒すんだ?」

ユウナ  「究極召喚。

       『シン』を倒しうる唯一の力、究極召喚。

       その力を身につけるのが、わたしたち召喚士の旅の目的なの。

       究極召喚の祈り子様は来たの果てで召喚士を待ってるんだ。

       最果ての地、ザナルカンド。」

ティーダ  「ザナルカンド!?」

過剰に反応したティーダにユウナは首を横に振った。

アーロン  「勘違いするな。1000年前に滅んだ都市の遺跡だ。」

向こうからアーロンが来る。

ティーダ  「本当に遺跡なのか?」

ティーダはユウナを見た。

ユウナ  「そう聞いてるけど・・・。」

アーロン  「信用できなければ、自分の目で確かめることだな。

        ユウナ、そろそろ中へ入れ。」

そう言って、アーロンは店に戻っていった。

ユウナ  「ザナルカンド、一緒に行けるかな。」

ティーダ  「うん。・・・・・行く。」

ユウナは笑って頷いた。

ティーダ  「ザナルカンドへ行って、自分の目で確かめるよ。」

ティーダは店へ向かった。

ユウナも後を追おうとして、足を止め、もう一度夕陽を見た。

ひとしきり眺めると、すぐティーダを追いかけた。

ティーダ  「それはオレのザナルカンドじゃないって確かめたかった。」

一夜明けてティーダは店の入り口で長髪のアルベド人とぶつかった。

長髪のアルベド人  「ヌヤハミ。」

ティーダ  「は?」

長髪のアルベド人  「ああ、これは申し訳ない。「すまない」と言うつもりが、ついアルベド語が出たようで。」

ティーダ  「あんた、アルベド人なのか。」

長髪のアルベド人  「私はリン。この店のオーナーです。マギレヤキセ。」

ティーダ  「え?」

リン  「はじめましてという意味ですな。」

ティーダ  「ああ。じゃ、オレも。マ・・ギレ・・ヤキセ。」

リン  「でも、あんまり得意になって話すと嫌われるかもしれませんね。」

ティーダ  「ああ、アルベド人は嫌われてるみたいだもんなあ。」

リン  「・・・バンメンハヨソベヌ。

    (・・・残念なことです。)」

リンは下を向き首を振った。

???  「きゃーーー!

       だ、誰か助けて!チョ、チョコボが~!」

外で叫び声がした。

アーロン  「おい、出番だ。魔物を倒すんだろう得意げ

リン  「おお、それはありがたい。」

ティーダ  「あ?」

ティーダはとりあえず外に出た。

ルールー  「チョコボ乗り場へ行くわよ。」

みんなが待っていた。

ティーダたちは乗り場へ向かった。

すると、現れたのはチョコボイーターという大きな魔物だった。

チョコボイーターは片手でチョコボを捕まえていた。

あまりの大きさに圧倒されながらも、チョコボイーターを倒す。

そして、街道が静かになった。

チョコボも元気に駆け回った。

チョコボ乗り場係り 「ありがとうございます。助かりました~ニコニコ

リン  「せっかくですから、みなさん、チョコボに乗りませんか?

     魔物退治のお礼も兼ねて、初回に限り無料にさせていただきましょう。」

リンの申し出を受けることにした。

それからの道はチョコボに乗って移動した。

歩くよりもはるかにスピードがでるため、あっという間に街道を越えた。

街道の出口にはドナとバルテロがいた。

ドナ  「何度も言わせないでちょうだい。私はね、召喚士なのよ!」

討伐隊員  「申し訳ありませんが!どうかご理解ください!」

ドナ  「召喚士の旅を邪魔するなんて、何考えているわけ?」

討伐隊員  「申し訳ありませんが!例外はありません!」

ドナ  「話にならないわね!」

ティーダたちはドナに話しかけた。

ドナ  「あら。あなたたち。

     見ての通り、召喚士でも通行止めよ。

     結局は召喚士を頼ることになるのに、全然わかってないんだからプンプン

     ま、いい機会だから、戻って休むことにするわ。

     行きましょ、バルテロ。」

そう言うと旅行公司まで戻っていった。

討伐隊員  「この先のキノコ岩街道で!討伐隊による作戦が展開されます!

        大変申し訳ありませんが!どなたもお通しできませーん!」

どうやら、先へは進めないらしい。

街道の出口にはルッツとガッタもいた。

ガッタ  「ビサイドのガッタとルッツです。」

ルッツ  「こいつが最後のオトリです。」

そう言って、荷馬車を指した。

討伐隊員  「遠方からご苦労だったな。さあ、通ってくれ。」

出て行く前にティーダたちに気づいた。

ガッタ  「今度、ブリッツ教えてくれよな!」

ルッツ  「ちょっと行って『シン』を倒してくるから待ってろよにひひ

二人は手を振って街道を出て行った。

討伐隊員  「あんたたち、召喚士様とガードだろ?迷惑かけてすまないな。」

ティーダ  「作戦って何?」

討伐隊員  「なんだ、知らなかったのか・・・。

        各地で捕獲された『シンのコケラ』が続々とここに運ばれてきている。

        『シンのコケラ』がいる場所に『シン』は現れるだろ?

        この習性を利用して『シン』をおびき出すんだ。

        本作戦ミヘン・セッションの最大の特長は、アルベド人との共闘にある。

        我々討伐隊が『シン』をおびき出し、アルベド人がトドメを刺す。

        『シン』を倒したいという気持ちは我々もアルベド人も変わらないからな。

        やつらは古の機械を復活させた。その機械は召喚獣に負けないくらいの力を生み出すと聞いている。

        やつらの機械は、もちろん、エボンの教えに反するものだが・・・、ああ・・・・、これ以上はやめておこう。

        教えに反することなど知らない方がいい。

        この作戦に参加している討伐隊は、みんな寺院から破門された。

        おれの家族なんて口もきいてくれなくなったぞ。

        この作戦で『シン』を倒す。

        そうしないと、おれたちの居場所はどこにもなくなってしまうんだショック!

