『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』巻ノ二

夢枕 獏

(2004年/徳間書店)


ハルカカナタ


 

 劉家の妖物が歌った詩が、李白の「清平調詞」であり、

それはこの時代を遡ること約六〇年前、玄宗皇帝の前で、

楊貴妃の美しさを讃えるために歌いあげられたものである―。


 それを空海に示唆したのは、白居易という役人であった。


当時、李白はこれをきっかけに玄宗の寵遇を得たが、

それを妬んだ宦官の高力士の讒言により、

後に長安を追われることとなったという。


 それを知った空海は、楊貴妃の墓所がある、馬嵬駅に赴く。


劉家と綿畑の怪は、安禄山の乱における楊貴妃の悲劇の死に端を

発すると喝破した空海は、貴妃の墓を暴くことを決意する。


 墓の前で、空海は白居易―のちの大詩人・白楽天と初対面する。


白は、詩作の悩みを、空海に打ち明けるのだった…。


妖物の跋扈し、権謀渦巻く長安で

繰り広げられる大妖術合戦。


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