名探偵はどこにいる 著:霧舎巧 | 105円読書

名探偵はどこにいる 著:霧舎巧


105円読書-名探偵はどこにいる (講談社ノベルス) 名探偵はどこにいる

霧舎巧:著
講談社 ISBN:978-4-06-182655-7
2009年8月発行 定価840円(税込)









調子がいいのか、今月はコンスタンスに読書を消化中です…霧舎巧の「名探偵はどこにいる」を本日一気に読了。何年か前にハードカバーで読んだ「名探偵はもういない」の続編的なお話であり、今回も著者の「あかずの扉」研究会シリーズの外伝というスタンスをとる作品。2006年に原書房から出た単行本に加筆して新書化したもの。

20年前に南海に浮かぶ終ノ島で起きた教師の不審死…教師と関係のあった双子姉妹による殺人計画らしき日記が証拠として残っていた!この事件はかつて特命を受けた後動警部補が解決していたのだが…ひょんなことから刑事の今寺は再捜査を行うことに!

主人公の今寺刑事の初恋に関する思い出話からはじまり、既に後動警部補が解決、封印した20年前の教師の不審死を再捜査していくというもので…「名探偵はもういない」のネタなんかも少し絡んでくるといった感じの構成。もちろん単独で楽しも事は充分可能で、前作の内容は既にうろ覚えだが、あまり問題はなかった。

初恋相手がとった行動の意味を考えるなんて出だしだから、平凡な日常を扱ったミステリで、事件ものじゃないのかな?なんて思ったんだけど…そうすると冒頭に挿入されている双子の人を殺す計画がどう関係してくるのかなと、疑問に思いながら読み進めていたら…ちゃんと、そういうのが1本に繋がるんですね。

核になる教師の不審死事件自体は地味なものであったけど…周辺に推理小説らしい仕掛けがいくつもちりばめられており、推理力が試される。それでいてなかなか切ない初恋話もひも解かれ、ついでにシリーズものとしての、お楽しみ部分も用意されているという…バランス良くまとめられた読み物になっているから巧い。

「名探偵はもういない」は、嵐の山荘ものというけっこう古典趣味な本格推理小説ではあったんだけれども、いつもの霧舎作品に比べると、テンポが悪く、そんなに好みの作品ではなかったんだけれども、今回の方が話は地味なのに、凄く読みやすく、惹きつけられた。著者が自分で“好きな作品”と言い切るだけあり、確かに面白かったよ。






個人的採点:70点