私は教室に向かう途中の階段ですでに息を切らしていた。

「はぁはぁ・・・美紀、大丈夫?」

「うちは大丈夫だけど・・・すみれこそ大丈夫?登山中の人みたいになってるよ。」

「はぁ、教室まであとどれくらい?」

「今三階だからあと一階だよ。」

「その一階がとても長い・・・」

ここ桜高校は四階建てになっている。

一階には職員室や進路指導室、保健室、購買などがある。

二階には、三年生の教室と自習室、図書室など、三階は二年生の教室や学習室、そして私たちが目指している四階には一年生の教室と、音楽室、美術室、書道室などがある。

一年は全部で六クラスあり、六組は一番端にある。

私は自分の体力の無さを呪いながらもやっとのことで六組の教室のについた。

顔を上げてみると、ドアのところに座席表が貼ってあった。

私はすぐに、二八番という出席番号とともに五列目の前から二番目に私の名前が書いてあるのを見つけた。

自分のを見つけ暇になったので「美紀、見つかった?」と聞いてみたら、「まだー」と言われたので、一緒に探すことにした。

しばらく見ていたら、三列目の一番前にところに十三番、木立美紀と書いてあるのを見つけた。

「あっ、あったよ。」と教えると、「ありがとー。うわ、一番前だ。」と嫌そうな顔をしたので、

「うちだって二番目だよ。」と言ったら「ほんとだー。お互い頑張るか。」と笑って、教室に入って行った。

入った瞬間みんながこちらを見たので気まずくなり、早足で席にむかい、そして、机にカバンを置くと、周りを見てみた。

時間がぎりぎりだったこともあり、教室にはもうほぼ全員そろっており、男女半々ぐらいで、大体みんな緊張した顔で座っていたが中にはもともとの友達なのか、教室の後ろの方でしゃべってる生徒もいた。

私の前の席の子も美紀の後ろの席の子もまだすわっていなかった。

私が一通り教室を見終えたとき、担任らしき先生が入ってきて後ろにいた生徒たちも慌てて席に着き、その中の一緒に喋ってた二人がそれぞれ、私の前と美紀の後ろに座った。

入ってきた先生は皆が席に着いたのを確認すると、「六組の担任になりました、岡崎よし子です。」と自己紹介をした。

まだ三十はいってないように見えるその先生は、少し頼りなさそうに見える。

私は、「それでは出席をとります。」と言った岡崎先生から視線をずらし、前の子を見て「何て名前かな?なかよくなれたらいいな。」とかんがえていた。

私たちはクラスが貼り出されている場所へと向かった。

そこには既にたくさんの生徒達がいて、

<この人たちと三年間過ごすんだ>

と思った。そういえば、中学の入学式も同じこと思ってたな。

「よし、行くよ。」

「う、うん。」

<ドキドキドキ>

私は一組から順々に自分の名前を探していく。

しかし、何かとトロイ私はなかなか自分の名前を見つけられない。

すると、先に自分の名前を見つけたらしい美紀が駆け寄ってきて、

「すみれ!私たち同じクラス!」

と叫んだ。

「ほ、本当に?」

「なんで嘘つかなきゃいけないのよー。」

といつもの笑顔で美紀は言う。

やっぱり本当のことらしい。

そして言われたとおり一年六組の名簿を見ていくと、

“春野すみれ”

と私の名前がそこにはあった。

こうして自分の名前が貼り出されているのを見ると、桜高校の生徒としてちゃんと証明されている気がして少し嬉しかった。

思えば憧れだったこの高校に受かったとき、なかなか信じられなかったっけ。

「すみれー?もう行かなきゃだよ。何考えてたの?」

「秘密。でも、美紀と同じクラスになれて、本当によかった。」

「うん、私も。」

そして私たちはこれから一年間を過ごす“一年六組”へと向かった。

☆なつみ☆

―4月17日

今日の朝ご飯はお母さん特製の目玉焼きと白いご飯、それと一杯の味噌汁だった。

いつもと変わらない、いつもと同じメニュー。

春休みなんてなかったみたいに、普段通りにお父さんや弟は着なれたスーツや制服を着て会社や中学校に行く。

家族の朝はいつもと変わらないのに、私は着なれない制服を着て、見た目が可愛くてかった新品のリュックを背負ってさっき家まで迎えに来てくれた中学からの友達の美紀と通いなれた中学校ではなく新しく通う高校に向かっている。

「ねえ、すみれー」

美紀の声に反応してすみれこと、私は美紀の方を見た。

「なに??」

「さっきから顔怖いよ。どんだけ緊張してるの?」

と、美紀は笑いながら言ってきた。

「うそ!?うちそんなに顔に出てる?」

「うん。出まくり。だってさっきからすみれ、ずっとこんな顔してたよ。」

そう言いながら、美紀は顔を手を使って横に伸ばして見せた。

私はそんな美紀の顔を見て私は思わず吹き出してしまった。

「うちそんな顔してないしー。もっとましだからね。」

「えー、いつもこんな顔じゃない?」

「ひどいー。」

そんな言い合いをしながら、しばらく笑いあった後、美紀は

「そうそう、すみれは笑ってる方がいいよ。」

と、言った。

美紀はいつもみんなを気遣ってくれる。それだけではない、彼女は自分のことよりも他人を優先させてしまう性格なのだ。

改めて私は美紀と同じ高校に行けてよかったと思った。

「ありがと。」

私が真面目くさって、そう言ってみると美紀は少し戸惑った顔をして

「なにー?いきなりどうしたの?」

と聞いてきた。

私が

「別にー、なんとなく。」

と言うと、美紀は

「なにそれー。」

と言って、ちょっと頬をふくらませた。

そんな他愛もない会話をしてるうちに、私の家から徒歩20分のところにある、県立桜高校についた。

正門のところに、【第57回県立桜高校入学式】と大きく書いてあるきれいに飾りつけられた木の板が掲げられていた。

その大きな文字を見ていると、

<私、高校生になるんだ>

という実感が湧いてきて、せっかくリラックスしていたのがまた緊張してきてしまった。

私が救いを求めるように美紀を見ると、美紀までその大きな文字を見て緊張した顔をしていた。

<美紀でも緊張するんだ。>

と、美紀を見つめていると美紀が視線に気付いて私の方を向いた。

そして、しばらく私の方を見つめると吹っ切れたように首を振り、

「さあ、行こう。」

と言って、私の手を取って入学式の会場に向かって歩き出した。

もう、美紀の顔に緊張の色はなかった。

良く晴れた青空の下、私は2人で歩きながら

<今日から新しい生活が始まるんだ。>

と、思っていた。

☆りょうか☆