なんともせつない話を聞いて、あきらめて引き返そうとした。

すると、向こうからシーモアが現れた。

ユウナは頭を下げた。

シーモア  「またお会いできましたね、ユウナ殿。」

ユウナ  「は、はいっ!」

シーモア  「どうしましたか?お困りのようですが?」

ユウナ  「実は・・・。」

ユウナは街道の出口を見た。

シーモア  「なるほど。」

シーモアは出口にいる討伐隊員のところへ向かった。

討伐隊員  「お待ちしておりました。作戦司令部へご案内いたします。」

シーモア  「その前に頼みがある。」

討伐隊員  「はっ!なんなりと!」

シーモア  「召喚士ユウナ殿とガードたちも通して欲しいのだが。」

討伐隊員  「お言葉ですがシーモア様・・・・。」

シーモア  「君に迷惑はかけない。責任はすべてわたしが取る。」

討伐隊員  「かしこまりました。通行を許可いたします。」

振り返るシーモア。

シーモア  「さあ、どうぞ。」

ユウナ  「あ・・・、ありがとうございます。」

ユウナは深く深くおじぎした。

ルールー  「ユウナ、行くわよ。」

ユウナ  「う、うん!」

ユウナは慌てて顔を上げた。

ティーダ  「えっらそうなヤツプンプン

ワッカ  「えらそうじゃなくて、ほんとにえらいんだよ。」

ティーダは不服だったが、これで先に進めるようになった。

アナウンサー  「全スピラのブリッツフリークが待ちかねた日がやってきました!

           シーズンの開幕を告げるビッグトーナメント!

           今年はエボン寺院の後援をうけての開催です。

           総老師ヨー=マイカ様の在位50周年記念トーナメント。

           さあ、出場チームを乗せた船が続々と入港しております!

           こちらは・・・・2番ポートですね。

           キーリカ島からの出場チームはキーリカ・ビースト!

           大召喚士オハランド様の流れをくむ伝統あるチームです。

           彼らの故郷、キーリカ島は『シン』に襲われたばかりですが・・・。」

解説者  「そう、故郷のファンを励ますためにも、彼ら、優勝を狙ってきますよ!」

アナウンサー  「それは期待できそうです!

           さあ、続いて出てきたのは・・・・・・・・・・・。

           おーーっと!あれは伝説のチーム、ビサイド・オーラカだっ!

           まさに、まさに最弱伝説!あまりにも勝てない奇跡のチーム!

           23年連続初戦敗退はマネのできないぶっちぎりの記録だ!

           毎度毎度のみごとな負けっぷりに、妙なファンがついてるらしいぞ!」

解説者  「ケガをしないように注意して、無事に島に帰って欲しいですね。」

アナウンサー  「そうですねえ。

           さーて、次行きましょう、次!続いての登場は・・・・・・・。

           来た来た来た来た~っ!

           我らの英雄、ルカ・ゴワーズ!

           パワー・スピード・テクニック!チームワークとファインプレー!

           すべてを兼ね備えた最強チームがルカの街に帰ってきましたあ!」

解説者  「文句なしに最も優勝に近い最高のチームですね。

       去年に引き続き、今大会も制覇して伝説に彩を加えることでしょう!」

アナウンサー  「そうです!その通りです!ご覧下さい、この盛り上がり!

           まるでルカの街全体がゴワーズの栄光を祝福しているようではありませんか!

           街は知っているのです。勝利をつかむ英雄の名を!

           そう、その名はルカ・ゴワーズっ!」

大盛り上がりする実況に憤慨するティーダ。

ワッカ  「まあ、毎年こんなもんよ。いちいち気にすんなって。」

そう言われても、ハラの虫がおさまらないティーダは拡声器を持って、積んであった木箱の上に立った。

ティーダ  「チョーシ乗んなよ、ゴワーズ!」

みんなが一斉にティーダを見る。

ティーダ  「おまえらがデカイツラしてられんのも、今のうちだからな!

        今年の優勝は、オレたち、ビサイド・オーラカがいただくっ!

        あははははは!」

みんな、きょとんとしていた。

ワッカ  「こーのスットコが!えらい恥かいたぜガーン

ダット  「でも、目立ったぞニコニコスフィアに映ったぞ。」

それなりに、オーラカのメンバーも嬉しそうだ。



その時、場の空気が変わった。

野次馬A  「マイカ総老師、ご到着だぞ!」

野次馬B  「そんな時間!?」

野次馬C  「3番ポートへ急げ!」

ついていけないティーダ。

ティーダ  「なーにが始まるっスか?」

ユウナ  「マイカ総老師がご到着なさるの。」

ティーダ  「マイカソウロウシ?」

ルールー  「マイカ総老師はエボンの民の頂点に立つお方。

        聖ベベル宮からご観戦にいらしたの。総老師の在位50周年記念大会だからね。」

ティーダ  「50年!?いいかげん引退した方がいいんじゃないの~?」

ワッカ  「おい!言葉を慎めよ。」

ユウナ  「わたしたちもお迎えに行こうよ。」

ティーダたちは3番ポートへ向かった。


3番ポートはすでに人でいっぱいだった。

ティーダ  「見えないっス。」

ワッカ  「シーーッ!」

楽隊が並んだ。

音楽が鳴った。

出てきたのは若い男だった。

野次馬A  「グアド族・・・・だよな。」

野次馬B  「誰かしら?」

野次馬C  「もしや、シーモア老師!?」

その男は振り返り船に向かって祈った。

そこにいた人たちも祈った。

出てきたのはもういくつなのかわからないくらいに年をとった老人だった。

マイカ総老師だ。

マイカ  「盛大なる歓迎、まこと感謝に堪えぬ。

      立たれよ、シーモア老師。皆も顔を上げよ。

      ここにいる青年は、先ごろ異界の住人となったジスカル=グアド老師の遺児である。

      すでに知る者も多いが、こたび、正式にエボンの老師となった。」

紹介を受け、シーモアはこちらを向いた。

シーモア  「恐れ多くも、老師の位を授かりましたシーモア=グアドと申します。

        生前、父ジスカルは、ヒトとグアド族の友好を何よりも望んでおりました。

        志半ばで倒れた父の理想を実現すべく、身命を賭して職務に励む所存にございます。」

マイカ  「うむ、うむ。」

みんな、シーモアに祈った。

ワッカ  「ほら、おまえも祈っとけ!」

ワッカはティーダを小突いた。

マイカは会場へ向かった。

シーモアはユウナを見る。

深く、じっと。

ユウナもそれに気づき驚いた。

そして、シーモアはマイカについて行った。

ティーダはそんなユウナを見ていた。

ワッカ  「気合入るよなあ・・・!

      うっし!試合前のミーティングだ。行くぞ!」



ティーダは控え室のドアを開けた。

オーラカのメンバーが一斉に注目して、脱力した。

オーラカ  「ふぅ~・・・ガーン

ティーダ  「ワッカは?」

ダット  「トーナメントの抽選っす!去年は、一回戦でゴワーズと当たっちゃって・・・・。

      その前も、その前の前も・・・・。

      ま、どこと当たっても負けてたんだけど汗

その時、ドアが開いた。

ダット  「ワッカさん!」

みんな、ワッカの周りに集まった。

ワッカはガッツポーズをしながら言った。

ワッカ  「初戦の相手はアルベド・サイクス!

