アナウンサー 「全スピラのブリッツフリークが待ちかねた日がやってきました!
シーズンの開幕を告げるビッグトーナメント!
今年はエボン寺院の後援をうけての開催です。
総老師ヨー=マイカ様の在位50周年記念トーナメント。
さあ、出場チームを乗せた船が続々と入港しております!
こちらは・・・・2番ポートですね。
キーリカ島からの出場チームはキーリカ・ビースト!
大召喚士オハランド様の流れをくむ伝統あるチームです。
彼らの故郷、キーリカ島は『シン』に襲われたばかりですが・・・。」
解説者 「そう、故郷のファンを励ますためにも、彼ら、優勝を狙ってきますよ!」
アナウンサー 「それは期待できそうです!
さあ、続いて出てきたのは・・・・・・・・・・・。
おーーっと!あれは伝説のチーム、ビサイド・オーラカだっ!
まさに、まさに最弱伝説!あまりにも勝てない奇跡のチーム!
23年連続初戦敗退はマネのできないぶっちぎりの記録だ!
毎度毎度のみごとな負けっぷりに、妙なファンがついてるらしいぞ!」
解説者 「ケガをしないように注意して、無事に島に帰って欲しいですね。」
アナウンサー 「そうですねえ。
さーて、次行きましょう、次!続いての登場は・・・・・・・。
来た来た来た来た~っ!
我らの英雄、ルカ・ゴワーズ!
パワー・スピード・テクニック!チームワークとファインプレー!
すべてを兼ね備えた最強チームがルカの街に帰ってきましたあ!」
解説者 「文句なしに最も優勝に近い最高のチームですね。
去年に引き続き、今大会も制覇して伝説に彩を加えることでしょう!」
アナウンサー 「そうです!その通りです!ご覧下さい、この盛り上がり!
まるでルカの街全体がゴワーズの栄光を祝福しているようではありませんか!
街は知っているのです。勝利をつかむ英雄の名を!
そう、その名はルカ・ゴワーズっ!」
大盛り上がりする実況に憤慨するティーダ。
ワッカ 「まあ、毎年こんなもんよ。いちいち気にすんなって。」
そう言われても、ハラの虫がおさまらないティーダは拡声器を持って、積んであった木箱の上に立った。
ティーダ 「チョーシ乗んなよ、ゴワーズ!」
みんなが一斉にティーダを見る。
ティーダ 「おまえらがデカイツラしてられんのも、今のうちだからな!
今年の優勝は、オレたち、ビサイド・オーラカがいただくっ!
あははははは!」
みんな、きょとんとしていた。
ワッカ 「こーのスットコが!えらい恥かいたぜ
」
ダット 「でも、目立ったぞ
スフィアに映ったぞ。」
それなりに、オーラカのメンバーも嬉しそうだ。
その時、場の空気が変わった。
野次馬A 「マイカ総老師、ご到着だぞ!」
野次馬B 「そんな時間!?」
野次馬C 「3番ポートへ急げ!」
ついていけないティーダ。
ティーダ 「なーにが始まるっスか?」
ユウナ 「マイカ総老師がご到着なさるの。」
ティーダ 「マイカソウロウシ?」
ルールー 「マイカ総老師はエボンの民の頂点に立つお方。
聖ベベル宮からご観戦にいらしたの。総老師の在位50周年記念大会だからね。」
ティーダ 「50年!?いいかげん引退した方がいいんじゃないの~?」
ワッカ 「おい!言葉を慎めよ。」
ユウナ 「わたしたちもお迎えに行こうよ。」
ティーダたちは3番ポートへ向かった。
3番ポートはすでに人でいっぱいだった。
ティーダ 「見えないっス。」
ワッカ 「シーーッ!」
楽隊が並んだ。
音楽が鳴った。
出てきたのは若い男だった。
野次馬A 「グアド族・・・・だよな。」
野次馬B 「誰かしら?」
野次馬C 「もしや、シーモア老師!?」
その男は振り返り船に向かって祈った。
そこにいた人たちも祈った。
出てきたのはもういくつなのかわからないくらいに年をとった老人だった。
マイカ総老師だ。
マイカ 「盛大なる歓迎、まこと感謝に堪えぬ。
立たれよ、シーモア老師。皆も顔を上げよ。
ここにいる青年は、先ごろ異界の住人となったジスカル=グアド老師の遺児である。
すでに知る者も多いが、こたび、正式にエボンの老師となった。」
紹介を受け、シーモアはこちらを向いた。
シーモア 「恐れ多くも、老師の位を授かりましたシーモア=グアドと申します。
生前、父ジスカルは、ヒトとグアド族の友好を何よりも望んでおりました。
志半ばで倒れた父の理想を実現すべく、身命を賭して職務に励む所存にございます。」
マイカ 「うむ、うむ。」
みんな、シーモアに祈った。
ワッカ 「ほら、おまえも祈っとけ!」
ワッカはティーダを小突いた。
マイカは会場へ向かった。
シーモアはユウナを見る。
深く、じっと。
ユウナもそれに気づき驚いた。
そして、シーモアはマイカについて行った。
ティーダはそんなユウナを見ていた。
ワッカ 「気合入るよなあ・・・!
