せっかく台東区に住んでいたのに、東京藝大を見に行かなかったんだよなあ。。。。
 
2018年の年末まで東京に住んでいました。(現在は名古屋)
 
浅草界隈に住んでいました。
 
浅草がある台東区は上野動物園をはじめとするさまざまな美術館や博物館があり、下町のとても面白いエリアです。
 
そんな台東区には東京藝術大学がある。
 
「芸術系の東大」と言われる、芸術系国立大学の最高峰はとても興味深い大学だと聞いていました。
 
上野公園に続く立地で比較的自由に出入りもできる(見学できる)と聞いていたので、一度は行きたいなあと思いながらも行かずに終わってしまいました。
 
この本は最初に単行本で発行されたのですが、現在は文庫版と漫画版も発行されています。
 
ついつい読み逃していた本だったのですが、文庫版を見つけたので早速購入して読んでみました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
日本大学芸術学部(日藝)もかなりの数の有名人を輩出していますが、東京藝大も負けてはいません。
 
坂本龍一、葉加瀬太郎、フジコ・ヘミング、伊勢谷友介、野村萬斎、村上隆などなど、国内海外を問わず大活躍している方がたくさんいます。
 
最近では、KIng Gnuの常田大希(中退)と井口理(声楽科卒)が有名だと思います。(4人組バンドでそのうち2人が藝大って。。。。)
 
この本の著者、二宮敦人さんは小説をメインに書く作家さんで、この本が初めてのノンフィクションになります。
 
この本を書くきっかけになったのは、当時奥様が藝大の彫刻科の学生で、自宅での様子や大学での話を聞くうちに、「ん?なんだ、この不思議な集団は。。。。」と思ったことがきっかけだそうです。
 
奥様のご友人やその知り合いの藝大生を次々に紹介してもらい、インタビューを重ねて書かれたのがこの本になります。
 
美術大学や音楽大学に縁遠い私としては、美大や音大ではどのようなことが繰り広げられているのか、関心がありました。
 
東京藝大は美校(美術校)と音校(音楽校)の二つの校舎が上野にあります。
 
その他にも先端美術などを学ぶ校舎が東京の北千住や茨城県の取手市にもあるそうです。
 
この本ではメインは上野にある美校と音校の話になりますが、先端技術や先端音楽の学科の学生さんにもインタビューしています。
 
基本的にどの学部も少人数制で、美術系は1学科1学年3〜5人程度、音楽系は学科によりますが、人気があるピアノ科やヴァイオリン科でも10〜15人程度だそうです。
 
美校と音校ではカラーも全く違っていて、美校は身なりを構わず変人っぽい人が多く、音校はきちんとした身なりで通う学生が多く校舎に入る際のセキュリティーも厳重だそうです。(美校は基本的に誰でも構内に入れるそうです。)
 
その辺のカラーの違いがどうして生まれるのかの理由なども書いてあり、興味深く読みました。
 
音楽系はなんとなく学科の種類の予想がつきますが、芸術系は日本画や油絵だけでなく、彫金、鋳金、鍛金など金属加工だけでも3科もあり、先端美術科になるとプロジェクションマッピングなども学んでいるそうです。
 
少人数制で教授1人に対して学生1〜3人程度の講座が多いため、学ぼうと思えばいくらでも貪欲に学べる環境なんだなと思いました。
 
同時に芸術系についてはとても放任で、やりたいことが見つからない学生にとっては地獄の環境です。
 
学科によっても学生の意識や将来への意向などもかなり異なるのですが、プロの芸術家・音楽家として活躍できるのはほんの一握り。

デザイン会社や教員、ピアノやヴァイオリンの先生になるなど仕事につなげようとしている人はいいのですが、そうでない人は卒業後にお金を稼いでいくのもなかなか難しい環境であることも書かれていました。
 
学生の約半数が卒業後に「行方不明」(連絡が取れない)状態になってしまうのも、藝大の特徴のひとつと書いてありました。
 
大学側は基本的に放任なので、イベントや企画を学生が立ち上げてやってみたり、いろんな可能性がある大学です。
 
成績優秀で頭が良い人も多く、発想も奇抜なのでとても面白いのですが、そういう人全員が社会に出て活躍できるわけではないという厳しい現実もあり、うーん、と唸ってしまいました。
 
ただ、東京藝大の中の話なんて滅多に聞くことができないので、貴重な本でした。
 
350ページ弱の本ですが、面白くてあっという間に読み終わってしまいました。
 
この本ではたくさんの学生さんにインタビューしてるんですが、King Gnuの井口理さんも声楽科の学生さんとして出てきます。(しかもかなりのページ数を割いてます。)
 
このインタビュー当時もバンド活動はやっていたようなのですが、まだKing Gnuでのデビュー前の話なので、こういうバックグラウンドがある人なんだなーと興味深く読みました。
 
(井口さんのお兄さんも藝大の声楽科を卒業なさっていて、海外で声楽家としてご活躍されてるそうです。)
 
東京藝大にますます興味が湧いたので、コロナが終息したらぜひ見学に行ってみたいと思いました。