      その後は・・・・、決勝だ!

      そう、オレたちはシード権をゲットした!2回勝てば、・・・・優勝だ!」

みんな、大喜びした。

ワッカ  「気ぃ抜くな~!初心に返って基本ルールの復習だ!」

そうして、退屈なワッカの講義が始まった。

ティーダはすぐに飽きてあくびをした。

するとユウナが入ってきた。

ユウナ  「聞いて!

       カフェでアーロンさんを見たって人がいたのニコニコ

ティーダ  「アーロン!?」

ユウナ  「そう、アーロンさん。会いに行こう!」

ティーダはしばらく考えて、ユウナについて行くことにした。

ワッカ  「おいおいおいおい!シアイカイシはスグダッ。早く、戻ってきてくれよ?」

ティーダ  「まかせとけよ。」

ワッカ  「うっす!」

ティーダ  「・・・・・・・・・ワッカワッカ?かたいガーン

ワッカ  「は?」

ティーダ  「いや、顔じゃなくて、顔コワイよ。カタイ叫び

ワッカは自分の顔を押さえた。

ティーダ  「リラックス・・・・。そうそう、そーいうカンジ。」

やり取りを見て、ルールーは呆れ、ユウナは笑った。


ティーダはアーロンを探しに行くことにした。

ユウナ  「これでジェクトさんの消息もわかるかもね。」

ティーダ  「え?なんで?」

ユウナ  「アーロンさんも父さんのガードだったの。だから、ジェクトさんのこと、何か知ってると思うんだ。

       早く行こう!」

ティーダ  「ユウナが言ってるアーロンと、ザナルカンドで出会ったアイツ。

        別人かもしれない・・・・なんて全然考えなかった。

        なんでか知らないけど、わかったんだ。同じヤツだ、って。」



アルベドA  「ショウカンシラヤガ。

        (召喚士様だ。)」

アルベドB  「ロフヨルヌウア。

        (報告するか。)」

ティーダ  「あ!アルベド・サイクスだろ?

        オレ、この前アルベドに世話んなったんだ。リュックって子にメシ食わせてもらってさ。」

ティーダは彼らが無反応であることに気づいた。

ティーダ  「・・・・・・・・あ、言葉、通じないのか・・・。

        うーん・・・・・・・・、ま、なんていうか・・・・、リュックに会ったら、よろしく伝えてくれっス。

        それから、1回戦、よろしくっス。」

そう言って反応しないアルベドから離れた。



外に出ると、ユウナがみんなに囲まれていた。

ユウナはティーダに気づいて手を振った。

ユウナ  「すみません、通してください。」

ユウナは人をかきわけてティーダのところへ行った。

ユウナ  「さ、行こう。」

ティーダ  「すごい人気だな~・・・。」

ユウナ  「えへへ・・音譜

ユウナは照れて笑った。

ユウナ  「はぐれたら大変だね。」

ティーダ  「ユウナ!!」

ユウナ  「うん?」

ピーーーッ!

ティーダは指笛を吹いた。

ユウナ  「わ!?な、なに!?」

ティーダ  「あははははは。」

びっくりしているユウナをティーダは笑った。

ティーダ  「ザナルカンドでは、ブリッツの時、こうやって応援するんだ。」

ピーーーッ!

ティーダ  「ユウナもやってみ?指をこーいう風に当てて・・・・。」

ティーダは親指と人差し指でわっかを作った。そして、口に当てた。

ユウナも同じように真似した。

ユウナ  「えっと・・・・こう?」

ティーダ  「そうじゃなくてこう。うん、そうそう。」

ティーダ  「で、思いっきり吹く。」

ユウナは力いっぱい吹いた。

ふーーーっ。

ふすーーーっ。

ユウナ  「ダメみたい。」

ティーダ  「練習っス。」

ユウナ  「そうっすね。」

ティーダ  「もし、はぐれたらそれで合図な。そしたらオレすぐに飛んでいくからさ。」

ユウナ  「うん。」

ティーダ  「ま、吹けるようになるまでは、はぐれないようにするってことで。」

ユウナ  「了解です。」

二人は並んで歩いた。

広場まで来ると、人であふれかえっていた。

ティーダ  「けっこう人多いなあ。」

ユウナ  「ルカはスピラで2番目に大きな街だよ。」

ティーダ  「どこもビサイドやキーリカみたいなもんかと思ってたよ。」

ユウナ  「街がね・・・、大きくならないの。人が集まってきて、街に活気が出てくると・・・しょぼん

ティーダ  「『シン』?」

ユウナ  「うん。」

ティーダ  「ここは安全なのか?」

ユウナ  「ここも同じ。でも、スタジアムがあるでしょ?だから、討伐隊の人たちが命がけで『シン』を追い払うの。」

ティーダ  「スタジアムのために?」

ユウナ  「ブリッツの試合が開けないと楽しみがなくなっちゃうからね。スピラには楽しいこと、あまりないから。」

ティーダ  「くわ~!選手は責任重大だなぁあせる

ユウナ  「そうだよ~べーっだ!

ユウナは嬉しそうに笑った。

ユウナ  「ね、ザナルカンドもこんな風なの?」

ティーダ  「うーん、ここよりずっとごちゃごちゃしてる。でかい建物がぎっしりでさ。」

ユウナ  「きっと、すごいんだろうなあ。わたし、目が回っちゃうかも。」

ティーダは笑った。

ユウナ  「アーロンさん、探そ!」


ティーダたちはカフェに入った。

しかし、すでにアーロンの姿はなかった。

ティーダ  「いないみたいだ。」

ユウナ  「うん、聞いてみよっか!」

そう言って、ユウナはカフェにいる人たちに尋ねて回った。

ふと、一緒にいたキマリが他のロンゾ族と話しているのが見えた。

他のロンゾと比べるとキマリは小さかった。

ティーダはその様子を見ていた。

ロンゾA  「なぜだまるキマリ。10年会わなかったエンケにどうして答えない。

       キマリはエンケを忘れたか?ビラン大兄を忘れたか?」

そう言ってエンケはキマリに迫った。

キマリは黙ったまま立っていた。

ビラン  「責めるな、エンケ。キマリは小さいロンゾだ。

      背が低い。顔が見えない。ビランとエンケがわからないにひひ

エンケ  「うはははは!

      ロンゾの同朋を忘れたか。恩知らず!

      ツノが生え変わる頃かわいがった!

