僕には一年に一回は遊ぶ友達がいた
季節は冬、大体疎らに雪が降る寒空の下
いつも僕から連絡した、どんな急なタイミングでも会ってくれた。
街場の何処で会って何を話して
街場の何処に向かって何をしたか
記憶は色鮮やかに正確に地形まで思い出せる。
一年ぐらい放置してしまうのにいつもその人は僕に対して対応は変わらなかった
変わらずいつも優しく僕の話を聞いてくれて、僕の味方をしてくれた。
会うと癒されるし、僕はその人との会話に悪い記憶はない。
待ち合わせ場所から違う場所への移動の合間に話しに詰まり、たまに探ってみることはあった。
「いつも話を聞いてくれてありがとう、俺の方こそ何かあるかい?力になれることならなるよ」
「んー…まぁあるっちゃーあるけど…大丈夫だよ、自分でなんとか出来ることだから、でも本当にどうしようもなくなったら言うから」
「わかった!」
結局、何も話してはくれないんだけどね
人の事は目一杯心配してくれるのに、自分の事は自分でなんとかしたがる、そんな人だった
そんな関係がもう明確には分からないけど10年前後の時が過ぎたんじゃないかな?
このまま永久に続いてくのか?と思っていたけど一つの切欠。
今年、スマホの安いプランがでるという話しがあった。
auだとpovoか
povoに登録するデメリットとしてはEメールのサービスが使えなくなるらしい
僕的にはもうEメールでやり取りしてた人は大体はラインに移動してたし、来るメールも企業からの配信メールぐらいしか無かったのでそこはそんなに負担とは思わなかった
ただその人とは10年前と変わらずEメールで連絡していたので、それを知らせようと思った
つぃーっと連絡帳を上から下まで確認するが、その人の名前が何処にもない
フルネームじゃなく名前で登録してるのかもとマジマジと何回か見返してみたがやはり名前がない…
機種変の時にこぼれてしまったのか…?
いや、毎回、連絡帳だけは店員さんに移動してもらってる
そんなはずはない
あれ……
もしかして……
そんな人はいなかった……?
いやいや…そんな事はないとすぐに反論出来るぐらいの確かな存在感がある
最初は何々で知り合って、何処で会って、二回目からはお互いに近いという事が分かって待ち合わせ場所を此所に変えて……
出会いから全てが思い出せる
下手な数年会ってない遠い知り合いなんかより、彼は友達だと言える
何が夢で、何が現実なのか?
境界が壊れる…
でも確かに…
右に行くと左に行くと何々があって、何処に着くという正確な地図は頭にインプットされてはいるが、その場所はこの街の何処にある?と言われると
何処にも無い
無いんだよな…
明晰夢はよく見る。
何かしらの切欠でこれは夢だと気づいた
それでもあの時の僕は彼の優しさにすがりたかった
気付きながら固めていったのだ、鮮明に何度も幾度も
僕だけの街、僕だけの街並み。実際にあるものと錯覚するぐらいにまで
夢か現なのか認識出来なくまで
そうか…
そうだな……
自分が仕事が本当に辛い時に、僕は君を生み出したんだな……
僕は自分の逃げ道、捌け口が欲しかったんだな…
リアルの誰かに相談するのもその人の時間を奪ってしまう、そんな無意識の申し訳なさから
何でも聞いてくれて、何でもしてくれて、ただ微笑んで
僕だけの僕のためのトモダチ
イマジナリーフレンド
夢の終わりにいつも彼はこう言う
「もういいのかい?」
だから僕はいつもこう言うんだ
「うん…もういいよ」
いつもならこれで僕は目覚める
語りかけてくる声が続く
「そうかい…もう歩けそうかい?」
「うん…大丈夫」
「辛くなったらいつでもまた遊ぼう」
いつだって優しい、いつだって甘やかす
でももういいんだ
「ありがとう…大丈夫だよ、もう一人で歩けるから…だから……君を思い出すことはないよ、ありがとう」
「そっか……強くなったんだね…ならもう行きなよ」
微笑を浮かべながら僕の背中を押してくれる
「うん、行ってきます」
と僕は彼に全力の笑顔で応える
もう逃げない
ありがとう、僕のイマジナリー