許さざる者 著:笹本稜平 | 105円読書

許さざる者 著:笹本稜平

105円読書-許さざる者 許さざる者

笹本稜平:著
幻冬舎 ISBN:978-4-344-01435-0
2007年12月発行 定価1,680円(税込)









先月読んだ、「マングースの尻尾」がわりと面白かったので、最近になって入手した同じ笹本稜平のこの作品を先に読んでみることに。あらすじなども調べなかったので、タイトルと表紙の印象から、ハードボイルドっぽい作品をイメージしていたのだが…。

アウトドア関係の取材で生計を立てているライターの深沢章人の前に、突然、楠田という弁護士が現れた。楠田の言い分によると、6年前に自殺した兄の死に不審な点があるという。その背景には兄弟と確執があった父親ととその後妻である義母が関係あるらしい…。さらに、自分には知らされていなかった兄の妻子の存在。章人は幼い頃に交わした兄との約束を果たすため、行動を開始するのだが…。

田舎の権力者である父親との確執と疑惑…兄の自殺が保険金殺人ではなかったのか?というところから、家族にまつわる忌まわしい過去と対峙していく主人公。幼い頃の山歩きで、偶然見つけ、隠しておいた拳銃を引っ張り出してくるなんてところは、今すぐ派手なドンパチが起こるんじゃないかと期待させられるが、最初はあくまで護身用であり、兄との絆を再確認するための小道具的な扱い。

前半は、怪しいヤツをふるいに掛ける心理戦的な展開が続く…疑惑の目は父親に向けてるけど、弁護士だって、存在すら知らなかった兄の嫁さんだって、どこか胡散臭い…ってな感じで、そういうのをひとつひとつつぶしながら、また新たな疑惑や容疑者へ向かっていくというな感じ。

ある程度、事件のからくりがみえはじめる後半…複雑に絡んでいた謎が明らかになり、幼少の頃の思い出、アウトドア的な前フリが見事に作用し、話は急展開を見せるが、こと最終章に至っては、いままで丁寧に、着実に積み上げてきたのに…単なる山岳アクションでお茶を濁された感が強い。途中までサスペンスミステリー的にグイグイ惹きこまれただけに、そこになだれ込むまでのプロセスをもう少ししっかりと読ませてほしかったと思わずにはいられない。

後半ではアクション要素もあるが、基本的には、二時間ドラマの原作にでもなりそうな、推理小説的な味わい。結末に直接つながってくるだろう、冒頭1章目のプロローグ的な描写なんかを読むと、もっと壮大な感じがしたんだけどななぁ、いい意味で想像以上に地味な作品だった。






個人的採点:65点