一万円選書のことを知ったのは、前夫が亡くなってすぐの頃でした。
 
たまたま見ていたテレビ番組で紹介されていて、「そんなサービスがあるんだ」とびっくりしたのを覚えています。
 
本って、自分で書店や図書館に行って自力でニーズに合ったものや興味があるものを探すのが当たり前だと思っていたので、自分の状況を聞き取って頂き、自分に合った本を選んで送ってくださるサービスがあるとは思ってもみなかったのです。
 
私が応募する頃にはすでに一万円選書は大人気で、運よく選書をしていただけることになりました。
 
どういうきっかけだったか忘れましたが、私が選書に申し込んだことについてTBSから取材申し込みがあり、番組でインタビューを受けました。
 
そんないろいろな思い出がある一万円選書を行っている岩田さんが、本を出版されたと知り、早速購入してみました。
 
 
 
 
 
 
 
著者の岩田徹さんは北海道砂川市にある個人経営の書店の店主です。
 
一万円選書自体は、2007年から始めていらっしゃったのですが、最初の頃は全く知られていなかったそうです。
 
親の代に開業した書店でしたが、人口が少ない砂川市での個人経営の書店は経営が厳しく、資金繰りが難しい状態が何年も続いたそうです。
 
時代の流れと共に大型書店やネット書店なども登場し、個人経営の小さな書店は危機的な状況が続いていたそうです。
 
一万円選書を始めて最初の7年間鳴かず飛ばずの状態だったのですが、2014年にテレビ番組で紹介された途端に大ブレイク。
 
それまでもローカル番組や新聞、全国ネットのテレビ番組で紹介されることはあっても、全然人気が出なかったのに、2014年のテレビ番組をきっかけに大人気のサービスになります。
 
今では3千人待ちの状態で、募集は年1回、抽選制です。
 
私が申し込んだ頃はまだそこまでの状態ではなかったのですが、それでも大人気で応募してもなかなか受け付けて頂けない状態だったようです。
 
一万円選書に申し込むと、「選書カルテ」というものが送られてきます。
 
そこには今まで読んできた本で思い出に残っているものや、人生の中で一番悲しかったこと、嬉しかったことなど、人生の棚卸のような質問がたくさん書かれています。
 
結構なボリュームの質問が書かれており、このカルテを書くだけでも数日から1週間はかかりました。
 
(もっと時間がかかる人だと1か月以上かかるそうです。)
 
そのカルテを岩田さんがじっくりと読み込んで、その人その人に合った本を1万円分選んで送ってくださるのです。
 
私のところにも10冊程度の本が送られてきましたが、自分ではなかなか選ばない本、しかも、その時の私の状況や心境や悩みに様々な角度からフィットする本が送られてきたことを覚えています。
 
この本ではそんな全国的に大人気の1万円選書のノウハウや、岩田さんの半生が詳しく書かれており、とても興味深く読みました。
 
一万円選書をお願いした時に何度か岩田さんとメールのやり取りをさせていただいたのですが、非常に頭の良い方だなという印象がありました。
 
今回、この本を読んで岩田さんが函館ラサール高校の出身であったことを知り、「あー、だから頭の良い方だったんだ」と納得しました。
 
現在70歳の岩田さんが書店の未来を考えて、今回一万円選書のノウハウを公開しています。
 
今は他の書店でも選書サービスを行っているところがあるので、どんどんこういうサービスが広がるといいなあと個人的には思っています。
 
とても読みやすい文章で、大変興味深い内容で、あっという間に読んでしまいました。
 
機会があればまたぜひ、選書をお願いしたいなあと思いました。
 
選書サービスに興味がある方には読んで頂きたい本です。