      ビラン大兄はキマリを鍛えて強いロンゾに育てた。」

ビラン  「やりすぎたか得意げ

小馬鹿にして、見下した態度にティーダはムカついた。

ティーダ  「やっちゃえば?」

エンケ  「うはははは!」

ティーダの言葉にキマリは腹を決める。

エンケ  「ぐえ!?」

キマリのアッパーがエンケの顎にはいった。

それに対抗してキマリも殴られる。

客  「試合が始まるぞ!モメるなら外でやれ、外で!」

試合・・・・?

!!!

ティーダ  「まずいっス!?」

カフェのテレビでは開会式の様子が流れていた。

各チームのキャプテンがボールを持って並んでいる。

彼らに向けてマイカが開会宣言をした。

マイカ  「今日、このよき日にスピラ全土から選手たちが集った。鍛えぬいた力を正々堂々競い合うためである。

      いずれ劣らぬ強豪たちの誰が優勝しても不思議ではない。

      勝敗の行方は誰も知らぬ。それゆえ、われらはただ賞賛しよう。

      勝者の栄誉をたたえ、敗者の力闘をたたえようではないか。

      全選手諸君、健闘を祈る!」

そして、スタジアムに水が注ぎ込まれた。

1試合目のオーラカとアルベド・サイクスはスタジアムの中に入った。

全員、位置につき、ブリッツオフ!

とうとう試合が始まった。

その様子をただカフェで見ていたティーダ。

キマリはまだケンカしている。

ふと周りを見ると、ユウナの姿がどこにもなかった。

ティーダ  「キマリ!ユウナがいない!」

ティーダの声にキマリが反応した。

その瞬間、ビランの重い拳がキマリを捕えた。

キマリはビランを睨み、怒りをこらえてティーダと店を出た。

店を出て辺りを探した。

心配したルールーが様子を見に来た。

ルールー  「あんたたち、何してたのよ!」

ティーダ  「あ?」

ルールー  「ユウナがさらわれたわ。アルベド・サイクスの仕業。

        無事に帰して欲しければ1回戦で負けろって。」

ティーダ  「きったねえ・・・・プンプン

ルールー  「犯人がただの選手なら手荒なマネはしないと思うけど・・・。

        万一ってこともあるわ。助けに行くわよ!」

ティーダ  「オレも行く!」

キマリはびっくりして心配そうにティーダを見た。

ティーダ  「大丈夫だって!23連敗中のチームにワザと負けろなんてさあ、そんなこと言うチームなんて大したことないってむかっ

ルールー  「ワッカたちもそう言ってたわ。試合はなんとかするから、ユウナを頼むって。

        4番ポートにアルベド族の船が入港している。乗り込むわよ。」

ティーダたちは4番ポートへ急いだ。

途中、テレビで試合の様子が流れているのを見た。

アナウンサー  「さあ、ビサイド・オーラカ、必死のディフェンスによって懸命に同点をまもっています。」

得点は2-2の同点。前半3分。

ボールはワッカに渡っていた。

アルベド・サイクスが思いっきりワッカにタックルする。

アナウンサー  「ああーーっと!これはまたヒドい!」

解説者  「しかしレフリーはファウルをとりません。もうワッカ選手、限界ぎりぎりでしょう。」

何度も何度も激しいタックルをくらい、ワッカは一瞬気を失った。

ティーダ  「おしっ!頑張ってんなグー

ルールー  「あまり長続きしないわ。ワッカはいつもそう。」

ティーダ  「キツいっスね~。」

ルールー  「行くわよ。」

ルールーは振り払うように先へ進んだ。

待ち構えていたのはアルベドポーターというロボットだった。

ティーダ  「うわ!?なんだこいつら!?」

ルールー  「アルベド族が作った古の機械よ。」

アルベドポーターを倒し、船へ向かった。

4番ポートに着くと、船が出港しようとしていた。

ルールー  「乗り込むわよ。」

3人は離れようとする船に飛び乗った。

中ではアルベドシューターが待っていた。

それをなんとか倒すと、船室からユウナが出てきた。

その後から、ユウナにやられたアルベド族が這うように出てきて倒れた。

ルールー  「痛めつけてやった?」

ユウナ  「ちょっとだけべーっだ!

ユウナは無傷で帰ってきた。

それを確認するとティーダは船の中をきょろきょろしながら歩いた。

ユウナ  「どうしたの?」

ティーダ  「オレ、スピラに来てすぐにアルベド族に助けてもらったんだ。

        船に乗せてもらって、メシも食わせてもらったし。

        そん時の船かなって思ったんだけど、・・・・・違うみたいだ。

        みんなやられちまったのかなぁ・・・。」

ユウナ  「何かあったの?」

ティーダ  「船の近くに『シン』が出たんだ。

        オレは助かったけど、船はどうなったかわからない。」

ユウナ  「あのさ、その船に、・・・シドって人いなかった?」

ティーダ  「わっかんないなあ・・・。言葉も通じなかったしさ。」

ユウナ  「そっか・・・。」

ティーダ  「その人、知り合い?」

ユウナ  「おじさんなの。会ったことはないけど。」

ティーダ  「ふーん。

        ・・・・・・・・あれ?ってことはユウナもアルベド族?」

ユウナ  「お母さんがね、そうなの。

       シドさんは、お母さんのお兄さん。お母さんが結婚する時に縁を切ったんだって。

       でも、困った時には相談しなさいってお母さんが・・・。」

ティーダ  「そりゃ心配だよなあ・・・。」

ルールー  「ユウナの生まれのことはワッカには言わないで。あの人、アルベド族ってだけで毛嫌いしてるから。」

ティーダ  「あっ!」

ティーダは思い出して慌てた。

ティーダ  「ワッカに知らせなくちゃ!」

ルールー  「ワッカには内緒にって言ったじゃない!」

ユウナ  「試合!!」

ルールー  「あ!!」

4人は急いで会場へ向かった。

試合はもうすぐ終わる。

2-2のまま続いているようだ。

ワッカが手招きする。

アナウンサー  「おおっと!残り時間30秒!オーラカ、捨て身の全員攻撃だ!

           レッティからのロングパーーーース!!

           通ったぞーーー!」

ワッカはボールをもってゴールへ向かう。

途中アルベド族が襲ってきたがうまくかわした。

アナウンサー  「おおっ!!

           シューーーートォォ!!」

ボールはキーパーをすり抜けゴールに入った。

アナウンサー  「ゴオオオォォォーーーーーールッ!!

