学校に着くとスズちゃんがにやにやしながら迎えてくれた。
「どぉだった?」
おはようも言わずにスズちゃんは興奮ぎみに言った。
そんなスズちゃんにあたしも嬉しくなって答えた。
「チャリで送ってもらったのー♪二人乗り~♪♪」
朝からキャーキャー騒ぐあたしたちにクラス中の目が集まった。
まずいとあたしたちは口を押さえた。
みんなの目が離れたのを確認してまた小さな声で話し出す。
「すごいね、よかったね。何か話した?」
「あのね、ケー番交換したの。」
スズちゃんは顔いっぱいに驚きを表現して自分のことのように喜んでくれた。
「それで、何か連絡あった?」
興奮してあたしの腕をつかむスズちゃん。
「ううん、まだ…。」
あたしは申し訳なさそうに言った。
スズちゃんはあたしの答えになんだぁ…と残念そうに口を尖らせた。
とその時、かばんの中で振動を感じた。
「あ…。」
かばんから携帯を取り出す。
メール…。
あたしはその送り主を見て思わず心臓が飛び出しそうになった。
「拓真くんからだ。」
「え!?」
スズちゃんもびっくりして、緊張しながらあたしを見ている。
あたしは息を止めて本文を読んだ。
『おはよ。昨日はサンキューな。また何かあったら連絡するから。』
やばい。嬉し過ぎて言葉が出ない。
あたしはドキドキしながら待ってるスズちゃんに携帯を向けた。
スズちゃんはガシッとあたしの手を両手で押さえて凝視した。
そしてあたしに抱き着きながら言った。
「よかったね~~~。」
あたしもスズちゃんを抱きしめ返した。
「うん。ありがとう。スズちゃんのおかげだよぉ。」
スズちゃんはよしよしとあたしの背中を軽く叩くと体を放して力強く拳を握った。
「頑張って。」
「うん。」
あたしは携帯を抱きしめながら頷いた。
スズちゃんが気を利かせて席に戻ったのであたしは早速携帯とにらめっこを始めた。
何て返そう…。
打っては消し、打っては消し。
なかなかうまく言葉が見つからなかった。
でも待たせるのも嫌だった。
長い葛藤の末、なんとか始業のベルまでに返信できた。
結局、言いたいことは何も打てなかった。
『おはよ。こちらこそ送ってくれてありがとう。連絡まってるね。』
これだけ…………。
あとでスズちゃんに叱られたことは言うまでもない。
あたしだって本当はいろいろ言いたかった。
昨日は本当に楽しかったこと、拓真くんたちの曲について、あと、あたしもまたメールしますって……。
はぁ……メール1件だけでこんなに自己嫌悪。
この先どうなるんだろう……。
あたしは不安になった。
すると、ジャスが肩から降りてノートに書き始めた。
『ええやん、気にすんな。』
ジャスは声出してもいいのにあえて筆談してれたことがなんだかくすぐったかった。ジャスの笑顔につられて笑った。
『ありがと。』
あたしも筆談で応えた。
『まぁ、オレは応援なんてせえへんけどな。』
『なんでよ?』
『あいつのこと嫌いやねんもん。』
『あいつって拓真くん?』
そう書いたらジャスは拓真くんの名前を上からぐちゃぐちゃに書きなぐった。
あたしは腹が立ってやめさせようとジャスを押した。
それが思った以上に力が入ってジャスは転んでしりもちをついてしまった。
「ごめ…。」
とっさに小声で謝ったがすでにジャスはあたしを睨みつけていた。
「何すんねん!」
あたしはノートに書いて謝った。
『ごめん。』
「ほんまに謝ってんのか?」
申し訳なさそうに頷くと、ジャスはあたしを手招きして言った。
「なら顔貸せ。罰や。」
あたしは仕方なくジャスに顔を近づけて目をつぶった。
絶対殴られる…!
顔中に力が入る。
…しばらくの沈黙ののち何かが唇に触れた。
目を開けるとジャスがキスしていた。
びっくりして思わずジャスから離れた。
あたしが自分の唇を手で押さえるとジャスはニヤリと笑った。
「愛してるぜ、舞花。ざまーみろ。」