罪深き海辺 著:大沢在昌 | 105円読書

罪深き海辺 著:大沢在昌


105円読書-罪深き海辺 罪深き海辺

著:大沢在昌
毎日新聞社 ISBN:978-4-620-10741-7
2009年7月発行 定価1785円









昨年買い逃していた大沢在昌のハードカバー「罪深き海辺」をBOOKOFFで見つけてGET!とある田舎の港町を舞台に、フラっと現れた風来坊の男が、実は今は亡き大地主の遺産相続人である事が判明し、騒動になるという話。

さびれた港町・山岬にふらりと現れた若い男。干場と名乗るその男は、かつて“殿様”と呼ばれた町一番の大富豪の血縁者であり、遺産相続人であるらしい…。しかしその遺産は故人の遺言により全て市に寄贈されていた!亡き母親の親族を探しに来ただけだという干場だが、彼の出現で…関係者たちが俄かに騒ぎだす。引退間近の地元のショカツ刑事・安河内は“殿様”の死にも疑問を持っており、騒動に便乗して真実が明るみになるのではと考える…。

前半、ぬる~い感じなんだけれども、一人の刑事の死をきっかけに、徐々に話はきな臭くなり、ヤクザや権力者が絡んだ大スキャンダルへと事件は発展していく。事故や自殺に見せかけた殺人事件がどんどん起き、その一方でヤクザ同士が一触即発な関係へ。“殿様”の死の真相の他、過去の事件も調べなきゃならないし…誰がいったい黒幕なのやらという犯人探しも気になるところ…。

関係者は限られてるし、動機も絞れてるんだけど、最後のピースがなかなか埋まらない感じ。それに加え肝心な主人公でさえ、どこか如何わしいときている。「用心棒」のように、関係者の間をいったりきたりする主人公、どこか掴みどころのないキャラなんだけれども…本当に“殿様”の血縁者なのかどうかという引っ張りが最後まで続き、意外なオチへと繋がっていく。過去に読んだ「撃つ薔薇」並に、最後の最後で驚かされた大沢作品であった。

やっさんこと老刑事の安河内や…干場を気に入り、なんとかビジネスパートナーに取り込もうとする、ヤクザものらしい柳さんなど、脇役キャラクターが魅力的で、特にやっさんなんかは主人公の干場の代わりに…けっこ物語を引っ張っていく存在になる。地元のヤンキー小僧に慕われちゃったリ、スナックのママさんと主人公の微妙な距離感なんかも適度なスパイスとなり最後まで飽きないで読めた。さすが在昌センセ…和製ハードボイルドの真骨頂って感じで面白かったです。






個人的採点:80点