グッドバイ 叔父殺人事件 著:折原一
グッドバイ 叔父殺人事件
著:折原一
原書房 ISBN:4-562-03966-3
2005年11月発行 定価1,995円(税込)
倒錯シリーズなど、叙述トリックの騙される爽快感が病みつきになり、昔はよく読み漁った折原一を久々に読んでみた。ここ数年のヤツもいくつか100円で買って積読の中にあるんだけどなぁ。集団自殺がテーマの作品…自分は原書房、ミステリーリーグのハードカバー版を読んだが、2008年11月に講談社で文庫化されている模様。
練炭を使って集団自殺を図った男女4人の中に叔父がいた…叔父の四郎をはじめ3人は死亡したが、自殺者を募った主催者の女だけが奇跡的に助かったという。しかし、その女は意識不明の重体で現在は入院中。僕は、殺人事件ではないかと疑う叔母(叔父の腹違いの姉)の依頼で、自殺者たちを調べ始めるのだが…。
自殺志願者や自殺者の家族との会話から、事件の核心へと迫っていく。僕とは別に、集団自殺を調べるルポライターなども登場、自殺前と自殺後…つまり現在と過去が錯綜するような形で、状況によって、それらの人達の視点も変えられて、物語は語られていく。
明らかに不自然な構成や思わせぶりな表現がいっぱい…疑ってくださいといわんばかりなんだけど、まぁ、折原一だからドッキリが仕掛けられてるだろうと、承知で読み進めていると、作品の真ん中あたりでひとつめのどんでん返し。違和感の正体はそれだったかと…とりあえず納得しながらも、まだまだ事件の真相は語られない。
後半に入ってからは、僕が意外なことになり、さらに自殺者の決行直前の描写なんかも挿入されてきて、いよいよ事件の真相に近づき始めるという段取り。
叔父は自殺なのか殺されたのか?もし殺人だったら犯人はいったい誰?どういう方法で殺したのか?ということになるんだけれども…そこはある程度、予想通り。一応、折原一らしいトリッキーな仕掛けはあったが、昔みたいにすっかり騙されたという気分とはちょっと程遠い。また、ルポライターの正体は誰?というあたりも、にらんだ通り。
自殺者たちの不条理な心理面はよく描けていると思うのだが、昔のようにやられたぜという驚きはかなり低かった。
文庫版 叔父殺人事件―グッドバイ
講談社 2008年11月発行 定価730円(税込)
個人的採点:60点