           ビサイド・オーラカ、3-2で奇跡の勝利です!!」

ワッカはほっとしてそのまま気を失った。

ティーダ  「勝った~~!」

ユウナ  「やったあ!次は決勝!!」

ルールー  「勝てたからいいけど、かっこつかないわね。チャップなら最後までちゃんとしてたのにむっ

ティーダ  「あっれ~?そういうこと、言っていいわけ?」

ルールー  「・・・・・突然、何?」

ティーダ  「オレはチャップの代わりにはなれない。

        ワッカにそう言ってくれたのはルールーだろ。

        ワッカだって、チャップの代わりなんか・・・・。」

ルールー  「最後まで言ったら、怒るわよむかっ

ルールーの本気の顔を見て、ティーダは固まった。

控え室に行くと、ワッカは長いすの上で寝ていた。

ダット  「ワッカさん、大丈夫ですか?」

レッティ  「もうすぐ決勝が始まるってのに、このケガじゃ・・・・・。」

ジャッシュ  「相手はゴワーズだし・・・。」

みんなの顔は不安で満ち満ちていた。

その時、控え室のドアが開いた。

ティーダ  「待たせたな。」

そして、ユウナたちも後から入った。

ダット  「ユウナさん!」

レッティ  「ケガないっすか!?」

ユウナ  「心配かけちゃって・・・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

ユウナは何度も頭を下げた。

ワッカ  「なんだってアルベドなんかに連れて行かれるんだよ。」

ティーダ  「もう、その話はいいだろ。」

ワッカ  「もうアルベドとは口きくなよ。めんどうに巻き込まれっからな。」

ユウナ  「・・・・・・・・・うん。」

ユウナはみんなに激励の言葉を残し、応援席へ向かった。

そして、ミーティングが始まった。

ワッカ  「もうすぐ、決勝戦スタートだ。ウォーミングアップしてる時間はねえ。いけるか?」

ティーダ  「余裕っス!」

ワッカ  「おっし!」

ワッカはケガした体をなんとか立たせた。

ワッカ  「今のうちに言っとくことがある。

      決勝戦が終わったら、オレは・・・・引退する。

      この大会が最後だって前から決めてたからな。結果は関係ねえ、勝っても負けても引退だ。

      でもよ・・・。せっかくだから、優勝してえよな~?」

オーラカ  「おう!」

ボッツ  「オ、オレ、ベンチッスか?」

ワッカ  「ベンチはオレだ。決勝戦はコイツに任せる。

      ここまできたら絶対に優勝だ!ルカ・ゴワーズをブッ飛ばす!」

ティーダ  「いくぞ!!」

オーラカ  「おう!!」

ティーダ  「ビサイド・オーラカの合言葉は!?」

オーラカ  「優勝だっ!!」

ボッツ  「ワッカさんのために。」

オーラカ  「おう!」

ティーダたちが部屋を出ると、ルールーとワッカだけになった。

ルールー  「気絶してるとこ、見ちゃった。」

ルールーは優しく微笑んだ。

ワッカ  「チッ、かっこつけどころだったのにな・・・。」

照れて答えたワッカだったが、気が緩みルールーに倒れこんだ。

ルールーはワッカを支えた。

ルールー  「あんたは・・・あれでいいんだよね。」

アナウンサー  「さあっ!いよいよクライマックス!

           まもなく、もうまもなく決勝戦がスタートですっ!

           それにしても一体誰が!誰がこの組み合わせを予想したでしょうか?

           常勝ルカ・ゴワーズと決勝戦で対決するのは・・・、万年初戦敗退チーム、ビサイド・オーラカ!!」

解説者  「まさに、驚異の大番狂わせですね。」

そして、ティーダたちは入場。

ゴワーズのビクスンは、握手しようと手を出そうとしたティーダに殴りかかろうとした。

アナウンサー  「おおっと!早くも小競り合いだ!

           オーラカ完全になめられています!」

ゴワーズのメンバーはオーラカを見て見下して笑っていた。

怒りを抑え、オーラカは位置についた。

ブリッツオフ!

ティーダを含め、攻撃中心の試合をするオーラカ。

さすがに決勝、ゴワーズは簡単に倒せる相手ではなかった。

なんとかボールを奪い、ティーダのシュートが決まる。

アナウンサー  「さあ、客席からも自然にわきあがるオーラカコール!俄然盛り上がってまいりました!」

しかし、すぐに1点返される。

激しい攻防が続く。

前半を終えて1-1。

アナウンサー  「ここで前半終了です!」

解説者  「いやー、ゴワーズ強い!まったくもって強い!」

ハーフタイムとなり、オーラカはワッカを囲んだ。

ワッカ  「おまえら、とにかくゴワーズを止めろプンプン

オーラカ  「うっす!」

ティーダ  「オレは?」

ワッカ  「ボールを奪え!フリーになったらとにかくシュートだ!」

ダット  「ゴワーズを止めるっス!」

オーラカ  「お~!」

ティーダ  「シュートするっス!」

オーラカ  「お~!」

ワッカ  「うっし!行ってこい!!」

そして、後半。

アナウンサー  「しびれをきらしたサポーターたちのコールがますます大きくなってきました。

           オーラカの選手たちは戦意喪失ぎみです。このまま大会から消えていくのか~?」

客  「ワッカ!ワッカ!ワッカ!ワッカ!・・・・・」

アナウンサー  「スタジアムが割れんばかりのワッカコールです!」

その歓声を聞き、ティーダは笑った。

そして、そのままスタジアムを後にした。

アナウンサー  「ああっと!あの選手はどうしたのでしょう?

           試合を放棄したのでしょうか?スフィアプールを出ていきます!」

ティーダはワッカのところへ行った。

ワッカは照れくさそうにスタジアムへ向かった。

ティーダ  「そりゃ、ちょっとはさびしかったさ。でも・・・・・あれは、ワッカとビサイド・オーラカの大切な試合だったからな。」

ワッカがスタジアムに入る時もワッカコールは続いていた。

アナウンサー  「ん?どうしたんでしょう?場内がわいています!

           ああっと!?ワッカ選手です!!元気に復帰してきました!!

           チームメイトが温かく迎えます!」

オーラカメンバーの顔にやる気が戻った。

そして、やる気を取り戻したオーラカはゴワーズのゴールへ向けて攻撃。

ワッカのベノムシュートが決まった!

試合終了!!

大会はオーラカのみごとな勝利で幕を閉じた。

アナウンサー  「信じられない勝利です!

           ブリッツボールの歴史に新たな伝説が生まれた瞬間です!!」

場内は勝利をたたえる歓声でいっぱいだった。

ティーダはワッカの元へ向かった。

それに気づき、ワッカは笑顔で応えたグッド!

