十三の呪 死相学探偵1 著:三津田信三

三津田信三:著
角川書店 ISBN:978-4-04-390201-9
2008年6月発行 定価660円(税込)

最近は、このミスの上位にもランクされる三津田信三の、角川ホラー文庫の書き下ろし作品。他人に視えないものが視えちゃう、偏屈で特殊な若者が、探偵業をはじめる。
幼少の頃から、他人に憑いた死の影を見ることができた弦矢俊一郎…今まで拝み屋として有名な祖母に育てられながら仕事を手伝ってきたが、独立して、東京の神保町に探偵事務所を開業。開業早々に…やってきた依頼人は、アイドルのような、幼さが残る女性・内藤紗綾香…彼女の婚約者が急死して以降、その婚約者の実家で怪奇現象が続発するらしい。そして俊一郎は、彼女にも例のものが視えてしまった!
ある複雑な環境の旧家で起きた怪死事件の謎を解くという…オカルト+本格推理小説な作品。主人公の生い立ちなど、最初の方は、著者お得意の怪奇的な描写でホラーっぽく。
死んだ主人が愛人に産ませた異母兄弟たちが、正妻と暮らしているという、複雑かつ、ひと癖もふた癖もある人物たち相手に彼らの屋敷に乗りこんでいくんだけど、そのあたりの流れは…古典ミステリーのような展開。
探偵が事件をひっかきまわすうちに、死人がどんどん増え続けるんだけど、どれも他殺の証拠がなく、警察もお手上げ。死の連鎖を食い止め、呪いの秘密を暴くと同時に、誰が呪いをかけてる張本人なのかもつきとめるということなんだけど…真相にたどり着くまでは、わりとフェアに、推理でたどり着ける内容。
呪術などオカルトなテーマは全体を通して描かれていくが、後半に行くと…ホラー的な怖さは減少、古典ミステリーのお約束と…本文内で開き直っていた通り、犯人も予想通りではあったが、一応、推理小説としては、アイツもコイツも疑わしいぞと、途中でゆさぶってはくれる。
著者デビュー作の「ホラー作家の棲む家」など、数冊読んだことがあるけど…そういう作品に比べると、思ったほどトリッキーじゃない。もっと怖さも感じられる内容になっているかと思ったけど、ひとつ前に読んだ福澤徹三の「アンデッド」同様に、ラノベっぽい軽さを感じてしまい、イマイチ盛り上がりに欠けた。
個人的採点:65点