ブラックチェンバー 著:大沢在昌【新刊購入】
ブラックチェンバー
大沢在昌:著
角川書店 ISBN:978-4-04-873975-7
2010年3月発行 定価1890円(税込)
久々にハードカバーの新刊購入したので優先して読む…大沢在昌の最新刊「ブラックチェンバー」。ロシアンマフィアから命を狙われた刑事が、ブラックチェンバーと呼ばれる組織にスカウトされ、巨悪に立ち向かう。在昌センセの十八番的なお話的な内容だが、ファンなら安心して読めるかと…。
警視庁組織犯罪対策二課の河合は山上連合とロシアンマフィアが共同経営するストリップバーを内偵中に、拉致されてしまった!河合はマフィアの大物コワリョフを潰そうと躍起になっていたのだが、逆に彼の逆鱗に触れて命を狙われたのだ。そんな窮地を救ったのは、“ブラックチェンバー”と呼ばれる組織。その組織は犯罪絡みのブラックマネーを奪うことで、利益をあげ組織を運営。結果として犯罪の削減につながっているというもの。日本支部の北平と名乗る男からスカウトを受けた河合は、警察組織にいては犯罪を撲滅できないと悟り、ブラックチェンバーへの参加を決意するのだが…。
犯罪を取り締まるために、犯罪者から金をちょろまかして、それを資金にするという集団…正義をなすためには、まずは金がなきゃ、何もできないよってお話ですよね。企業と一緒で、慈善事業をしてるわけじゃないので…肝心なのは利益を得ること。そうすると大きな犯罪に介入するために、利益につながらない小さな犯罪は見逃すこともでてくるわけで…元警察官の主人公は、理屈じゃ仕組みを理解してても、倫理的にそういうところが許せなかったりするわけですよ。終始、そういうジレンマと格闘していくことになる…。
基本、ロシアンマフィアと日本のヤクザが手を組んで、何やら大きな犯罪を企ててるらしいぞというのを探っていく物語…ネタばれになるので、多くは語れないけど、昨年大流行した、とある事柄なんかも物語に大きく関わってくるんだけど、単行本になる前は、もともと経済新聞の連載小説だったとかで…ちょうどアレが騒がれてる頃、連載が終了している。こういうアイデアが出てくるあたりは、ブラックチェンバーの組織云々よりも面白かった。先見の明があったのかな?
ただ、途中でヒント出しすぎ、犯罪の真相をもう少し後半まで引っ張ってもよかったかも?まぁ、そっから先も…チェンバー、ヤクザ、マフィア、警察と色々な組織が入り乱れることで、誰が主人公の敵、味方なのかわからなくなり…追っかけていた犯罪以外にも、そんな秘密があったの?という展開も残してあります。相変わらず、主人公の周りにいるヤクザさんたちが、わりと憎めないヤツが多かったなぁと。
あとは、主人公と同じ組織で、頻繁にパートナーを組む、元朝鮮人の女スヒが、なかなかクールでかっちょいい。北の元工作員という経歴で、機械的な言動ばかりするんだけど…少しずつ主人公に感化されていくあたりが、なんとなくツンデレキャラっぽい(笑)デレまでなかなかいかないんだけど…主人公も初対面でちょっと欲情したから、いつ、いい関係になるのか楽しみだったんだけどなぁ、はたしてどんな関係になるのかな?
個人的採点:70点