シンメトリー 著:誉田哲也
シンメトリー
誉田哲也:著
光文社 ISBN:978-4-334-92596-3
2008年2月発行 定価1,575円(税込)
自分は2冊目となる、誉田哲也の姫川玲子シリーズ…前に読んだ「ストロベリーナイト」との間に、もう1冊あるらしいんだけど、そちらはまだ100円コーナーで見つけられず。期待して読み始めたら、短編集だった…。
東京
元同僚の先輩刑事・木暮の墓参りに出かけた時、若い女とすれ違った…それはかつて玲子と木暮が手がけた事件の関係者だった。6年前…品川の高校で生徒がプールのある屋上から墜死。事件の犯人と真相は?事件当時、学校にいた同じ水泳部の生徒たちに事情を聴き始めるが…。
屋上にあるプールから生徒が墜死、金網には不自然な指紋が指紋が残されており…と、本格推理っぽい出だしで期待させられたんだけど、やはり短編なんで、オチは弱めですね。これをとっかかりに推理をしようという話ではなく、犯人を捕まえてから、そんな真相だったかというような流れ…。
過ぎた正義
過去に重大な犯罪を犯しながら、未成年という事で…罪が軽くなり、社会復帰を果たしていた二人の男が相次いで事故死した。馴染みの監察医からその話を聞いた玲子は、事故の背景に作為的なものを感じ取り、独自に捜査を開始する…。
少年法とからめた現代の必殺仕事人なお話…どんな人物が犯人像に合致するか推理をし、その犯人の後を追う。短編なので、やはり話のふくらみが弱い…真相がわかって以降、犯人との対決の決着を描かないまま結末を迎えてしまう。長編か何かで、それこそ、その先まで読んでみたかった内容。
右では殴らない
劇症肝炎で突然死した男に、薬物中毒の疑いが?同様の不審死が相次いで起こり、正式に捜査の対象となった。玲子たちは、被害者が所持していた携帯電話から共通の人物を探し出すことに成功したのだが…。
薬物は蔓延するし、ガキどもは生意気だし、どうしちゃったんだよ日本という…嘆きのような物語。玲子の態度が、ガキ相手に大人げないなぁと思いながらも…最後でわかるタイトルの意味にはちょっと笑った。
シンメトリー
馴染みのネットカフェを出た男は…夜の街を歩き、とある陸橋へ。その下にはJRの線路が通っていた…男が線路を見つめていると、ふいに声をかけられた…。男はかつてJRの職員だったのだが、大きな列車事故に遭遇し、仕事を辞めていたのだ…。
表題作…他の作品と違い玲子視点ではなく、別人の視点で物語が進行していく。今もなお問題を残しているJR西日本の列車事故と、飲酒運転による死亡事故を合体させたような事件に、ネットカフェ難民まで盛り込んだ話。関係者や遺族たちの思いや憤る様子はリアルに描かれている。語り手が犯人なわけだけど…直接対決の様子がやはり物足りない。推理というよりは社会派サスペンスっぽいノリで。
左から見た場合
マジシャンの中年男性が殺された…被害者は携帯電話を握っており、番号が途中まで入力されていた。いったい誰に電話をしようとしていたのか?玲子には犯人の目星がついていたのだが、それを裏付けるために被害者の携帯メモリーから関係者をリストアップ…聞き込みをはじめることに。
一番最初に犯人の名前が書いてあります。なぜ玲子には犯人は推理できたのか?最後で明かされる、その答えで…推理小説っぽさを味わうことができます。ただ、本当の警察なら…そこまで名前がわかっていたら、人海戦術で犯人までたどり着きそうな気がしないでもないが…どうなんでしょうか?それとも単に、玲子が手柄をひとり占めした買っただけなのか?全体を通してみても、そういうせこいキャラに見え始めてきます。
悪しき実
部屋に死体がある…警察が駆けつけると通報通り男の死体が見つかった。検視の結果は自殺か、他殺か不明だというのだが…事情を知るとみられる通報者の女が行方をくらませてしまったのだ。事件を担当する事になった姫川班…まもなくして玲子は通報者の女の確保に成功するのだが…。
死んだ人間の身元、正体を調べるのが最終的な目的だったか?ヤクザものなのはわかっていたけど、そんなことをしてたのかいって感じの流れ。浪花節的な展開なんで…最終的なインパクトに欠けますね。
手紙
玲子はかつて自分が逮捕した女に手紙で呼び出され、休日を利用して会っていた。それは数年前に起きたOL殺害事件で、ヒラ時代の玲子が捜査一課に抜擢されるきっかけにもなった事件だった!
テーマ的にはイジメとネット社会みたいな安易な内容…ネットに書きこまれた“ブタ女”という書き込みから、犯人に迫るんだけど、推理というより、ダジャレに近いような~。これがきっかけで、姫川班誕生?まぁ、いつも山勘っぽい推理が多い、運の良さが姫川令子の最大の武器なのかな?
個人的採点:60点