- 世間的地位も名声もある初老の小説家がふと思い付いて気晴らしの旅に出る。その旅先ウ゛ェニスで偶然見かけたギリシャ彫刻の様に美しい少年に心を奪われ、そのうち彼をつけ回し、待ち伏せまでするようになる。理性も品性も備えたいい大人が、節度も自制も忘れ一人の少年を追っ駆け、疫病が蔓延するその土地にとどまり続けやがて命を落とす。少年に直面すると老醜に見舞われつつある自分に激しい嫌悪を覚え、理髪店で白髪を染め顔に化粧をほどこす姿はただただ哀れ。「芸術と美」を問うた気高い作品ではあるけれど、何とも言えないやりきれなさが残ります。
- トオマス マン, Thomas Mann, 実吉 捷郎
- ヴェニスに死す