その時だった。

プール内にサハギンチーフが現れた。

ティーダとワッカは疲れた体に鞭打ち、戦った。

しかし、魔物はプール内にとどまらなかった。

観客席にも魔物があふれていた。

ルールー  「何が始まったの!?」

観客席で応援していたユウナたちも魔物相手に戦った。

ふと見ると、逃げ回る客の中にもう一人戦っている人がいた。

アーロンだ。

ティーダとワッカはアーロンの元へ向かった。

ティーダ  「アーロン!」

ワッカ  「アーロンさん!」

ティーダ  「・・・・・・・・やっぱ、知ってんのかガーン

ワッカ  「ああ。最高のガードだ。」

ティーダは少し落ち込んだがそんな暇はなかった。

次から次と現れる魔物。

倒しても倒してもきりがない。

ティーダ  「なんだよ、これ!?」

とうとう囲まれた。

やられる!?

その時、会場にシーモアが現れた。

そして、召喚獣アニマを召喚。

アニマは瞬く間に魔物を倒した。

場内は静かになった。

ルカの広場にて。

優勝トロフィーをもらったワッカをオーラカが囲んだ。

ダット  「ホントに出発しちゃうんっスか?」

レッティ  「ゆっくり休んだ方がいいっすよ。」

ワッカ  「ユウナの旅は先を急ぐ。休んでるわけにはいかねえんだよ。」

ダット  「でも・・・・・・・・。」

オーラカのメンバーは肩を落とす。

ワッカ  「こらあ!シャキッとしろ、おまえら!ブリッツのシーズンは始まったばっかだろうが。そのシケたツラはなんだ!」

ワッカは一喝し、トロフィーをダットに渡した。

ワッカ  「じゃあな、元気でやれよ。」

そう言って背を向けた。

ワッカ  「元気でな。」

オーラカ  「うっす・・・・・・。」

ワッカ  「声が小さい!」

オーラカ  「うっす!!」

ワッカは街外れで待つユウナたちのところへ行った。

ユウナ  「もういいの?」

ワッカ  「ああいうの、弱いからな、オレ。

      ・・・・・待たせたな、ユウナ。モヤモヤにケリつけてきた。これからはユウナのガード一筋だ。」

ユウナ  「じゃあ、ワッカさん。改めて・・・よろしくお願いします。」

ワッカ  「こちらこそ、なにとぞよろしくお願い致しますっと。」

ワッカとユウナはお互いに頭を下げた。

そしてワッカはルールーと話した。

ワッカ  「んで、あの魔物どもなんだったかわかったか?」

ルールー  「全然。魔物がどこから入り込んだのか不明。

        シーモア老師の活躍でマイカ総老師はご無事。情報はそれぐらいね。」

ユウナ  「シーモア老師の召喚獣、すごかったな・・・・。」

ティーダ  「わかってんのかよ!!全部あんたのせいなんだ!

       『シン』に飲み込まれたのも!スピラに放り出されたのも!ザナルカンドに帰れないのも!全部!すべて!みんな。

       なにもかもあんたのせいだ!」

船着場で、ティーダはアーロンにくってかかっていた。

アーロンは思いっきり笑った。

ティーダ  「・・・・・・・あんた何者なんだ?オヤジのこと知ってんだよな。」

アーロン  「ああ。」

ティーダ  「ユウナのオヤジさんとも知り合いなんだろ?」

アーロン  「そうだな得意げ

ティーダ  「どういうことだよ!おかしいだろ!」

アーロン  「なにもおかしいことはない。

        ジェクト、ブラスカ、そしてオレ。3人で『シン』を倒したのが10年前。

        のちにおれだけがザナルカンドに渡り、・・・おまえの成長を見守っていた。 

        いつの日かおまえをスピラに連れてゆくために。」

ティーダ  「どうしてオレなんだよむっ

アーロン  「ジェクトの頼みでな。」

ティーダ  「オヤジ生きてるのか?」

アーロン  「あの状態を生きていると言えるなら。」

ティーダ  「ああ?」

アーロン  「あいつはもう人の姿をしていない。だが・・・、あれの片隅には確実にジェクトの意識が残っている。

        あれに接触したとき、おまえもジェクトを感じたはずだ。」

ティーダ  「まさか・・・えっ

アーロン  「そうだ。『シン』はジェクトだ。」

それを聞いてティーダはどうすればいいのかわからなくなった。

ティーダ  「くっだらねえ!なんだよそれ!バカバカしい!」

ティーダは半泣きで叫んだ。

アーロン  「真実をみせてやる。怒るのも泣くのもそれからにしろ。俺について来い。」

ティーダ  「嫌だと言ったら?」

アーロン  「おまえの物語は終わらない。」

ティーダ  「それがどーしたってんだ!」

アーロン  「そうか・・・・。ならば仕方あるまい。好きにしろ、来るか来ないかは選ぶのはおまえだ。」

ティーダ  「・・・・・・・バカにしやがって!好きにしろとか言ってさあ!選ぶのはオレだとか言ってさあ!