うっし!試合前のミーティングだ。行くぞ!」
ティーダは控え室のドアを開けた。
オーラカのメンバーが一斉に注目して、脱力した。
オーラカ 「ふぅ~・・・
」
ティーダ 「ワッカは?」
ダット 「トーナメントの抽選っす!去年は、一回戦でゴワーズと当たっちゃって・・・・。
その前も、その前の前も・・・・。
ま、どこと当たっても負けてたんだけど
」
その時、ドアが開いた。
ダット 「ワッカさん!」
みんな、ワッカの周りに集まった。
ワッカはガッツポーズをしながら言った。
ワッカ 「初戦の相手はアルベド・サイクス!
その後は・・・・、決勝だ!
そう、オレたちはシード権をゲットした!2回勝てば、・・・・優勝だ!」
みんな、大喜びした。
ワッカ 「気ぃ抜くな~!初心に返って基本ルールの復習だ!」
そうして、退屈なワッカの講義が始まった。
ティーダはすぐに飽きてあくびをした。
するとユウナが入ってきた。
ユウナ 「聞いて!
カフェでアーロンさんを見たって人がいたの
」
ティーダ 「アーロン!?」
ユウナ 「そう、アーロンさん。会いに行こう!」
ティーダはしばらく考えて、ユウナについて行くことにした。
ワッカ 「おいおいおいおい!シアイカイシはスグダッ。早く、戻ってきてくれよ?」
ティーダ 「まかせとけよ。」
ワッカ 「うっす!」
ティーダ 「・・・・・・・・・ワッカワッカ?かたい
」
ワッカ 「は?」
ティーダ 「いや、顔じゃなくて、顔コワイよ。カタイ
」
ワッカは自分の顔を押さえた。
ティーダ 「リラックス・・・・。そうそう、そーいうカンジ。」
やり取りを見て、ルールーは呆れ、ユウナは笑った。
ティーダはアーロンを探しに行くことにした。
ユウナ 「これでジェクトさんの消息もわかるかもね。」
ティーダ 「え?なんで?」
ユウナ 「アーロンさんも父さんのガードだったの。だから、ジェクトさんのこと、何か知ってると思うんだ。
早く行こう!」
ティーダ 「ユウナが言ってるアーロンと、ザナルカンドで出会ったアイツ。
別人かもしれない・・・・なんて全然考えなかった。
なんでか知らないけど、わかったんだ。同じヤツだ、って。」
アルベドA 「ショウカンシラヤガ。
(召喚士様だ。)」
アルベドB 「ロフヨルヌウア。
(報告するか。)」
ティーダ 「あ!アルベド・サイクスだろ?
オレ、この前アルベドに世話んなったんだ。リュックって子にメシ食わせてもらってさ。」
ティーダは彼らが無反応であることに気づいた。
ティーダ 「・・・・・・・・あ、言葉、通じないのか・・・。
うーん・・・・・・・・、ま、なんていうか・・・・、リュックに会ったら、よろしく伝えてくれっス。
それから、1回戦、よろしくっス。」
そう言って反応しないアルベドから離れた。
外に出ると、ユウナがみんなに囲まれていた。
ユウナはティーダに気づいて手を振った。
ユウナ 「すみません、通してください。」
ユウナは人をかきわけてティーダのところへ行った。
ユウナ 「さ、行こう。」
ティーダ 「すごい人気だな~・・・。」
ユウナ 「えへへ・・
」
ユウナは照れて笑った。
ユウナ 「はぐれたら大変だね。」
ティーダ 「ユウナ!!」
ユウナ 「うん?」
ピーーーッ!
