『ぜつぼう』
本谷有希子
(2006.04.25/講談社)
俺は絶望してるがゆえに俺なのだ。
ぜつぼう、から人間は立ち直れるのか?
売れなくなった芸人の絶望の人生。
希望よりも絶望することの方が生きる力に
溢れているという人間の性を描く話題作。
00年代カルチャーを縦横無尽に疾走する
若手女流作家の長編小説。
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≪あらすじ≫
人気絶頂を極めブームまで巻き起こした
元お笑い芸人・戸越。
相方・オレグ(外国人芸人)の失踪をきっかけに
芸能界から干され解雇される。
顔や名前が売れてしまったため、普通に就職することも
街を歩くこともできず、うつ病になってしまう。
そんな戸越が、ある日、公園で一人のホームレスと出会い、
悩みを打ち明けると、戸越たちを捨てたプロデューサーに
復讐をしようと勇気づけられる。
戸越は、半信半疑ながらもそのホームレスの男
(妹尾喜久美)に従い、田舎の村に引っ越すが、
そこにいたのは、昔の自分を知る、戸越のファンだったと
名乗る女性・シズミと出会う。
そして、不思議な同居生活を送り始めるが・・・・・・。
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(05/18~19)
本谷有希子にマジでハマったぜぃ(笑)
完全に壊れちゃってる人が多くて人物像がスッキリしてていい。
よくもうすぐ消えそうなお笑い芸人ランキングとかあるけど、
お笑い芸人は表は華やかそうに見えても
裏でいろいろと苦労されてる方が多くて、普通の一般の人が
そんなお笑い芸人だからと言って決めつけていいものなのか、
どうなのだろう・・・としばしば思う。
戸越は、周りに乗せられてしまったところも
あるのかもしれないけど、人気絶頂の時期に遊びすぎてた
部分もあったと思う。
あと、この人は、すごく自意識過剰(笑)
自分に寄ってくる女は、みんな自分に惚れてるって
思ってたみたいだし、
戸越のファンだと名乗ったシズミに対しても横柄な態度で
接し、何かにつけて周りの人間を批判し、
自分の絶望さ加減に浸っている。
もともと根は真面目なんだろうけど、
真面目であるがゆえにいろいろなことに悩み
自分を追い詰めてしまったんだろうね。
でも、最後まで人を見下すことをやめなかった。
自尊心の塊のような人間。
この作品を読んで改めて思った。
一発当てれば成功だけれど、いい時期は長くは続かないし、
一度売れてしまうと元の生活には戻れないし、
なくなってしまった時の落差が激しい。