ハリウッドで勝て! 著:一瀬隆重
ハリウッドで勝て!
一瀬隆重:著
新潮社 ISBN:4-10-610177-7
2006年8月発行 定価714円(税込)
「おくりびと」の米アカデミー賞受賞で、日本映画が世界で注目を浴びているが…いち早く世界視野に目を向け、実際に成功しているた日本人映画プロデューサー、一瀬隆重による、ビジネス書っぽい業界暴露本(笑)発刊された当時、映画雑誌の書評コーナーの紹介を見て、ずっと読みたかったんだけど、なかなかブックオフに売ってなくて、ようやく100円で見つけました!
企画はテレビの二番煎じで、当てても誰も儲からず、製作・配給システムは硬直化…。日本映画界の構造問題は指摘されるようになって久しいが、実態はなかなか変わっていない。映画が「産業」になっているハリウッドに対し、日本映画界の「道楽」体質も相変わらずだ。面白い映画を作る—そのために本当に必要なこととは何なのか。日本映画界に見切りをつけた業界の異端児が語る、日本映画界への挑戦状。 (カバー折り返し内容紹介抜粋)
最初は、自分の映像に関する原体験や業界に入ったきっかけを面白おかしくつづっている。ホラー映画の分野で活躍している著者の原体験は、「ウルトラQ」だそうで、かつて同世代の推理(ホラー)作家、綾辻行人も似たことを言ってたのを思い出す。
著者が関わってきたいくつものメジャー、マイナー映画…けっこう見ている作品も多く、いろんな苦労や奇跡があったことで、久しぶり作品を見返したくなる衝動に駆られる。
俳優や映画スタッフの実名がポンポンと飛び出し、著者の成功と挫折を描いたサクセスストーリーとしても非常に面白い読み物になっているのだが、この本が出版されてから2年半が経過しており、まさに著者の指摘通りの、邦画バブルの陰りが、今現在見えている状況になっているので、思わずうなってしまう。
映画を愛するマニアからは事あるごとに挙がっている、TV局映画への駄目だし…単に作品が性に合わないというだけで、言葉にする輩も少なくないが、根本的に、TV局映画のどこが駄目なのかを理解すると、邦画への接し方、見方がガラリと変わってくる。
発刊から2年経っているので、著者が書いている企画が現実になっているもの、はたまたお蔵入りになっているものなどもある。最近では奥菜恵が出演したハリウッド資本のJホラー「シャッター」で、一瀬隆重の名前を見かけたが、あの作品も日本人から見ると、違和感を覚えてしまう箇所が少なからずあったのだが、こうした映画の屋台骨を支えている著者の分析を理解すると、あの違和感の正体がなんとなくつかめる。
前に読んだ、アニメ業界をビジネスの視点で赤裸々にかたったプロダクションIG社長の「雑草魂 石川光久 アニメビジネスを変えた男」の映画業界版みたいな本だね。それまでの閉鎖的な業界のどってぱらに風穴をあける異端児…これからの日本に、こういう人たちが必要です。政治家や公務員、企業のお偉いさんとか、頭の固いジジイ、ババァも、そろそろ柔軟なビジョンを持たないと、日本はますます後退していってしまうぞという警告も感じ取れる。
個人的採点:70点