ティーダは指笛を吹いた。
ユウナ 「わ!?な、なに!?」
ティーダ 「あははははは。」
びっくりしているユウナをティーダは笑った。
ティーダ 「ザナルカンドでは、ブリッツの時、こうやって応援するんだ。」
ピーーーッ!
ティーダ 「ユウナもやってみ?指をこーいう風に当てて・・・・。」
ティーダは親指と人差し指でわっかを作った。そして、口に当てた。
ユウナも同じように真似した。
ユウナ 「えっと・・・・こう?」
ティーダ 「そうじゃなくてこう。うん、そうそう。」
ティーダ 「で、思いっきり吹く。」
ユウナは力いっぱい吹いた。
ふーーーっ。
ふすーーーっ。
ユウナ 「ダメみたい。」
ティーダ 「練習っス。」
ユウナ 「そうっすね。」
ティーダ 「もし、はぐれたらそれで合図な。そしたらオレすぐに飛んでいくからさ。」
ユウナ 「うん。」
ティーダ 「ま、吹けるようになるまでは、はぐれないようにするってことで。」
ユウナ 「了解です。」
二人は並んで歩いた。
広場まで来ると、人であふれかえっていた。
ティーダ 「けっこう人多いなあ。」
ユウナ 「ルカはスピラで2番目に大きな街だよ。」
ティーダ 「どこもビサイドやキーリカみたいなもんかと思ってたよ。」
ユウナ 「街がね・・・、大きくならないの。人が集まってきて、街に活気が出てくると・・・
」
ティーダ 「『シン』?」
ユウナ 「うん。」
ティーダ 「ここは安全なのか?」
ユウナ 「ここも同じ。でも、スタジアムがあるでしょ?だから、討伐隊の人たちが命がけで『シン』を追い払うの。」
ティーダ 「スタジアムのために?」
ユウナ 「ブリッツの試合が開けないと楽しみがなくなっちゃうからね。スピラには楽しいこと、あまりないから。」
ティーダ 「くわ~!選手は責任重大だなぁ
」
ユウナ 「そうだよ~
」
ユウナは嬉しそうに笑った。
ユウナ 「ね、ザナルカンドもこんな風なの?」
ティーダ 「うーん、ここよりずっとごちゃごちゃしてる。でかい建物がぎっしりでさ。」
ユウナ 「きっと、すごいんだろうなあ。わたし、目が回っちゃうかも。」
ティーダは笑った。
ユウナ 「アーロンさん、探そ!」
ティーダたちはカフェに入った。
しかし、すでにアーロンの姿はなかった。
ティーダ 「いないみたいだ。」
ユウナ 「うん、聞いてみよっか!」
そう言って、ユウナはカフェにいる人たちに尋ねて回った。
ふと、一緒にいたキマリが他のロンゾ族と話しているのが見えた。
他のロンゾと比べるとキマリは小さかった。
ティーダはその様子を見ていた。
ロンゾA 「なぜだまるキマリ。10年会わなかったエンケにどうして答えない。
キマリはエンケを忘れたか?ビラン大兄を忘れたか?」
そう言ってエンケはキマリに迫った。
キマリは黙ったまま立っていた。
ビラン 「責めるな、エンケ。キマリは小さいロンゾだ。
背が低い。顔が見えない。ビランとエンケがわからない
」
エンケ 「うはははは!
ロンゾの同朋を忘れたか。恩知らず!
ツノが生え変わる頃かわいがった!
ビラン大兄はキマリを鍛えて強いロンゾに育てた。」
ビラン 「やりすぎたか
」
小馬鹿にして、見下した態度にティーダはムカついた。
ティーダ 「やっちゃえば?」
エンケ 「うはははは!」
ティーダの言葉にキマリは腹を決める。
エンケ 「ぐえ!?」
キマリのアッパーがエンケの顎にはいった。
それに対抗してキマリも殴られる。
客 「試合が始まるぞ!モメるなら外でやれ、外で!」
試合・・・・?
!!!
ティーダ 「まずいっス!?」
カフェのテレビでは開会式の様子が流れていた。
各チームのキャプテンがボールを持って並んでいる。
彼らに向けてマイカが開会宣言をした。
マイカ 「今日、このよき日にスピラ全土から選手たちが集った。鍛えぬいた力を正々堂々競い合うためである。
いずれ劣らぬ強豪たちの誰が優勝しても不思議ではない。
勝敗の行方は誰も知らぬ。それゆえ、われらはただ賞賛しよう。
勝者の栄誉をたたえ、敗者の力闘をたたえようではないか。
全選手諸君、健闘を祈る!」
そして、スタジアムに水が注ぎ込まれた。
1試合目のオーラカとアルベド・サイクスはスタジアムの中に入った。
全員、位置につき、ブリッツオフ!
