「舞花ぁ~……。」
その夜、呟くような小さな声でジャスはあたしに触れた。
「ん…。」
何か頬に触れてあたしは薄目を開けた。
ん…、ジャス……?
寝ぼけたまま再び目を閉じた。
なんでジャスがここに…?机の上で寝てるはずなのに……。
そんなことを考えながらぼんやり聞いていた。
「愛してる、舞花…。」
せつなく響く声を愛おしく感じた。
ジャスは何度も何度も触れては呟いた。
それがなぜだか心地よくてあたしはまた眠ってしまった。
目が覚めるとジャスはきちんと自分の布団で寝ていた。
あたしが手縫いで作ったお布団。
下手くそって言いながら気に入ってくれたっけ。
その中で気持ちよさそうに眠るジャス。
昨日のは…夢だったのかな?
そう思いながら洗面所に向かった。
そして顔を洗って、ペットボトルの蓋に水を入れた。
「ジャス。朝だよ。」
部屋に戻るとあたしはいつものようにジャスを起こした。
「う…ん。」
まだ眠そうに体を起こすジャス。
いつもはめちゃめちゃ寝起きいいのに今日はそのままぼぉーっとしている。
よっぽど昨日のライブで疲れたんだろうな、寝るのも遅かったし。
でもジャスを待ってるほど時間の余裕はなかった。
「早く支度して。学校遅れちゃう!」
あたしの言葉にジャスはゆっくりと動き出した。
あたしが持ってきた水で顔を洗うといつもの機敏なジャスに戻った。
テキパキと身支度をするジャス。
その間にあたしは朝ごはんを食べる。
お母さんの目を盗んでパンのみみを小さくちぎって袋に入れて牛乳を小瓶に入れた。
それを隠して部屋に戻る頃にはジャスの髪はきっちりセットされてるのだった。
あたしはジャスの朝ごはんをジャスの小さな机に置いた。
ジャスが食べてるうちに着替えて髪をまとめる。
あたしが着替えてる間は何も言わなくても必ず向こうを向いてくれるジャス。
「できたよ。行こうか。」
「おう。」
ジャスを肩に乗せて家を出る。
昨日のはやっぱり夢なんだ。
いつもと同じ感覚にあたしはそうだと思いこんだ。
時折、ジャスがせつない視線を向けていたことにも気付かなかった。