ヘビイチゴ・サナトリウム 著:ほしおさなえ | 105円読書

ヘビイチゴ・サナトリウム 著:ほしおさなえ


105円読書-ヘビイチゴ・サナトリウム ヘビイチゴ・サナトリウム

ほしおさなえ:著
東京創元社 ISBN:4-488-01701-0
2003年12月発行 定価1575円(税込) 









ミステリ・フロンティア配本の一冊、だいぶ前に同じミステリ・フロンティアから出ていた「天の前庭」を読んだ、ほしおさなえのこちらがミステリ・デビュー作だそうで、既に文庫化もされている。個人的にミステリ・フロンティアの装丁が好きなので、これからもこのレーベルは文庫じゃなくて、なるべくこちらで集めたいなぁ~。

中高一貫の女子高の屋上から、高三の江崎ハルナが墜死…実は以前にも校内で生徒の飛び降り自殺が起きていたのだ。ハルナの死後、校内で度々目撃される幽霊の噂…中等部三年の西山海生と新木双葉は、死んだ生徒が二人とも自分が所属する美術部の先輩であったことから事件に興味を持ち調べ始めたのだが…その矢先に、ハルナと交際が噂されていた国語教師がまたも墜死する!その国語教師が執筆中だった小説に事件の謎を解く鍵があるらしいのだが…。

女子高が舞台というので、ラノベっぽい軽い読み物なのかなぁと思いきや、わりと文学っぽいノリの作品。作品内にも登場するポール・オースターを意識したかのような、作中作の構成が取り入れられており、入れ子的な物語はしばし頭が混乱する。この作中作が、事件の真相を解く鍵にもなり、この著者こそが事件の真犯人ではないかということになっていくんだけれども…。

二転三転し、最終的には事件の黒幕みたいなのも判明するんだけど、結末に至るまでが複雑で実にややこしい…本文と作中作と似たような文章が出てきて、今まで読んでた物語も、もしかして作中人物の手による創作だったのだろうかなんて、奇妙な錯覚にも陥り、わけわからなくなる。きっと、そういうところがこの作品を楽しむ要素なんだろうけど、好みは分かれるだろうね。

あとは案の定百合っぽい要素なんかも入ってて、そういう世界って男にはわかりづらい部分も。思春期の女の子が、そういうものに傾倒していくような様子は、よく描かれているとは思いますけどね…簡単に言うとストーカーなんで怖いなぁと(笑)



文庫版 ヘビイチゴ・サナトリウム
東京創元社 2007年6月発行 定価861円(税込)






個人的採点:65点