湖の底 | 妄想劇場

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現実逃避の日々

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ティーダ  「エボンのたまもの。

        エボンの教えに従う人ならこんな言い方をしたんだろうな。

        みんな一緒だし、無事だった。

        先のこと考えると、アタマ痛かったけどさ。」

目が覚めると、湖底だった。

瓦礫の中でみんな無事だった。

祈りの歌が聞こえていた。

ユウナはまだ気を失ったままだった。

キマリ  「ユウナはすぐに目覚める。キマリにはわかる。」

キマリは優しくユウナを見守っていた。

ルールー  「ここ、湖の氷の下よね。」

ティーダ  「たぶん。」

ルールー  「ほら、あれ、マカラーニャ寺院の底よ。」

ティーダとルールーは頭上に見える寺院を見上げた。

ルールー  「ずいぶん落ちたわね。

        ・・・・・・・・・・老師を殺めた反逆者か・・・・。」

ルールーは小さく呟いた。

ワッカ  「はあ~ガーン

ティーダ  「そんなに落ち込むなよ。悪いのはシーモアだろ。」

ティーダはワッカの肩をたたいた。

ワッカ  「どっちが悪いかなんて関係ねえんだよ。

      オレはずっとエボンの教えを守って暮らしてきた。それなのに今じゃ反逆者だぞ。

      どうしてこんなことになっちまったんだ・・・。

      くっそぉ・・・・・。」

ワッカはリュックを見た。

ティーダ  「リュックは関係ないぞ。」

ワッカは、はっとしてリュックから目をそらした。

そして空を見上げた。

ワッカ  「オレの気持ちなんか、わかんねえよ・・・しょぼん

アーロン  「さて、・・・どうしたものかな。」

アーロンがおもむろに呟く。

ティーダ  「あんたってさ、とりあえずやってから考えるって感じだよな。

        いい年なんだし、みんな頼りにしてるんだしさあ・・・。」

アーロン  「説教か?」

ティーダ  「そういうわけじゃないッス。感想ッスあせる

慌てて否定するティーダ。

アーロン  「他人に頼るな、とまでは言わんが、頼って当然、守られて当然とは思うな。

        そんな人間にはなるなよ。」

ティーダ  「説教ッスか。」

にやりと笑ってティーダが言った。

アーロン  「助言だ。」

ティーダは真顔で頷いた。

そして、ユウナを見た。

リュック  「ユウナは大丈夫だよ。ちゃんと息してるしね。ルールーとワッカは?」

ティーダの様子を見て、リュックが話しかけた。

ティーダ  「ワッカは見たとおりキツそうだな。ルールーは・・・・いつもと変わらない。」

リュック  「なんかカッコいいよね、オトナって感じだし。」

ティーダ  「ふーん。」

リュック  「ま、あたしもあと5、6年ってとこかなドキドキ

ティーダは返答に迷い、キマリに話をふった。

ティーダ  「なあキマリ、どうやってここから出ようか?」

リュック  「ハナシそらすなっ!」

キマリ  「・・・・よじ登るしかない。」

リュック  「キマリも!」

キマリ  「なりたい者になれるのは、なろうとした者だけだ。」

リュック  「う~?」

考え込むリュック。

ティーダ  「ルールーみたいになりたかったら、努力せいってことだろ?」

リュック  「おっ!がんばるよ!」

キマリ  「リュックはリュックのままでいい。」

リュック  「う~?

