霧のソレア 著:緒川怜

著:緒川怜
光文社 ISBN:978-4-334-92599-4
2008年3月発行 定価1680円(税込)

第11回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作というものを獲った作品だとかで、帯には有栖川有栖、石田衣良、田中芳樹、若竹七海らの選評が踊る。アクシデントに見舞われた航空機が無事に着陸できるかという話をメインに、政府機関やなんやらの思惑が錯綜する国際謀略ものといった感じの作品。2010年3月に既に文庫化されている模様…。
日本トランス・パシフィック航空73便はバードストライクが原因で、一度はロサンゼルス国際空港に引き返すも、7時間遅れで、成田に向けて出発し…その影響で、テロリストが仕掛けた時限爆弾が太平洋上で爆発してしまい、爆発に巻き込まれ機長を失ってしまった。女性副操縦士の高城玲子はなんとか成田空港へ無事にたどり着こうと、飛行継続、着陸を試みるのだが…。
スケールのでかいハリウッド映画みたいな話なんだけど、航空関係の専門用語がやたらと多いので、“ノンストップ”な内容の割に、ちょっとばかりとっつきにくさがある。登場人物の説明、描写なんかちょっとまわりくどいところがあったし。自分は苦手なんだけど、海外翻訳ものなんかが好きな人なら、すんなりと読めるのではないだろうか?
後半はこの著者の文章にも慣れてきて、作品を楽しむ余裕も出てきた…自衛隊機のスクランブルや、アンノウン(読んでいる読者には正体はわかっています)との戦闘あたりは、かなり手に汗握る感じ。飛行機が着陸できるか、できないかというパニック小説的な部分では、展開は読めちゃうので、アメリカやら日本政府の駆け引きがどういう決着を見せるのかというところで最後まで興味は持続できた。
エピローグ部分で、投げっぱなしに見えた伏線なんかも回収し、一応、どんでん返し的なオチも用意されている。前にDVDで「フライトパニックS.O.S.」って映画を見たことがあって、それは米軍が民間機を誤射してしまい、それを隠蔽するために、さらに撃墜命令まで下しちゃうって話だったんだけど…もっと後味の悪い話だったよねこれ。アメリカ兵による虐殺映像とかyoutubeで見ちゃうと…アメリカ人は本気でこれくらいのことしそうな気もしてくるけどな(笑)
文庫版 霧のソレア
光文社 2010年3月発行 定価740円(税込)
個人的採点:65点