とうとう試合が始まった。
その様子をただカフェで見ていたティーダ。
キマリはまだケンカしている。
ふと周りを見ると、ユウナの姿がどこにもなかった。
ティーダ 「キマリ!ユウナがいない!」
ティーダの声にキマリが反応した。
その瞬間、ビランの重い拳がキマリを捕えた。
キマリはビランを睨み、怒りをこらえてティーダと店を出た。
店を出て辺りを探した。
心配したルールーが様子を見に来た。
ルールー 「あんたたち、何してたのよ!」
ティーダ 「あ?」
ルールー 「ユウナがさらわれたわ。アルベド・サイクスの仕業。
無事に帰して欲しければ1回戦で負けろって。」
ティーダ 「きったねえ・・・・
」
ルールー 「犯人がただの選手なら手荒なマネはしないと思うけど・・・。
万一ってこともあるわ。助けに行くわよ!」
ティーダ 「オレも行く!」
キマリはびっくりして心配そうにティーダを見た。
ティーダ 「大丈夫だって!23連敗中のチームにワザと負けろなんてさあ、そんなこと言うチームなんて大したことないって
」
ルールー 「ワッカたちもそう言ってたわ。試合はなんとかするから、ユウナを頼むって。
4番ポートにアルベド族の船が入港している。乗り込むわよ。」
ティーダたちは4番ポートへ急いだ。
途中、テレビで試合の様子が流れているのを見た。
アナウンサー 「さあ、ビサイド・オーラカ、必死のディフェンスによって懸命に同点をまもっています。」
得点は2-2の同点。前半3分。
ボールはワッカに渡っていた。
アルベド・サイクスが思いっきりワッカにタックルする。
アナウンサー 「ああーーっと!これはまたヒドい!」
解説者 「しかしレフリーはファウルをとりません。もうワッカ選手、限界ぎりぎりでしょう。」
何度も何度も激しいタックルをくらい、ワッカは一瞬気を失った。
ティーダ 「おしっ!頑張ってんな
」
ルールー 「あまり長続きしないわ。ワッカはいつもそう。」
ティーダ 「キツいっスね~。」
ルールー 「行くわよ。」
ルールーは振り払うように先へ進んだ。
待ち構えていたのはアルベドポーターというロボットだった。
ティーダ 「うわ!?なんだこいつら!?」
ルールー 「アルベド族が作った古の機械よ。」
アルベドポーターを倒し、船へ向かった。
4番ポートに着くと、船が出港しようとしていた。
ルールー 「乗り込むわよ。」
3人は離れようとする船に飛び乗った。
中ではアルベドシューターが待っていた。
それをなんとか倒すと、船室からユウナが出てきた。
その後から、ユウナにやられたアルベド族が這うように出てきて倒れた。
ルールー 「痛めつけてやった?」
ユウナ 「ちょっとだけ
」
ユウナは無傷で帰ってきた。
それを確認するとティーダは船の中をきょろきょろしながら歩いた。
ユウナ 「どうしたの?」
ティーダ 「オレ、スピラに来てすぐにアルベド族に助けてもらったんだ。
船に乗せてもらって、メシも食わせてもらったし。
そん時の船かなって思ったんだけど、・・・・・違うみたいだ。
みんなやられちまったのかなぁ・・・。」
ユウナ 「何かあったの?」
ティーダ 「船の近くに『シン』が出たんだ。
オレは助かったけど、船はどうなったかわからない。」
ユウナ 「あのさ、その船に、・・・シドって人いなかった?」
ティーダ 「わっかんないなあ・・・。言葉も通じなかったしさ。」
ユウナ 「そっか・・・。」
ティーダ 「その人、知り合い?」
ユウナ 「おじさんなの。会ったことはないけど。」
ティーダ 「ふーん。
・・・・・・・・あれ?ってことはユウナもアルベド族?」
ユウナ 「お母さんがね、そうなの。
シドさんは、お母さんのお兄さん。お母さんが結婚する時に縁を切ったんだって。
でも、困った時には相談しなさいってお母さんが・・・。」
ティーダ 「そりゃ心配だよなあ・・・。」
ルールー 「ユウナの生まれのことはワッカには言わないで。あの人、アルベド族ってだけで毛嫌いしてるから。」
ティーダ 「あっ!」
ティーダは思い出して慌てた。
ティーダ 「ワッカに知らせなくちゃ!」
ルールー 「ワッカには内緒にって言ったじゃない!」
ユウナ 「試合!!」
ルールー 「あ!!」
4人は急いで会場へ向かった。
試合はもうすぐ終わる。
2-2のまま続いているようだ。
ワッカが手招きする。
アナウンサー 「おおっと!残り時間30秒!オーラカ、捨て身の全員攻撃だ!
