たくさんいただいた
栗の鬼皮剥き

🌰🌰🌰

最初の1粒を見事に粉砕
掃除をしたばかりのキッチンが
栗まみれ

既視感に似た感情の波が押し寄せる

幼稚園の年長組
初めての栗拾い

栗のイガはトゲトゲしているので
長靴で挟んで
トゲトゲに触らないように
気を付けながら
栗を取って下さい

栗畑の長に教わり
みんなで栗拾い

園に戻り
来週はみんなで栗の鬼皮剥きをします

鬼皮って何⁇
栗ご飯は食べられないの⁇

わいわい
がやがや

家庭用に4粒渡された
お土産🌰

夕ご飯に母が栗ご飯を作ってくれた
4粒だけの栗ご飯

鬼皮はこれよと母が笑っていた
1粒ずつに分けられた栗ご飯
(母の分は姉にこっそり)
最後の1粒は拾って来た人の特権
はい、どうぞと
頬張る私

🌰🌰🌰

休み明けの月曜日の午後
小さな机と小さな椅子が
縦長に並べられ
先生の教えに習い
栗の鬼皮剥き

栗の平らな方に爪を入れて
とんがりに気を付けて
とんがりとお尻を挟むように
指で押して
上手に鬼皮を剥いてみましょう

わいわい
がやがや

口頭だけの説明では
理解が追いつかず
先生が順番に
ひとりひとりに教え回っている
風景を眺めながら
自分の順番は最後のようだと悟り

試行錯誤を繰り返してみる
栗の平らな方がわからなかった
とんがりが人差し指に刺さり痛かった

ようやく先生の順番になり
わからないことや失敗したことを
手本を示しながら教えてくれた

一人前に鬼皮を剥けるようになり
金曜日に食べた栗ご飯には
こんなにもたくさんの
難しいことがあったことを知った

1粒も食べてないのに
どうしてママは笑っていたのだろう
わからなくなって
頭の中がぐちゃぐちゃになった

🌰🌰🌰

いつの間にか

みんなのお父さんお母さんが
炊き上げてくれた
栗ご飯が出来ましたよ
先生が嬉しそうに話し

隣にいる
お父さんお母さんに
ありがとうを伝えましょう

『お父さんお母さんありがとう』
『いただきます』

ポロポロと泣く私に
母が困惑し
先生がはにかむ

「ママが作ってくれた栗ご飯、
栗全部食べちゃった」

泣きじゃくる私には
母と先生の会話は聞こえなかった

ふわりと抱きしめてくれた
母がそこにはいて
その後に食べた
栗ご飯がとても美味しかった

🌰🌰🌰

栗の鬼皮剥き
最初の1粒を見事に粉砕

ほんのり甘い
あの日の母のような
栗の渋皮煮を作って届けよう