       ・・・・あっ!ムダな努力するなってこと!?キマリ~!」

ティーダ  「あはははは!」

ワッカ  「おまえらよく笑ってられんな!?」

ユウナ  「ん・・・・・。」

ティーダ  「あっ!」

ティーダたちの話し声でユウナが意識を取り戻した。

ユウナ  「・・・・・・・・・シーモア老師にジスカル様のことを聞こうと思ったの。そして、きちんと寺院の裁きを受けてもらいたかった・・・。」

ルールー  「結婚は、その引き換え?」

ユウナ  「必要なら、そうしようと思った。」

ティーダ  「んで、シーモアはなんて言ってたんだ?」

ユウナ  「何も答えてもらえなかった。結局、わたしのやったことって、なんだったんだろうな。

       もし、最初からみんなに相談していたら・・・。」

アーロン  「もういい。しなかったことの話など、時間の無駄だ。」

アーロンがユウナの話を終わらせた。

リュック  「そんな言い方しなくてもいいのに!」

アーロンに迫るリュック。

アーロン  「ユウナの後悔を聞けば満足するのか。」

リュック  「そんな言い方しなくてもいいのに・・・。」

リュックは下を向いて、呟いた。

アーロン  「決めねばならんのは、今後の身の振り方だ。

        旅は続けるんだな。」

アーロンはまっすぐユウナを見た。

ユウナ  「はい。

       でも・・・・、寺院の許可が得られるでしょうか。」

アーロン  「召喚士を育てるのは、祈り子との接触だ。寺院の許可や教えではない。

        おまえに覚悟があるなら、俺は寺院に敵対してもかまわんぞ。」

ティーダ  「おわっ!」

リュック  「すっごいこと言うなあ~ガーン

アーロンの言葉に慌てるルールーとワッカ。

ルールー  「アーロンさん!」

ワッカ  「オレは反対だ。オレたちは犯した罪を償わなくちゃならねえ。

      確かに・・・シーモア老師のことはあまり好きじゃなかった。ああ、ミヘン・セッションの時から気に入らねえと思っていたよ。

      ジスカル様のことを殺したのはもちろん許せねえし、それから、あれだ。オレたちを殺そうともした。

      けどなあ!」

ルールー  「それでも、やはり罪は罪。裁きを受けるべきです。」

ユウナ  「ベベルへ行こう。聖ベベル宮のマイカ老師に事情を説明しよう。

       それしか、ないと思う。」

ワッカ  「そのつもりだ。」

ルールーも頷いた。

ユウナ  「アーロンさん・・・。」

アーロン  「話はついたようだな。」

ユウナ  「一緒に来てくれますか?」

アーロン  「ことを荒立てたのは、俺だからな。」

ティーダ  「そうそう!たいていアーロンが話をややこしくするんだよな。」

リュック  「だよねえ。キマリがガーって吠えて、おっちゃんがつっぱしってさ~。」

アーロン  「ついて来いと言った覚えはない。」

ティーダ  「仲間が行ったらほっとけるかっつうの!な?」

リュック  「うん!」

リュックは照れたようにほっぺたをかいた。

ユウナはティーダのそばへ来て言った。

ユウナ  「・・・・・ありがとう。」

ティーダ  「は?」

リュック  「仲間かあ・・・・ニコニコ

ティーダ  「へへ・・・・・。」

ワッカ  「ったく、この非常時に。のんきだなあ、オイ。単純っちゅうか、図太いっちゅうか。」

ルールー  「あんたはカリカリしすぎ。歌でも聞いて気を静めたら。」

祈りの歌がまだ鳴り響いていた。

ティーダ  「寺院から聞こえるのか?」

ユウナ  「うん。心静める、エボンのたまもの。」

ユウナは祈った。

ティーダ  「これ、誰が歌ってるんだ?」

ルールー  「祈り子様よ。」

ティーダ  「へー。・・・え?祈り子って歌ったりするもんなのか!?」

ルールー  「それ以外に説明がつかないでしょ?」

ワッカ  「なんかよう、少し前からザワザワっちゅうか、ゾクゾクっちゅうか・・・・、そんな気しないか?」

キマリ  「このあたりの匂いが変わった。良いことか悪いことか、キマリにはわからない。」

ルールー  「ねえ・・・・地面揺れてない?」

ワッカ  「落ちつかねえなあ・・・。」

みんなそわそわしていた。

アーロンだけは落ち着いていた。

アーロン  「この歌、ジェクトも歌っていたな。」

ティーダ  「ああ、こればっかりな。

        ・・・・はは、へったくそでさ~!」

アーロン  「下手なのは、おまえも同じだ得意げ

ティーダ  「聞いてたのかよ!?」

        かーっ!?油断もスキもないなあ。」

アーロン  「おまえの歌を聞くたびに、スピラを思い出した。」

ティーダ  「そっか・・・・。あんた、スピラからザナルカンドに渡ったんだよな。やっぱり心細かったのか?」

アーロン  「さあな。」

ティーダ  「なあ、どうやってザナルカンドに行ったんだ?『シン』?」

ティーダ  「やっぱ、・・・・そうだよな汗

ティーダ  「決定的だった。ザナルカンドとスピラをつないでいるのは『シン』。

        だから、『シン』を倒したら、ザナルカンドへは帰れない。」

リュック  「あれ? 」

ルールー  「歌が終わったみたいね。」

その時、大きな地響きがした。

ユウナ  「あっ!」

ワッカ  「なんかいるんじゃねえか!?」

アーロン  「下だ!」

ユウナ  「『シン』!?」

ワッカ  「げっ!?」

リュック  「ひっ!?」

ルールー  「毒気に気をつけて!」

ティーダ  「この時だった。

        『シン』はオヤジなんだってこと・・・。初めて素直に受け入れることができたんだ。

        歌・・・・聞いてたんだろ?

        今度は・・・・なんだよ。」

ティーダは意識を失った。

夢のような映像だった。

ティーダ  「ザナルカンド・・・・?

        ああ、あんたが思い出してんのか。」

ブリッツボール。

ティーダ  「もうムリだって。あんた、『シン』なんだろ。」

小さかった頃のティーダ。

ティーダ  「オレ・・・・もっと大きくなったって。

        わかったよ。終わらせたいんだよな。オレがなんとかしてやるからな。」