レッティからのロングパーーーース!!
通ったぞーーー!」
ワッカはボールをもってゴールへ向かう。
途中アルベド族が襲ってきたがうまくかわした。
アナウンサー 「おおっ!!
シューーーートォォ!!」
ボールはキーパーをすり抜けゴールに入った。
アナウンサー 「ゴオオオォォォーーーーーールッ!!
ビサイド・オーラカ、3-2で奇跡の勝利です!!」
ワッカはほっとしてそのまま気を失った。
ティーダ 「勝った~~!」
ユウナ 「やったあ!次は決勝!!」
ルールー 「勝てたからいいけど、かっこつかないわね。チャップなら最後までちゃんとしてたのに
」
ティーダ 「あっれ~?そういうこと、言っていいわけ?」
ルールー 「・・・・・突然、何?」
ティーダ 「オレはチャップの代わりにはなれない。
ワッカにそう言ってくれたのはルールーだろ。
ワッカだって、チャップの代わりなんか・・・・。」
ルールー 「最後まで言ったら、怒るわよ
」
ルールーの本気の顔を見て、ティーダは固まった。
控え室に行くと、ワッカは長いすの上で寝ていた。
ダット 「ワッカさん、大丈夫ですか?」
レッティ 「もうすぐ決勝が始まるってのに、このケガじゃ・・・・・。」
ジャッシュ 「相手はゴワーズだし・・・。」
みんなの顔は不安で満ち満ちていた。
その時、控え室のドアが開いた。
ティーダ 「待たせたな。」
そして、ユウナたちも後から入った。
ダット 「ユウナさん!」
レッティ 「ケガないっすか!?」
ユウナ 「心配かけちゃって・・・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
ユウナは何度も頭を下げた。
ワッカ 「なんだってアルベドなんかに連れて行かれるんだよ。」
ティーダ 「もう、その話はいいだろ。」
ワッカ 「もうアルベドとは口きくなよ。めんどうに巻き込まれっからな。」
ユウナ 「・・・・・・・・・うん。」
ユウナはみんなに激励の言葉を残し、応援席へ向かった。
そして、ミーティングが始まった。
ワッカ 「もうすぐ、決勝戦スタートだ。ウォーミングアップしてる時間はねえ。いけるか?」
ティーダ 「余裕っス!」
ワッカ 「おっし!」
ワッカはケガした体をなんとか立たせた。
ワッカ 「今のうちに言っとくことがある。
決勝戦が終わったら、オレは・・・・引退する。
この大会が最後だって前から決めてたからな。結果は関係ねえ、勝っても負けても引退だ。
でもよ・・・。せっかくだから、優勝してえよな~?」
オーラカ 「おう!」
ボッツ 「オ、オレ、ベンチッスか?」
ワッカ 「ベンチはオレだ。決勝戦はコイツに任せる。
ここまできたら絶対に優勝だ!ルカ・ゴワーズをブッ飛ばす!」
ティーダ 「いくぞ!!」
オーラカ 「おう!!」
ティーダ 「ビサイド・オーラカの合言葉は!?」
オーラカ 「優勝だっ!!」
ボッツ 「ワッカさんのために。」
オーラカ 「おう!」
ティーダたちが部屋を出ると、ルールーとワッカだけになった。
ルールー 「気絶してるとこ、見ちゃった。」
ルールーは優しく微笑んだ。
ワッカ 「チッ、かっこつけどころだったのにな・・・。」
照れて答えたワッカだったが、気が緩みルールーに倒れこんだ。
ルールーはワッカを支えた。
ルールー 「あんたは・・・あれでいいんだよね。」
アナウンサー 「さあっ!いよいよクライマックス!
まもなく、もうまもなく決勝戦がスタートですっ!
それにしても一体誰が!誰がこの組み合わせを予想したでしょうか?
