『星と呼ばれた少年』

ロディ・ドイル[著] 実川元子[訳]

(2004年・ソニー・マガジンズ)


ハルカカナタ


 「あたしのちっちゃなヘンリーが

あそこにいるわ。ごらん」


 20世紀初頭、英国からの独立運動が激化するアイルランド。

ヘンリー・スマートはダブリンのスラム街で育ち、

やがて独立戦争の英雄と称えられるが、

凄惨な戦いの末に彼が得たのは、

失踪した義足の父の秘密と、「自由」という名の

宝物だった・・・・・・。


 希望の光をいつも心に、

永遠に輝きつづける―。


 母は満天の星空を指差して言う。

星になったヘンリーは死んだぼくの兄。

ぼくには兄と同じ名前がつけられ、それがぼくの運命を決めた。

 ダブリンのスラム街で生まれたぼくは、まだ赤ん坊の弟

ヴィクターを連れて5歳でストリートチルドレンになる。

義足の父も、貧しさに押しつぶされた母とほかの家族も、

ある日忽然と姿を消し、ぼくらの兄弟は二人だけで

生きるために必死で闘った。

だがある朝、ヴィクターは目を覚まさなかった・・・・・・。


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(03/08~18)


 自分の存在を証明するために叫び続けた

少年の生きざま。

 

「ぼくの名前はヘンリー・スマートだ!」

「世界でたった一人のヘンリー・スマートだ。」


両親にも名前を呼んでもらえず、見捨てられた少年。

 

 彼の母親は、たくさんの子供たちを授かったけど

流産や病気で亡くしてしまったし、

父親は、人殺しの罪を重ね続け、指名手配をされる。


少年の空白の叫びがすごく切ないです。

 

 独立運動の戦いの激しさもすごいし、

父の過ちもすべて明らかになって物語は過酷さを増します。


時代背景を的確に現した内容になっていて、

多少、重く感じますが、素敵な作品です。


≪著者プロフィール≫

ロディ・ドイル Roddy Doyle

 1958年アイルランド、ダブリン生まれ。

 英語と地理の教師として教鞭をとる傍ら、

劇作、小説を執筆。

 「ザ・コミットメンツ」(集英社)、「スナッパー」「ヴァン」、

そしてブッカー賞受賞作「パディ・クラーク ハハハ」

(以上、キネマ旬報社)のバリータウン4部作が世界的

ベストセラーとなり、作家に専念する。

最新作に、本書の続編となる「Oh,Play That Thing」がある。