さて、フランス王妃の豪洒と享楽の前半生から汚辱と絶望の後半生へ。極貧にあえぐパリ市民はとうとう蜂起し王宮を襲撃。王一家は捕えられ幽閉される。夫王が処刑され、最愛の王子たちとも引き離され自分の運命の日を、湿っぽく薄暗い牢獄で独り待つ彼女の人生の光と影、その落差はあまりに激烈。コケットで驕慢なありし日の面影はなく今や疲労と恐怖で老いさらばえた白髪の老婆(実際はまだ38歳)。わずかな心のともしびは恋人フェルセンとの想い出。最期の刻まで彼女の支えになるのは王妃としての矜持と、愛する人への思慕。女は死ぬまで女なのよ!
シュテファン ツワイク, Stefan Zweig, 高橋 禎二, 秋山 英夫
マリー・アントワネット 下  岩波文庫 赤 437-2