常勝ルカ・ゴワーズと決勝戦で対決するのは・・・、万年初戦敗退チーム、ビサイド・オーラカ!!」
解説者 「まさに、驚異の大番狂わせですね。」
そして、ティーダたちは入場。
ゴワーズのビクスンは、握手しようと手を出そうとしたティーダに殴りかかろうとした。
アナウンサー 「おおっと!早くも小競り合いだ!
オーラカ完全になめられています!」
ゴワーズのメンバーはオーラカを見て見下して笑っていた。
怒りを抑え、オーラカは位置についた。
ブリッツオフ!
ティーダを含め、攻撃中心の試合をするオーラカ。
さすがに決勝、ゴワーズは簡単に倒せる相手ではなかった。
なんとかボールを奪い、ティーダのシュートが決まる。
アナウンサー 「さあ、客席からも自然にわきあがるオーラカコール!俄然盛り上がってまいりました!」
しかし、すぐに1点返される。
激しい攻防が続く。
前半を終えて1-1。
アナウンサー 「ここで前半終了です!」
解説者 「いやー、ゴワーズ強い!まったくもって強い!」
ハーフタイムとなり、オーラカはワッカを囲んだ。
ワッカ 「おまえら、とにかくゴワーズを止めろ
」
オーラカ 「うっす!」
ティーダ 「オレは?」
ワッカ 「ボールを奪え!フリーになったらとにかくシュートだ!」
ダット 「ゴワーズを止めるっス!」
オーラカ 「お~!」
ティーダ 「シュートするっス!」
オーラカ 「お~!」
ワッカ 「うっし!行ってこい!!」
そして、後半。
アナウンサー 「しびれをきらしたサポーターたちのコールがますます大きくなってきました。
オーラカの選手たちは戦意喪失ぎみです。このまま大会から消えていくのか~?」
客 「ワッカ!ワッカ!ワッカ!ワッカ!・・・・・」
アナウンサー 「スタジアムが割れんばかりのワッカコールです!」
その歓声を聞き、ティーダは笑った。
そして、そのままスタジアムを後にした。
アナウンサー 「ああっと!あの選手はどうしたのでしょう?
試合を放棄したのでしょうか?スフィアプールを出ていきます!」
ティーダはワッカのところへ行った。
ワッカは照れくさそうにスタジアムへ向かった。
ティーダ 「そりゃ、ちょっとはさびしかったさ。でも・・・・・あれは、ワッカとビサイド・オーラカの大切な試合だったからな。」
ワッカがスタジアムに入る時もワッカコールは続いていた。
アナウンサー 「ん?どうしたんでしょう?場内がわいています!
ああっと!?ワッカ選手です!!元気に復帰してきました!!
チームメイトが温かく迎えます!」
オーラカメンバーの顔にやる気が戻った。
そして、やる気を取り戻したオーラカはゴワーズのゴールへ向けて攻撃。
ワッカのベノムシュートが決まった!
試合終了!!
大会はオーラカのみごとな勝利で幕を閉じた。
アナウンサー 「信じられない勝利です!
ブリッツボールの歴史に新たな伝説が生まれた瞬間です!!」
場内は勝利をたたえる歓声でいっぱいだった。
ティーダはワッカの元へ向かった。
それに気づき、ワッカは笑顔で応えた
その時だった。
プール内にサハギンチーフが現れた。
ティーダとワッカは疲れた体に鞭打ち、戦った。
しかし、魔物はプール内にとどまらなかった。
観客席にも魔物があふれていた。
ルールー 「何が始まったの!?」
観客席で応援していたユウナたちも魔物相手に戦った。
ふと見ると、逃げ回る客の中にもう一人戦っている人がいた。
アーロンだ。
ティーダとワッカはアーロンの元へ向かった。
ティーダ 「アーロン!」
ワッカ 「アーロンさん!」
ティーダ 「・・・・・・・・やっぱ、知ってんのか
」
ワッカ 「ああ。最高のガードだ。」
ティーダは少し落ち込んだがそんな暇はなかった。
次から次と現れる魔物。
倒しても倒してもきりがない。
ティーダ 「なんだよ、これ!?」
とうとう囲まれた。
やられる!?
