機動戦士ガンダムUC 1 ユニコーンの日(上) 著:福井晴敏
機動戦士ガンダムUC 1
ユニコーンの日(上)
福井晴敏:著
角川書店 ISBN:978-4-04-713969-5
2007年9月発行 定価672円(税込)
アニメ化も決定した福井晴敏のガンダム小説…100円コーナーでコツコツ貯めてたんだけど、ようやく5巻まで揃ったので、ここらで読んでおこうかなということで、読み始めました。現在は8巻まで出ているそうですね。
宇宙世紀0096…工業用スペースコロニー、インダストリアル7内で、連邦政府に多大な影響力を持つビスト財団が、反政府組織“袖付き”秘密裏にとある取引を行おうとしていた…その取引が成功すれば、新たな戦火の火種になることを危惧し、一人の少女が“袖付き”の偽装貨物船に密航していた。一方、アナハイム工業専門学校に通うバナージ・リンクスは、ひょんなことから件の密航少女を助けることになり、事件に巻き込まれていくのだが…。
想像以上に面白い…最近のガンダム小説っていうと、アニメをなぞったノベライズを脱し切れていないものが多かった気がするが、富野由悠季のガンダム小説を継承しつつ、福井晴敏らしさも味わえ、ガンダムの香りを出しながら、ガンダムの世界観にとらわれすぎず、本格的なSFっぽい読み物にもなっていると…とりあえず1巻を読んだ段階ではそう感じますね。他国の戦争に無関心な日本人が共感できるような、主人公たちのキャラ設定もうまい。
今までのガンダムの設定を生かしてるから、現代のテクノロジーが追い抜いちゃったようなところは、ちゃんとそういうのがうまくすり合わせるような努力も見られていい感じですね。主人公たちが出る前に延々と挿入されるプロローグなんて、世界観を伝えるための難しい事柄がいっぱい描かれてるんだけど、そこは30年近くガンダムに接しているガンダムファンには、難なく理解できてしまうという、やっぱりガンダムとトミノ御大を愛する福井ならでは文章力で読ませられてしまう。
ようやく主人公たちが出てくると…謎の少女なんかもすぐに正体わかるしね(モビルスーツのイラスト見たくて、公式サイトを覗いたら、キャラクターに本名が堂々と書いてあった…謎の少女の正体もこれから読んでいけばスグ
明かされるってことだね)…見慣れた固有名詞もいっぱい出てくるのがうれしい。
ガンダム小説であり、戦争小説であり、青春小説であり、SF小説である…角川がスニーカー文庫じゃなくて、コミックレーベルで出してるあたりがなかなか粋ですよね。活字離れが叫ばれている昨今、こういうところから…SFものへの興味が広がる懸け橋になればいいなぁって本当に思いましたよ。福井晴敏をトミノ御大の後継者として認めたくなったよ、自分は。
1巻を読んだだけで、この興奮…続きも早く読まなくちゃな。アニメの方も期待が膨らむ…久しぶりに、ガンダムらしい正統派なガンダム作品に出合えるのではないだろうか?
個人的採点:85点