女奴隷は夢を見ない 著:大石圭

大石圭:著
光文社 ISBN:978-4-334-74420-5
2008年5月発行 定価700円(税込)

父親の使いで横浜にある“ヨコハマ・スター・トレーディング”を訪れた女子大生の川上春菜…彼女はそこで、自分が家族に売られたという真実を伝えられる。そこには、他にも人身売買の被害女性が多数囲われていた…。一方、母から仕事を継ぎバイヤーを務める高野は、普段、感情を表すことが苦手なのだが…、新しく仕入れたサラという盲目の少女に興味を抱き…。
著者のあとがきでも触れられていたが、和製「トゥモロー・ワールド」な小説、大石圭の初期作品「出生率0」にも登場した人身売買のお話がメインに描かれる。あちらは近未来SF的な設定があったけど、こちらは特に記述はないので、普通に現代劇ということでいいのだろう…特にリンクなどはしておらず、セルフリメイク的なことだと解釈。
奴隷として売り買いされる女性たちのとんでもない現実と悲劇を、いかにも大石圭らしい変態チック、フェチっぽい性描写で描く一方で…仕事と割り切り、冷静に人身売買する主人公や仲間たちの日常が描かれていく。それぞれのバイヤーが女性や、女を買う変態野郎と接するうちに、感情の変化がおとずれという具合。
変態小説なのに、どことなく、純愛ラブストーリー風な流れになったりもして、読者に色々と期待させるんだけど、“これが現実だ!”というどん底に 突き落としてくれるのはさすがかな。いきなりこの作品を読むとびっくりするかもしれないけど、自分の場合は「出生率0」を読んでいたので、意外とテーマ自体は冷静に受け止めちゃった。
個人的採点:70点