その時、会場にシーモアが現れた。
そして、召喚獣アニマを召喚。
アニマは瞬く間に魔物を倒した。
場内は静かになった。
ルカの広場にて。
優勝トロフィーをもらったワッカをオーラカが囲んだ。
ダット 「ホントに出発しちゃうんっスか?」
レッティ 「ゆっくり休んだ方がいいっすよ。」
ワッカ 「ユウナの旅は先を急ぐ。休んでるわけにはいかねえんだよ。」
ダット 「でも・・・・・・・・。」
オーラカのメンバーは肩を落とす。
ワッカ 「こらあ!シャキッとしろ、おまえら!ブリッツのシーズンは始まったばっかだろうが。そのシケたツラはなんだ!」
ワッカは一喝し、トロフィーをダットに渡した。
ワッカ 「じゃあな、元気でやれよ。」
そう言って背を向けた。
ワッカ 「元気でな。」
オーラカ 「うっす・・・・・・。」
ワッカ 「声が小さい!」
オーラカ 「うっす!!」
ワッカは街外れで待つユウナたちのところへ行った。
ユウナ 「もういいの?」
ワッカ 「ああいうの、弱いからな、オレ。
・・・・・待たせたな、ユウナ。モヤモヤにケリつけてきた。これからはユウナのガード一筋だ。」
ユウナ 「じゃあ、ワッカさん。改めて・・・よろしくお願いします。」
ワッカ 「こちらこそ、なにとぞよろしくお願い致しますっと。」
ワッカとユウナはお互いに頭を下げた。
そしてワッカはルールーと話した。
ワッカ 「んで、あの魔物どもなんだったかわかったか?」
ルールー 「全然。魔物がどこから入り込んだのか不明。
シーモア老師の活躍でマイカ総老師はご無事。情報はそれぐらいね。」
ユウナ 「シーモア老師の召喚獣、すごかったな・・・・。」
ティーダ 「わかってんのかよ!!全部あんたのせいなんだ!
『シン』に飲み込まれたのも!スピラに放り出されたのも!ザナルカンドに帰れないのも!全部!すべて!みんな。
なにもかもあんたのせいだ!」
船着場で、ティーダはアーロンにくってかかっていた。
アーロンは思いっきり笑った。
ティーダ 「・・・・・・・あんた何者なんだ?オヤジのこと知ってんだよな。」
アーロン 「ああ。」
ティーダ 「ユウナのオヤジさんとも知り合いなんだろ?」
アーロン 「そうだな
」
ティーダ 「どういうことだよ!おかしいだろ!」
アーロン 「なにもおかしいことはない。
ジェクト、ブラスカ、そしてオレ。3人で『シン』を倒したのが10年前。
のちにおれだけがザナルカンドに渡り、・・・おまえの成長を見守っていた。
いつの日かおまえをスピラに連れてゆくために。」
ティーダ 「どうしてオレなんだよ
」
アーロン 「ジェクトの頼みでな。」
ティーダ 「オヤジ生きてるのか?」
アーロン 「あの状態を生きていると言えるなら。」
ティーダ 「ああ?」
アーロン 「あいつはもう人の姿をしていない。だが・・・、あれの片隅には確実にジェクトの意識が残っている。
あれに接触したとき、おまえもジェクトを感じたはずだ。」
ティーダ 「まさか・・・
」
アーロン 「そうだ。『シン』はジェクトだ。」
それを聞いてティーダはどうすればいいのかわからなくなった。
ティーダ 「くっだらねえ!なんだよそれ!バカバカしい!」
ティーダは半泣きで叫んだ。
アーロン 「真実をみせてやる。怒るのも泣くのもそれからにしろ。俺について来い。」
ティーダ 「嫌だと言ったら?」
アーロン 「おまえの物語は終わらない。」
ティーダ 「それがどーしたってんだ!」
アーロン 「そうか・・・・。ならば仕方あるまい。好きにしろ、来るか来ないかは選ぶのはおまえだ。」
ティーダ 「・・・・・・・バカにしやがって!好きにしろとか言ってさあ!選ぶのはオレだとか言ってさあ!
