このブログもめでたく第8回を迎えることができた。
今回は、横山真氏による『新聞奨学生 奪われる学生生活』(大月書店)をご紹介
していきたい。
正直私は、「新聞奨学生」の生活がここまで過酷を極めることを全く知らなかった。
ところで、もしかしたら読者の中に「新聞奨学生」という存在が一体何を指すのか
ご存知ない方がいらっしゃるかもしれないので、簡単にご説明しておきたいと思う。
「新聞奨学生」というのは、大学・短大・専門学校など、高校卒業後にもさらに勉強
を続けたいと考えている人たちのための制度である。経済的理由などで、進学が
困難な生徒さんのために、住み込みで新聞配達を行なうことで一切の金銭の借入を
せずに学生生活を送れるということが基本的なコンセプトである。
さて、著者である横山氏は、この新聞奨学生を2年間続けられた方である。大学
三年次以降は、様々な実習があるため、長期間新聞配達が出来ない時期がある
ために、2年コースを選択して奨学生生活を送られたそうである。
この著書を拝読して、私は絶句した。ここまで新聞奨学生の日常が過酷を極める
ということを一切知らなかったからである。怪我しないようにすることはもちろん、
高熱を出して新聞が配達できないという状況に陥ることも原則許されない。日常の
自己管理を徹底して行なえる人物でないと、とても務まらない仕事なのである。
業務は配達に限らず、集金や拡張活動などがある。この拡張活動についての言及を
以下に本書から引用することにしたい。
内容は、購読勧誘のビラ配りだ。販売店が用意したビラをポストに投函していく。
ビラ配りは頻繁に行われるわけではなく、私はこの業務を一回しかしたことがない。
報酬は出る。「歩合制」で一軒につき二円。このときの報酬は五〇〇〇円だった
ので、二五〇〇軒配ったと思う。
アルバイトとして、私自身もこれと似た業務(ポスティング)を経験したことがあるのだが、
団地などの集合ポストに配れたとしても、一日で二五〇〇軒というのはすごい量だと思う。
この短いブログの中で、横山氏の苦労や苦悩、勤務の過酷さなどを、とても私の筆力では
表現しきれないのであるが、本文で印象に残った個所を少し長くなるが引用してみたい。
≪横山さん(私)と、同じく新聞奨学生である村上さん(仮名)との会話から≫
私 新聞奨学生やってよかったですか?
村上さん あぁまったく思わない。まったく思わんね。
私 それは何でですか?
村上さん 何でかな? タメになった気がしない。なんか最初よく言われよった
のが、「四年間やったら精神的に強くなるよ」とか。
私 あぁ言われますね。
村上さん 「四年間がまんすれば精神的に強くなるし、人として成長できるよ」
みたいな、「強くなるよ」って言われたけど、「いや違うぞ」と。 「最初から強い
から四年間続けられるんやぞ」っていう。だけん〇〇(新聞社)に入って何かしら
成長した部分は俺はないと思ってる。俺はね。
ここで、私が深く感銘したのが、「新聞奨学生を続けたから強くなれる」というのでなく、
(精神面・体力面全てを含めて)「強いからこそ、新聞奨学生を続けられる」ということで
あった。きれいごとを抜きにした、核心を突いた名言であると私は思う。
この著書の魅力をまだまだお伝えしたいのだが、私の筆力ではこれがやっとである(繰り
返しで恐縮である)。本書から伝わってくるひりひりとした感動を味わいたい方には、ぜひ
ご一読なさることをお勧めする次第である。