        ・・・だけどオレにはどうしようもないんだっての!あんたに言われた通りにするしかないんだ!」

アーロン  「不満だろうな。それとも不安か?」

ティーダは俯いたまま答えなかった。

アーロン  「それでいい。」

ティーダ  「・・・・・・・・・・アーロン?・・・・ザナルカンドに帰れるのかなしょぼん

アーロン  「ジェクト次第だな。

        ・・・・・俺はユウナのガードになる。おまえもついて来い。」

そう言ってアーロンはユウナたちのところへ向かった。

ティーダも黙って後をついて行った。

ワッカ  「アイツ、ここに残るのかな?」

ルールー  「アーロンさんと知り合いなんでしょ?確かに、知り合いと会えたわね。」

ユウナ  「でも、ザナルカンドに帰れるのかな。」

ワッカ  「どっちにしても寂しくなるなしょぼん

ユウナ  「まだ街にいるよね。わたし、挨拶してこようかな。」

ユウナが街へ戻ろうとすると、ティーダたちがやってきた。

ユウナ  「あっ!」

ワッカ  「おお!」

ユウナ  「アーロンさんも?」

ユウナたちはアーロンに祈った。

アーロン  「ユウナ。」

ユウナ  「はいっ!」

アーロン  「今この時よりおまえのガードを務めたい。」

ユウナ  「えっ?」

ワッカ  「マジですか!?」

アーロン  「不都合か。」

ユウナ  「いいえ!ね、みんないいよね?」

ワッカ  「あったりまえっす。文句なんかあるわけないっす!」

ルールー  「でも・・・なぜですか?」

アーロン  「ブラスカとの約束だ。」

ユウナ  「父が・・・・・そんなことを・・・・・。ありがとうございます。よろしくお願いします!」

ユウナは頭を下げた。

アーロン  「それから、・・・・こいつを連れて行く。」

アーロンはティーダの腕を引っ張った。

ティーダ  「ども。・・・・よろしく。」

ティーダはバツが悪そうに挨拶した。

アーロン  「こっちはジェクトとの約束だ。」

ユウナ  「ジェクトさんはお元気なんですか?」

アーロン  「知らん。10年前に別れたきりだからな。」

ユウナ  「そう・・・・ですかしょぼん

アーロン  「そのうち会えるさ。」

ユウナ  「はいっ!楽しみにしてますニコニコ

アーロン  「・・・・これからのことを説明してくれ。次はどの寺院だ?」

ルールーとワッカはアーロンに説明した。

ユウナ  「ね、ちょっと来て。」

ユウナはティーダを呼び出した。

ユウナ  「見て見て!」

そして、おもむろに指笛を吹いた。

ティーダは驚いた。

ティーダ  「そんだけ吹ければ上出来だな。」

ティーダはわらいながら俯いた。

ユウナ  「元気ないね。」

ティーダ  「・・・・かもなあガーン

ユウナ  「叫ぶ?」

ティーダ  「そういうのとはちょっと違うかな。」

ユウナ  「・・・・・・あのさ、自分で言うのもヘンだけど、召喚士とガードっていうのはスピラの希望の光なんだよね。

       いろんな人がわたしたちに注目してる。

       だから・・・・・落ち込んでるところとか、元気ないところとか、・・・・見せたくないんだ。」

ティーダ  「うん、・・・・・・・わかる・・・気がする。」

沈黙が流れる。

ユウナ  「はい、じゃあ、笑顔の練習!」

ティーダ  「はあ?」

ユウナ  「ほら!」

ティーダは無理矢理笑顔を作ってみる。

ティーダ  「なんだかヘンだぞ、この練習!?」

ユウナ  「次!声出してみよう!」

ティーダ  「ええ!?」

ユウナ  「はーい、やってみてパー

ティーダは深呼吸をして、叫んだ。

ティーダ  「あははははは!」

大声を出したことで少しすっきりした。

ティーダは続けた。

ティーダ  「あははははは!」

みんなは心配そうに見ている。

ユウナ  「そこまでやらなくても・・・・ガーン

それでもティーダは止めなかった。

ティーダ  「あはははははは!」

それを見て、ユウナはティーダの隣に立つ。

二人は目を合わせて息を吸った。

ティーダ&ユウナ  「あはははははは!」

声を出した後、二人は笑った。

ユウナ  「・・・・おっかしー。」

ティーダ  「ユウナのせいだろ・・・。」

ユウナは笑うのを止め、真剣に答えた。

ユウナ  「・・・うん、・・・ありがと。

       ・・・・・・笑いながら・・・・・旅、したいんだ。」

ティーダ  「ああ。」

ユウナ  「もし、ダメそうな時は指笛吹いて。そしたら、私、・・・飛んででいく。」

頷くティーダ。

ティーダ  「じゃ、行こっか。」

振り返ると心配そうに固まっているワッカたちがいた。

ティーダ  「なに見てんだよ!」

ワッカ  「おまえたちヘンになったかと心配してたんじゃねえか!」

ユウナ  「大丈夫!

       それでは!召喚士ユウナ。これよりジョゼ寺院目指して出発です。

       ガードの皆さん、よろしくお願いします。」

ユウナはみんなに笑って頭を下げた。

ワッカ  「さーて、次はいよいよルカだぜ!

      着いたらすぐに試合が始まる。船の中でゆっくり休んでおけよ!」

ティーダたちは連絡船ウイノ号に乗った。

同じ船にドナたち、キーリカ・ビースト、ルカ・ゴワーズも一緒に乗っていた。

甲板に出ると、ユウナがゴワーズに囲まれていた。

ティーダ  「な~に話してんだ?」

ユウナより先にゴワーズの連中が応えた。

ゴワーズA  「馴れ馴れしい野郎だな。」

ゴワーズB  「ああ、こいつ、あれですよ。キーリカで会ったじゃないですか。」

ゴワーズA  「ああ?」

ゴワーズB  「ほら、ビサイド・オーラカのヤツで、優勝するとかほざいてた得意げ

ゴワーズA  「ああ、あのオメデタイ奴か。」

それを聞いて、ユウナはゴワーズを睨んだ。

ユウナ  「ひどい言い方プンプン

ゴワーズA  「そりゃ仕方ない。突然オーラカが強くなるはずないもんなあ。」

ティーダ  「オレが入ったら強くなるんだよ!」

ユウナ  「そう、強くなるんです!ザナルカンドのチームのエースだった人ですからね!」

ゴワーズA  「ハ!そりゃまたスゲエ場所からいらしたもんだ。」

ゴワーズB  「遺跡にもチームがあるとは知らなかったよなあ。」

ユウナ  「遺跡じゃなくて、ちゃんとした大きな都市があるんです!」

なんのためらいもなく話すユウナ。

怪訝な顔をするゴワーズ。

それを見てティーダは仕方なく言った。

ティーダ  「あのさ、オレ、『シン』の毒気に・・・・・・。」

ユウナは言葉をさえぎった。

ユウナ  「あるんだよ、本当に。」

ゴワーズA  「召喚士様ってのはわけがわからねえや。」  

ゴワーズはそう言うと船室へ帰って行った。

ユウナは黙ってうつむいた。

ティーダ  「どしたの?なんかムキになってなかった?」

ユウナ  「あの人たち、失礼だし、それに・・・・、キミのザナルカンドはきっとどこかにあると思う。」

ティーダ  「どうして?」

ユウナ  「ジェクトさんに聞いてから、ずっと憧れてたんだ。いつか、行きたいなあって思ってた。

       ね、帰れるといいねニコニコ

ティーダ  「うん。」


ティーダ  「オレんち来る?とか言いたかった。

        そう言えない理由を考えると、・・・・・・・・悲しくなった。」



2階に上がると、ルールーとワッカが話していた。

ルールー  「なんとか言いなさい。無責任だと思うでしょ。」

ワッカ  「大丈夫だって。ルカにあいつの知り合いいるって。」

ルールー  「いなかったら?」

ワッカ  「そんときゃ、どっかのチームに入るとか・・・。とにかく、ビサイドにいるよっか何倍もマシだろ?」

ルールー  「要するに、・・・・・後は勝手にってこと?」

ワッカ  「どーすれってんだよ。」

ルールー  「・・・・・・・・ユウナがガードにしたがってる。」

ワッカ  「ああ、・・・それそれ。面倒なコトになったよなあガーン

ルールー  「原因作ったのは誰?」

ワッカ  「オレだってのかよ!