・・・だけどオレにはどうしようもないんだっての!あんたに言われた通りにするしかないんだ!」
アーロン 「不満だろうな。それとも不安か?」
ティーダは俯いたまま答えなかった。
アーロン 「それでいい。」
ティーダ 「・・・・・・・・・・アーロン?・・・・ザナルカンドに帰れるのかな
」
アーロン 「ジェクト次第だな。
・・・・・俺はユウナのガードになる。おまえもついて来い。」
そう言ってアーロンはユウナたちのところへ向かった。
ティーダも黙って後をついて行った。
ワッカ 「アイツ、ここに残るのかな?」
ルールー 「アーロンさんと知り合いなんでしょ?確かに、知り合いと会えたわね。」
ユウナ 「でも、ザナルカンドに帰れるのかな。」
ワッカ 「どっちにしても寂しくなるな
」
ユウナ 「まだ街にいるよね。わたし、挨拶してこようかな。」
ユウナが街へ戻ろうとすると、ティーダたちがやってきた。
ユウナ 「あっ!」
ワッカ 「おお!」
ユウナ 「アーロンさんも?」
ユウナたちはアーロンに祈った。
アーロン 「ユウナ。」
ユウナ 「はいっ!」
アーロン 「今この時よりおまえのガードを務めたい。」
ユウナ 「えっ?」
ワッカ 「マジですか!?」
アーロン 「不都合か。」
ユウナ 「いいえ!ね、みんないいよね?」
ワッカ 「あったりまえっす。文句なんかあるわけないっす!」
ルールー 「でも・・・なぜですか?」
アーロン 「ブラスカとの約束だ。」
ユウナ 「父が・・・・・そんなことを・・・・・。ありがとうございます。よろしくお願いします!」
ユウナは頭を下げた。
アーロン 「それから、・・・・こいつを連れて行く。」
アーロンはティーダの腕を引っ張った。
ティーダ 「ども。・・・・よろしく。」
ティーダはバツが悪そうに挨拶した。
アーロン 「こっちはジェクトとの約束だ。」
ユウナ 「ジェクトさんはお元気なんですか?」
アーロン 「知らん。10年前に別れたきりだからな。」
ユウナ 「そう・・・・ですか
」
アーロン 「そのうち会えるさ。」
ユウナ 「はいっ!楽しみにしてます
」
アーロン 「・・・・これからのことを説明してくれ。次はどの寺院だ?」
ルールーとワッカはアーロンに説明した。
ユウナ 「ね、ちょっと来て。」
ユウナはティーダを呼び出した。
ユウナ 「見て見て!」
そして、おもむろに指笛を吹いた。
ティーダは驚いた。
ティーダ 「そんだけ吹ければ上出来だな。」
ティーダはわらいながら俯いた。
ユウナ 「元気ないね。」
ティーダ 「・・・・かもなあ
」
ユウナ 「叫ぶ?」
ティーダ 「そういうのとはちょっと違うかな。」
ユウナ 「・・・・・・あのさ、自分で言うのもヘンだけど、召喚士とガードっていうのはスピラの希望の光なんだよね。
いろんな人がわたしたちに注目してる。
だから・・・・・落ち込んでるところとか、元気ないところとか、・・・・見せたくないんだ。」
ティーダ 「うん、・・・・・・・わかる・・・気がする。」
沈黙が流れる。
ユウナ 「はい、じゃあ、笑顔の練習!」
ティーダ 「はあ?」
ユウナ 「ほら!」
ティーダは無理矢理笑顔を作ってみる。
ティーダ 「なんだかヘンだぞ、この練習!?」
ユウナ 「次!声出してみよう!」
ティーダ 「ええ!?」
ユウナ 「はーい、やってみて
」
ティーダは深呼吸をして、叫んだ。
ティーダ 「あははははは!」
大声を出したことで少しすっきりした。
ティーダは続けた。
ティーダ 「あははははは!」
みんなは心配そうに見ている。
ユウナ 「そこまでやらなくても・・・・
」
それでもティーダは止めなかった。
ティーダ 「あはははははは!」
それを見て、ユウナはティーダの隣に立つ。
二人は目を合わせて息を吸った。
ティーダ&ユウナ 「あはははははは!」
声を出した後、二人は笑った。
ユウナ 「・・・・おっかしー。」
ティーダ 「ユウナのせいだろ・・・。」
ユウナは笑うのを止め、真剣に答えた。
ユウナ 「・・・うん、・・・ありがと。
・・・・・・笑いながら・・・・・旅、したいんだ。」
ティーダ 「ああ。」
ユウナ 「もし、ダメそうな時は指笛吹いて。そしたら、私、・・・飛んででいく。」
頷くティーダ。
ティーダ 「じゃ、行こっか。」
振り返ると心配そうに固まっているワッカたちがいた。
ティーダ 「なに見てんだよ!」
ワッカ 「おまえたちヘンになったかと心配してたんじゃねえか!」
ユウナ 「大丈夫!
それでは!召喚士ユウナ。これよりジョゼ寺院目指して出発です。
ガードの皆さん、よろしくお願いします。」
ユウナはみんなに笑って頭を下げた。