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・オレ、だよなぁ・・・・・・。」

がっくりと肩を落とすワッカ。

ワッカ  「な、どうしてユウナはあいつをガードにしたがるんだ?」

ルールー  「ジェクト様の息子だからよ。」

ワッカ  「あ、なるほどねえ。

      でも、それホントなのか?ホントにジェクト様の息子なのか?」

ルールー  「真実はともかく、ユウナはそう信じてるわね。」

ワッカ  「なるほど。」

ルールー  「なるほどなるほどって、あんた、ちゃんと考えてるの?」

ワッカ  「考えてっけど・・・・・。

      結局、あいつが決めることだ。あいつとユウナが決めることだろ?」

ルールー  「まともなこと言うじゃない得意げ

ワッカ  「へへん!」

ルールー  「・・・・どうなるのが、一番いいのかしら・・・。」

ルールーは果てしない海を見た。

ルールー  「あんたから勧めてみたら?」

ワッカ  「何を?」

ルールー  「ユウナのガードになること。」

ワッカ  「なーんでオレが?」

ルールー  「ユウナからは言えないでしょ。」

ワッカ  「なんで?」

ルールー  「父親が嫌いで、父親の影を重ねられるのも嫌。

        そんなこと言ってる人に言えると思う?

        キミはジェクト様の息子だから、わたしのガードになって欲しいって。」

ワッカ  「気にしすぎじゃないかあ?」

ルールー  「はあ・・・。」

ルールーはため息でワッカを急かした。

ワッカ  「わかったよ。大会終わって落ち着いたら、オレから話してみる。」

ルールー  「無理強いしちゃダメよ。」

ワッカ  「わかってるって。決めるのはあいつだ。

      ・・・・・・・・・・・・・・・あいつ、父親が嫌いなのか?」

ルールー  「そうみたい。ユウナから聞いたわ。」

ワッカ  「オヤジが嫌いかあ。そりゃ、ゼイタクもんだよな。

      オレ、両親のことなんて覚えちゃいないもんなあ。好きも嫌いもないもんなあ・・・。」

ルールー  「私は・・・・・、5歳だったから、少しは覚えてる。」

ワッカ  「くそっ!」

ワッカは甲板を殴った。

ワッカ  「『シン』がなんでもかんでも取っていきやがる・・・・。」

ワッカは下を向いたまま黙った。

ティーダもその場を見つからないように離れた。




前方に行くと、ブリッツボールが転がっていた。

ティーダはジェクトとの思い出を思い出していた。


あれは、まだ小さい頃。

ティーダはブリッツボールの練習を始めたばかりで、まだうまくボールを蹴ることもできなかった。

ジェクトがそれを見て声をかけた。

ジェクト  「これはこれは、ジェクトさんちのおぼっちゃまではありませんか。

       いつもはタダじゃあ見せないんですけどねえ。

       そのシュートはこうやるんですよ!」

そう言って、ジェクトは高く飛んで回転しながらシュートした。

ジェクト  「おまえにゃできねえよ。でもな、心配するこたあねえ。

       できないのはおまえだけじゃない。オレ以外にはできやしねえ。

       オレは特別だからな。」


あの時の悔しさがこみ上げてくる。

そして、あのシュートをやってみるティーダ。

意外にもシュートすることができた。

ティーダ自身も驚いたが、すぐに自信に変わった。
ティーダ  「なーにが特別だってんだ!」

気がつくと、オーラカのメンバーに囲まれていた。

ティーダ  「!!」

ワッカ  「すげぇ!なんて技だ、それ?」

ティーダ  「名前なんかないし、練習すれば誰にでもできる。」

ワッカ  「もう一回やってみてくんねぇか?」

そう言われて、もう一度シュートするティーダ。

ワッカ  「やっぱり、タダモノじゃないよな、おまえは。」

それをユウナも見ていた。

ユウナ  「ジェクトシュートだよね、さっきのニコニコ

ティーダ  「あ・・・・。

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで知ってるっスか?」

ユウナ  「子供の頃、ジェクトさんが見せてくれたんだ。

       正式な名前は、『ジェクト様シュート3号』・・・だよね?」

ユウナは思い出して笑った。

ティーダ  「バカな名前だよな。それにさ、本当は1号も2号もないんだぞ。

        3号って言っとけば、1号も2号もあるって客は期待する。

        そういう客は今夜こそ見れるかもって毎晩スタジアムに来るって言ってた。

        でさ、ホントにその通りになって・・・・・・・。

        すっごく、ハラがたったなむっ

少し、すねたようなティーダにユウナは微笑んだ。

ティーダ  「オヤジ、生きてるのか?」

ユウナ  「わからない。

       でもね、ジェクトさんは父さんのガードだったから・・・・。」

ティーダ  「こっちでも、有名人?」

ユウナ  「うん。だから、もし亡くなってたとしたら、その話は伝わってくると思うんだ。」

ティーダ  「ふーんシラー

ユウナ  「ね、会えたら、・・・・・・・・・どうする?」

ティーダ  「10年前に死んだと思ってたヤツだぞ?今更なぁ・・・。

        そうだな・・・・・・。

        なにより先にブン殴る。

        アイツのせいで、オレも母さんも苦労したし・・、アイツが有名なせいでオレはいつでも・・・・・・・。

        ユウナなら、わかるだろ?」

ユウナ  「ん?」

ティーダ  「ユウナのオヤジさんも有名なんだろ?この世界の人はみんな知ってるよな。」

ユウナ  「うん。」

ティーダ  「イヤじゃないか?」

ユウナ  「時々、父さんの名前を重たく感じることはあるけど・・・・。」

ティーダ  「だろ?」

ユウナ  「それよりも、スピラ中から慕われる父さんを誇りに思う、かな。」

ティーダ  「・・・・・・・・ま、ユウナのオヤジさんと、オレのオヤジは違うってことで。」

ユウナ  「ジェクトさん、かわいそう。」

ティーダ  「オレは~?」

ユウナ  「もっと、かわいそうだね。」

ユウナは仕方なく微笑んだ。

ティーダ  「いっ!?」

ワッカたちの方からボールが飛んできてぶつかった。

ワッカ  「さっきの、もう一回やってくれ~!」

ティーダ  「ああ。」

ティーダはユウナに笑顔を向け、ワッカたちのところへ走っていった。


ティーダ  「オヤジがルカに来るとは思えなかった。あいつ、他人の活躍を見るのがキライだったからさ。

        だけど必ず、何かが起こる、そんな胸騒ぎがして、眠れなかった。

        大会で活躍するっス!なんて言ってたのは、不安を紛らわすカラ元気ってヤツでさ。」